電子契約は締結日がズレてもOK?締結日の候補とバックデートの問題

(更新日:2024年6月26日)

目次[非表示]

  1. 1.電子契約の締結日に関するよくある疑問
    1. 1.1.そもそも契約締結日とは?
    2. 1.2.電子契約で契約締結日と作成日がズレても問題はない?
    3. 1.3.電子契約の契約締結日は明記できる?
    4. 1.4.電子契約の契約締結日と効力発生日の違いは?
  2. 2.電子契約で契約締結日を決める5つのタイミング
    1. 2.1.①電子契約書に記載した契約開始日
    2. 2.2.②最初にした電子署名および押印
    3. 2.3.③最後にした電子署名および押印
    4. 2.4.④合意形成に至った日
    5. 2.5.⑤社内承認が完了した日
  3. 3.電子契約の契約締結日におけるバックデートの基礎知識
    1. 3.1.そもそもバックデートとは?
    2. 3.2.バックデートと遡及効の違い
    3. 3.3.バックデートによる不正の罰則
    4. 3.4.バックデートが不正にならないケース
    5. 3.5.バックデートが不正に当たるケース
    6. 3.6.バックデートの可視化に有効なタイムスタンプとは?
  4. 4.電子契約の締結日に関する留意点
    1. 4.1.①タイムスタンプには有効期限がある
    2. 4.2.②契約の撤回・解除方法を定めておく
  5. 5.電子契約締結の基本的なフロー
    1. 5.1.①電子契約サービスの導入
    2. 5.2.②法務部門による契約審査・交渉
    3. 5.3.③電子契約書の作成
    4. 5.4.④電子署名の使用
    5. 5.5.⑤原本ファイルの保存
  6. 6.まとめ


電子契約は締結日がズレてもOK?締結日の候補とバックデートの問題


電子契約は従来の書面契約書とは違い、場所や時間に縛られずに進められ、記名押印が不要なので、効率的な締結手続きが可能です。電子帳簿保存法の導入、ペーパーレス化の推進といった背景もあり、積極的に導入している企業も多いでしょう。

一方、電子契約では複数の担当者が承認フローに含まれることもあるため、最終承認までに時間がかかり、契約締結日にズレが生じるケースも珍しくありません。そこで本記事では、電子契約における締結日の候補と、バックデートと呼ばれる問題について解説します。


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電子契約の締結日に関するよくある疑問

電子契約も従来の書面契約書と同じく、締結日の記載が必要です。

そこで電子契約の締結日に関して、よくある疑問を以下にまとめます。


そもそも契約締結日とは?

契約締結日とは、契約当事者全員で実際に契約締結に至った日のことです。

従来の書面契約書の場合、一般的には署名または押印が完了した日が契約締結日にあたります。

電子契約の場合も基本的な考え方は同じですが、実務上、印鑑による押印は不要なので、電子署名や電子印を施した日時を契約締結日と捉えます。契約締結日は、契約の成立、効力発生日、履行期などの起点となる重要な日付です。トラブルが生じた場合の証拠としてもなるため、正確に記録するようにしましょう。


電子契約で契約締結日と作成日がズレても問題はない?

電子契約で契約締結日と作成日がズレたとしても、基本的には問題ありません。電子契約では、契約者と利害関係のない第三者機関によってタイムスタンプが発行されますが、タイムスタンプは最後に承諾した当事者が同意ボタンを押すことで時刻が記録される仕様となっています。

そのため、複数の担当者が承認フローに含まれている場合、最終承認までに時間がかかり、契約書上の日付と調印日がズレることもありがちです。なお、このズレによってバックデートを行っているようにも見えますが、やむを得ないバックデートに関しては法律的に問題がないとされています。


電子契約の契約締結日は明記できる?

電子契約でも契約締結日を明記できます。契約締結日は、契約の効力発生日や履行期などの起点となる重要な日付けです。紛争解決においても重要な役割を果たすため、電子・書面にかかわらず、可能であれば契約書に明記しておくことを推奨します。


電子契約の契約締結日と効力発生日の違いは?

電子契約における契約締結日と効力発生日は、同一のものと捉えられがちですが、それぞれ異なる意味を持っています。具体的には以下のような違いがあります。


【契約締結日】

当事者間で契約内容に合意し、電子署名などで契約書に記名押印した日。


【効力発生日】

効力発生日とは、契約が当事者間で有効となる日を指します。基本的には「契約締結日=効力発生日」となりますが、契約書内に効力発生日を明記すれば、別日を指定することが可能です。

例えば契約締結前に始まった取引に対し、後付けで契約を締結するケースなどが考えられます。特定の過去の日付から効力が発生するように、効力発生日を契約書内に明記する方法であり、遡及契約、遡及適用と呼ばれています。



電子契約で契約締結日を決める5つのタイミング

電子契約を締結する場合、当事者間で契約締結日のタイミングを決めておくことが大切です。以下に適切なタイミングを5つ紹介します。


①電子契約書に記載した契約開始日

契約開始日とは、契約書に定められた内容がどのタイミングで有効になるかを示す日付を指します。電子契約では、契約締結日を契約開始日と合わせることがあります。

例えば、1月1日から1年間にわたる契約期間の場合、電子契約書の契約締結日も1月1日に合わせるということです。

ただし、電子契約書に契約締結日を契約開始日とする旨が明記されている場合もあります。このようなケースでは、実際に契約を開始したい日付を契約締結日として明記しましょう。


②最初にした電子署名および押印

契約当事者の誰かが、最初に契約書に電子署名を使用した日を契約締結日にするケースもあります。契約書を作成する企業側が最初に電子署名を行う場合、契約締結日を企業側で明記できます。

取引先が先に電子署名を行う場合には、相手方のタイムラグによって契約書の作成日と契約締結日にズレが生じます。このようなケースでは、後から電子署名を行う当事者が同意をしていないにもかかわらず契約締結日が既に決まっていることになるため、理解を促す必要があります。


③最後にした電子署名および押印

契約当事者の全員が電子署名を終えたタイミングを契約締結日にすることもあります。この契約締結日の決め方は、書面契約書でよくみられるパターンです。書面契約書の場合、契約締結日を空欄にしておくことで、最後に記名押印したタイミングで日付を記載できます。

電子契約でもよくみられますが、最後の署名者にて日付を自由にコントロールできるため一定の注意が必要です。


④合意形成に至った日

書面契約書と同様に、電子契約でも契約内容の合意形成に至った日を契約締結日とすることは多くあります。合意形成に至った会議の日付や、メールを送信した日などが該当します。


⑤社内承認が完了した日

社内承認は契約当事者の内部手続きの一環であり、契約の効力を成立させるために重要な段階です。

したがって、契約当事者が社内承認を完了させたその日を契約締結日とすることもあります。企業や組織によって、承認プロセスや契約の手続きは異なります。具体的な社内ルールや契約手続きに基づき、契約締結日を決定することが重要です。



電子契約の契約締結日におけるバックデートの基礎知識

電子契約の締結においては、バックデートのリスク、不正に当たるケースなどの基礎知識を理解しておくことをおすすめします。以下に基本的な事項を解説します。


そもそもバックデートとは?

バックデートとは、実際に契約を締結した日より早い日付を契約締結日として契約書に記載することをいいます。例えば実際に契約を締結した日が4月10日だったにもかかわらず、契約書内に契約書締結日を4月1日と明記した場合などが該当します。

バックデート自体に違法性はありませんが、過去の取引を遡って正当化するために利用される可能性があり、企業のコンプライアンスの観点からも避けるべきと考えられています。


バックデートと遡及効の違い

遡及効とは、契約締結日以前に遡って効力を発揮することであり、「遡及契約」とも呼ばれます。この場合、契約書内に「本契約は、契約締結日にかかわらず、〇〇年〇〇月〇〇日より遡及的に効力を有するものとする」といった記載をします。


バックデートによる不正の罰則

前述したようにバックデート自体は違法ではありません。しかし、バックデートが不正に行われた場合、私文書偽造罪に問われる可能性があります。

たとえば相手方と合意していないにもかかわらず、合意があったかのように締結日を記載したケースなどが考えられます。

不正により罰則が適用されれば、会社の信用低下にもつながるので、少しでも疑われるような行為は避けるべきです。


バックデートが不正にならないケース

電子契約において、意図していないバックデートに関しては不正になりません。理由としては、書面契約書でもバックデートになるケースが多々あり、実際に許容されているからです。

例えば、署名欄の日付が印字された書類を印刷した後、記名押印をした後に取引先に郵送した場合、署名欄の日付よりも契約締結日は後になります。電子契約のタイムスタンプで日付が別日になるのはやむを得ないことですが、意図的に日付のズレを起こした場合は不正に当たる可能性があります。


バックデートが不正に当たるケース

電子契約を正しく利用していれば、バックデートが不正になることはありません。書面契約も含め、どのようなことがバックデートの不正に当たるのかを紹介します。


事実が捏造されている

事実が捏造されたバックデートは不正行為とされ、信義則や契約などに違反する行為です。例えば、契約締結日が本来の合意形成が行われた日付ではなく、意図的に過去の日付に設定したとします。

この場合、契約当事者が合意形成前に起きた出来事や条件を隠蔽し、契約締結日を変更することで、契約内容や権利義務の効力を操作したとみなされる可能性があります。また、証拠の改竄や虚偽の記録作成なども含まれる場合があります。 バックデートによって事実が捏造されると、契約当事者間の信頼関係が損なわれるだけでなく、法的な紛争の原因となる可能性もあります。

契約においては正確な契約締結日の明示と、誠実な取引態度が求められるため、事実を捏造したバックデートは許されるものではありません。


契約書作成から調印日の乖離が長期にわたる

契約書作成と調印日までの期間が長期に及ぶ場合、意図的なバックデートとみなされる可能性があります。また、長期にわたる契約書作成と調印日の乖離は、契約当事者間の信頼関係を損ない、法的紛争の可能性を引き起こす恐れがあります。

契約においては、正確な契約締結日と誠実な取引態度の両方が求められます。


契約締結日に新しい代表名義を調印した場合

新しい代表取締役が就任していない契約締結日に新代表者名義で調印した場合、不正なバックデートに該当します。例えば、株主総会および取締役会が7月15日に開催され、そこで新しい代表取締役が選任される場合、押印の名義も変更されます。

しかし、契約書の内容に合意した日付が7月14日であり、契約書作成日が7月18日になった場合、契約締結日と代表取締役の名義が一致しません。そのため、権限のない人物が契約書に調印したことになり、契約書の証拠力に疑義が生じてしまいます。


暦上にない日付で契約締結した場合

暦上にない日付で契約締結し、その日がバックデートにあたる場合、正当ではないと判断されます。

例えば、うるう年に該当しない年の2月29日や、存在しない4月31日などが該当するため、誤って記入しないように注意しましょう。

手書きの署名でのケアレスミスは、契約書の信憑性と取引先の信頼を失うきっかけになるため、人為的なミスが起こりづらい電子契約サービスの導入を検討することをおすすめします。


バックデートの可視化に有効なタイムスタンプとは?

タイムスタンプとは、電子文書が作成された日付と時刻を記録する技術のことです。TSA(時刻認証局)という機関が発行しており、ハッシュ値という文字列の取得とTSAによる照合で非改ざん性を証明します。

タイムスタンプを使用すれば、実際に署名を行った日時を確認できるので、バックデートが行われている場合、実際の署名時刻と異なる日付の記載があることが、一目瞭然です。そのため、バックデートを可視化するための手段として、非常に有効であるといえます。

さらにタイムスタンプは電子取引データの信頼性を担保するために重要な役割を果たし、電子帳簿保存法に対応できるというメリットもあります。



電子契約の締結日に関する留意点

電子契約を導入する際のタイムスタンプの有効期限や、契約の撤回・解除について、留意すべき点を解説します。


①タイムスタンプには有効期限がある

電子署名に法的効力を持たせる電子証明書は、最長5年の有効期間が認められています。タイムスタンプには10年の有効期限があり、タイムスタンプを付与することで電子署名の有効性を延ばして長期署名にすることが可能です。

電子署名の効力を10年以上維持したい場合には、タイムスタンプの有効期限が切れる前に更にタイムスタンプを更新する必要があります。


②契約の撤回・解除方法を定めておく

従来の書面契約書で契約を解除した場合、契約書の原本を返却するのが一般的でした。電子契約の場合、電子データで契約書を作成しているため、物理的な原本が存在せず、返却に対応できません。

そのため、契約当事者間で契約の撤回や解除方法を明確にするとともに、契約書の条項として定めておくことが重要です。



電子契約締結の基本的なフロー

ここからは、書面契約とは異なる電子契約締結の基本的なフローについて紹介します。


①電子契約サービスの導入

電子契約締結には、電子契約書の作成・設定、電子署名の利用などの機能を搭載した電子契約サービスが必要です。

電子契約サービスによって搭載されている機能が違い、紙の契約書と電子契約書の一元管理に対応したサービスもあります。そのため、複数社のサービスを比較しながら、自社が求める機能を搭載した1社に選定することが大事です。

電子契約を導入する際、自社だけではなく取引先にも契約締結プロセスの変更が発生します。導入部署や担当者に少なからず負担が発生するため、取引先に電子契約の仕組みやメリット・デメリットを丁寧に説明したうえで理解と同意を得ることが重要です。


②法務部門による契約審査・交渉

電子契約で取引を行う所管部門から法務部門に対して、契約審査を依頼します。契約審査は様々な契約トラブルのリスクを回避して、契約管理の安全性を高めるうえで重要な工程です。

法務部門による契約審査を終えたあとは、電子契約を取り交わす取引先との交渉へと移り、最終的な契約書の内容を調整します。


③電子契約書の作成

取引先との契約条件がまとまったあと、締結用の電子ファイルを作成します。PDFで作成することが一般的です。

電子契約サービスによっては、契約書を事前に登録できるテンプレート機能が搭載されています。カスタマイズに対応したテンプレート機能であれば、他の契約にも再利用して業務効率化を図ることが可能です。


④電子署名の使用

電子契約サービスを利用して、電子ファイルをアップロードし、署名の依頼を行います。署名者にて署名処理を行い、電子署名を使用して契約締結を行います。電子契約書に法的効力を持たせる場合、当事者型署名または立会人型署名(事業者型署名)を使用する必要があります。

当事者型署名とは、契約を締結する本人名義の電子証明書を使用する方法です。契約者本人による電子証明書の発行により、立会人型よりも容易に本人性を担保します。

立会人型署名とは、契約者に代わって電子契約サービスを提供する事業者名義の電子証明書を使用する方法です。契約当事者にかかる負担を軽減でき、契約締結までのリードタイムの短縮にも役立ちます。

当事者型署名と立会人型署名は、契約内容によって使い分けるのが望ましいです。そのため、電子契約サービスを選定する際は、両方の署名タイプに対応しているかどうかが重要なポイントとなります。


⑤原本ファイルの保存

電子契約書に電子署名を使用したあと、原本ファイルを電子帳簿保存法に沿って保管します。

電子帳簿保存法とは、法人や個人事業主などの事業主が取引記録や会計帳簿を電子化して保存する際の基準や手続きを定めた法律のことです。2021年(令和3年)に改正された電子帳簿保存法によって、電子取引に使用した電子文書はそのまま電子データで保存するよう義務付けられています。2022年1月1日から施行されましたが、やむを得ない事情がある場合に、電子取引の書面保存を認める宥恕期間が2023年12月31日まで設けられていました。現在は終了しており、電子取引を印刷した書面での保存は認められていません。

電子契約サービスに電子契約書を保存すれば、いつでも契約締結の詳細、ステータス状況の確認や契約書へのアクセスが可能となります。



まとめ

この記事では、電子契約の締結における契約締結日の概要、締結日の候補とバックデートの問題について解説しました。企業のコンプライアンスにも関わる問題なので、内容を正しく理解するようにしましょう。なお、電子契約を法律に準拠して安全に運用したい場合、法改正に迅速に対応している電子契約サービスの導入が望ましいです。

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