電子契約での電子署名とタイムスタンプの違い、役割、よくある質問

(更新日:2024年6月21日)

目次[非表示]

  1. 1.電子契約における電子署名とタイムスタンプの基礎知識
    1. 1.1.電子署名の基礎知識
    2. 1.2.タイムスタンプの基礎知識
    3. 1.3.電子署名とタイムスタンプの違い
  2. 2.電子契約における電子署名の主な役割
    1. 2.1.①オンライン上での契約締結をスムーズにする
    2. 2.2.②電子文書の真正性を証明する
    3. 2.3.③公開鍵暗号やハッシュ関数で本人性を検証する
  3. 3.電子契約におけるタイムスタンプの主な役割
    1. 3.1.①電子文書の存在証明ができる
    2. 3.2.②電子文書の改ざん防止になる
    3. 3.3.③電子文書の有効期限を長期化できる
    4. 3.4.④電子帳簿保存法に対応しやすい
    5. 3.5.⑤バックデートのリスクを防ぐ
  4. 4.電子契約における電子署名・タイムスタンプについてのQ&A
    1. 4.1.電子署名とタイムスタンプは法的に不要?
    2. 4.2.改正電子帳簿保存法による電子署名とタイムスタンプへの影響は?
    3. 4.3.電子契約で電子署名やタイムスタンプを確認する方法は?
    4. 4.4.電子署名やタイムスタンプは無料で利用できる?
    5. 4.5.電子署名とタイムスタンプを行うタイミングは?
    6. 4.6.電子署名とタイムスタンプを利用する際の主な注意点は?
  5. 5.電子署名とタイムスタンプは併用できる?
  6. 6.まとめ


電子契約では、オンラインで契約を締結する際に、電子文書の信頼性を高める「電子署名」や「タイムスタンプ」などの技術が用いられています。契約書は当事者間の契約締結を証明する重要な書類だからこそ、安全に取引を実現するためにも、どんな技術が活躍しているのかを確認しておきましょう。
 
この記事では、電子署名とタイムスタンプを基本から徹底解説します。それぞれの役割の違いや、電子契約でよくある疑問についても紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。


電子契約における電子署名とタイムスタンプの基礎知識

初めに、電子契約において重要な「電子署名」と「タイムスタンプ」の基礎知識を解説します。両者の仕組みや役割を押さえておきましょう。

電子署名の基礎知識

・電子署名とは?

電子署名とは、電子文書が本人によって作成されたことや、改ざんされていないことを証明するための技術です。書面契約における手書きのサインや印鑑の役割を担っています。電子署名のある文書は、署名・押印のある紙の書類と同等に法的な効力を持つとされます。

・電子署名の仕組み

電子署名は、暗号技術やハッシュ関数により本人性や非改ざん性を証明します。電子文書の送信者のみが持つ秘密鍵によって本人性を証明し、ハッシュ値の比較によりデータの非改ざん性を証明します。

タイムスタンプの基礎知識

・タイムスタンプとは?

タイムスタンプとは、電子文書がある時点で存在していたことや、それ以降に改ざんされていないことを証明するための技術です。書面契約における契印や割印の役割を担っています。電子署名との併用により、文書の完全性を確保します。

・タイムスタンプの仕組み

タイムスタンプは、時刻認証局(TSA)によって発行される時刻情報とハッシュ値を電子文書に与える仕組みとなっています。時刻認証局はタイムスタンプを発行する第三者機関です。電子文書のハッシュ値の比較により、非改ざん性を証明します。

電子署名とタイムスタンプの違い

前述の通り、電子署名とは電子文書に対して行われるデジタル形式の署名のことです。また、タイムスタンプとは時刻情報とハッシュ値により電子文書の非改ざん性を証明する技術です。どちらも電子文書の信頼性を高める技術という点で共通していますが、それぞれ役割に違いがあります。

電子契約における電子署名の主な役割

電子署名は、電子文書の真正性や本人性を担保し、改ざんやなりすましによる不正を防止するために活用されます。ここでは、電子署名の3つの役割をそれぞれ解説します。

①オンライン上での契約締結をスムーズにする

電子署名には、オンライン上での契約締結を効率化する役割があります。従来の紙の契約書では、当事者が手書きでサインして印鑑で押印するために、郵送や返送の作業が発生していました。それに対して、電子署名を利用すればオンライン上で契約書に署名できるようになるので、郵送や返送の手間は不要です。契約プロセスが迅速化されるため、スムーズな締結を実現するとともに、印刷代・郵送代・印紙代の削減にもつながります。さらには、文書の電子化により紙よりも保存や管理が容易になるのも、電子署名を使用するメリットです。


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②電子文書の真正性を証明する

電子署名には、電子契約において電子文書の真正性を証明する役割があります。「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」の第2章第3条では、電子文書の真正性の成立について以下のように定義されています。

第二章 電磁的記録の真正な成立の推定
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

【出典】 「成十二年法律第百二号 電子署名及び認証業務に関する法律」(e-Gov法令検索)

また、「民事訴訟法」の第228条においても、文書を裁判の証拠として提出する際に真正性の証明が必要であることが求められています。電子取引を記録する重要な書類である契約書には、電子署名が必須です。

(文書の成立)
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

【出典】「平成八年法律第百九号 民事訴訟法」(e-Gov法令検索)


③公開鍵暗号やハッシュ関数で本人性を検証する

電子署名には、本人性を検証する役割があります。その際は、「公開鍵暗号」「公開鍵基盤(PKI)」「ハッシュ関数」を組み合わせた技術で本人性の検証が行われます。従来の物理的な署名にはできないセキュリティ対策を講じることが可能です。
 
公開鍵暗号とは、暗号と復号とで異なる鍵(秘密鍵・公開鍵)を使用する方式です。送信者と受信者は秘密鍵と公開鍵を使用し、電子データを暗号化・復号することで、安全なやりとりが可能となります。
 
公開鍵基盤とは、電子署名が当事者によるものである事実を第三者機関の認証局に証明してもらう技術です。認証局が発行する電子証明書により本人性を担保し、なりすましや改ざんを防止します。
 
ハッシュ関数とは、電子データが改ざんされていない事実を証明する技術です。まずハッシュ関数を用いて電子データの「ハッシュ値」を生成します。そして、電子データの送信前のハッシュ値と、受信者に共有された電子データを復号した際のハッシュ値を照合します。これにより、データ改ざんの有無を確認できるのです。


電子契約におけるタイムスタンプの主な役割

タイムスタンプは、刻印された時刻に電子文書が確かに存在し、取引において有効であることを証明する役割を担っています。続いて、タイムスタンプの5つの役割をそれぞれ解説します。

①電子文書の存在証明ができる

タイムスタンプには、電子文書の存在を証明する役割があります。刻印された時刻の時点で電子文書が存在していた事実を証明できます。前述の電子署名では本人性や非改ざん性を証明できる一方、文章が作成された日時や、署名した後の改ざんの有無は証明できません。そのため、電子署名とタイムスタンプを併用することで、電子文書の信頼性をより確保できるのです。

②電子文書の改ざん防止になる

タイムスタンプには電子文書の改ざんのリスクを避ける役割があります。万が一、タイムスタンプのある電子文書に改ざんが試みられた場合、タイムスタンプは無効となり、文書に異常があることがわかります。一度生成されたタイムスタンプの情報を変更することは困難です。このように文書の作成や変更の事実が明確になることから、タイムスタンプは改ざん防止に有効だとされています。

③電子文書の有効期限を長期化できる

電子文書にタイムスタンプが刻印されていると、電子署名の有効期限を最長で約10年まで延長できます。

電子証明書の有効期限は最短で1年、最長でも5年です。有効期限が切れた電子証明書は、有効性が確認できないものと見なされます。ただし、電子署名の有効期限が切れていても、タイムスタンプの有効期限が切れていなければ有効性を証明することが可能です。タイムスタンプの有効期限はサービスプロバイダーによって異なります。有効期限が最長10年に設定されている場合は、多くの契約で必要とされる法的な保管期間の要件を満たせます。

④電子帳簿保存法に対応しやすい

電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類のデータ保存を可能とするための法律です。重要な書類をデータ化することから、不正のリスクを避けるためにも、法的なルールを守って適切な方法で保存しなければなりません。その際、「電子取引(=オンライン上で書類を受領する方法)」や「スキャナ保存(=紙で受領した書類をスキャンしてデータ化する方法)」の電子ファイルにタイムスタンプを付与すると、法律に対応しながら効率的な運用ができます。

⑤バックデートのリスクを防ぐ

バックデートとは、契約締結日よりも以前の日付を契約書に契約締結日として記載することを指します。その際、「〇〇年〇〇月〇〇日に遡って適用する」といった遡及条項がなく、実際とは異なる契約締結日が記載されている場合、不正と見なされるおそれがあります。タイムスタンプ機能を用いた電子契約であれば、日付と時刻の情報が含まれるため、バックデートのリスクを避けられるのです。

電子契約における電子署名・タイムスタンプについてのQ&A

最後に、電子契約における署名とタイムスタンプに関するQ&Aをご紹介します。業務でよくある疑問を解消しましょう。

電子署名とタイムスタンプは法的に不要?

​​​​​​電子契約では、電子署名を行うことで書類の真正性を証明できます。その際、タイムスタンプは必須ではありません。ただし、タイムスタンプによって電子署名のみでは難しい存在証明や非改ざん証明が可能となります。こうした理由から、タイムスタンプとの併用が推奨されているのです。

改正電子帳簿保存法による電子署名とタイムスタンプへの影響は?

電子帳簿保存法の改正にともない、一定の条件を満たせば電子取引やスキャナ保存におけるタイムスタンプが必須ではなくなりました。ただし、タイムスタンプなしで運用する場合も法的なルールを満たした社内環境の整備が必要で、運用の手間がかかるのが注意点です。

電子契約で電子署名やタイムスタンプを確認する方法は?

PDF形式の契約書の場合、電子署名やタイムスタンプはAdobe Acrobat Readerの「署名パネル」のメニューから確認できます。また、署名パネルに表示された履歴から、詳細情報を確認することが可能です。

電子署名やタイムスタンプは無料で利用できる?

電子署名やタイムスタンプは、Adobe Acrobat ReaderやMicrosoft Word・Excelなど既存のソフトを利用して行う方法もあります。ただし、これらの操作には手間がかかることから、業務効率化の観点から多くの企業が電子署名サービスを利用しています。

【参考】「Microsoft 365 ファイルのデジタル署名を追加または削除する」(Microsoft)

電子署名とタイムスタンプを行うタイミングは?

電子契約サービスを導入している場合、システム上で書類送信や契約締結などのタイミングで自動的に電子署名やタイムスタンプが行われます。詳しくはサービスの操作説明書をご確認ください。なお、電子帳簿保存法の改正にともない、電子取引やスキャナ保存のタイムスタンプの付与期間は「2カ月とおおむね7営業日以内」に緩和されています。

電子署名とタイムスタンプを利用する際の主な注意点は?

電子署名やタイムスタンプなどの電子契約には、不正アクセスによる情報漏えいなど、情報セキュリティのリスクが存在します。そのため、適切なアクセス権限を設定して閲覧に制限をかけたり、ウイルス対策ソフトを導入したりと、セキュリティ対策に取り組む必要性があります。

電子署名とタイムスタンプは併用できる?

電子署名とタイムスタンプは、いずれも電子文書の信頼性を高める技術です。両者を組み合わせることで、電子文書の完全性を担保できます。ただし、電子署名とタイムスタンプを併用する場合、それぞれ発行手続きが必要です。その際、電子契約サービスを利用すれば、そういった手続きは不要で電子署名とタイムスタンプが利用可能です。 本人性・非改ざん性が担保された電子契約をスムーズに締結できるのがメリットです。

まとめ

ここまで、電子契約に関する基礎知識をお伝えしました。電子署名とタイムスタンプは電子文書の信頼性を高める技術です。併用により信頼性の高い契約を実現できます。電子契約・契約管理サービスの「WAN-Sign」なら、高度なセキュリティ体制のもとで安全性を確保しながら、簡単な操作で電子契約をご利用いただけます。電子帳簿保存法や電子署名法に準拠した法的環境を整備できる点でもおすすめです。高機能で安全性の高い電子契約は「WAN-Sign」にお任せください。


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