請求書の電子化で注意すべきポイント


(更新日:2023年8月7日)​​​​​​​

目次[非表示]

  1. 1.請求書の電子化は可能なのか?
  2. 2.電子帳簿保存法とe-文書法への準拠
    1. 2.1.電子帳簿保存法とは?
    2. 2.2.e-文書法とは?
  3. 3.電子データとしての保存が認められている書類と、その保存方法
  4. 4.電子帳簿保存法へ準拠するには?
  5. 5.法的要件を正しく理解する


企業が長期的に保存すべき書類は多岐に渡ります。請求書もそのうちの1つであり、日常的に発生する書類なので管理が複雑になっているという企業も多いでしょう。

ただし、請求書保存を電子化することで問題は解決できます。本稿では請求書の電子化で注意すべきポイントについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。


請求書の電子化は可能なのか?

まず、電子データ(PDF等)で保存した請求書を顧客企業とやり取りするのに問題はないか?という点について説明します。結論から申し上げると、請求書は「双方が請求を認識すること」を目的に作成し、やり取りされる書類のため、自社と顧客企業との合意があれば電子データで保存した請求書をやり取りしても法的に問題はありません。

ただし、ExcelやWordなどで作成した請求書は簡単に改ざんが行えるため、基本的には変更ができない形式としてPDFで作成した請求書をやり取りすることになります。それに加えて、後述する電子署名やタイムスタンプといった認証技術を付与することでより安全性が高まります。

PDFで請求書を送信する場合は印鑑を捺印する必要はありません。そもそも請求書は捺印が不要な書類であり、印鑑が無くても書類として機能します。ただし、会社によっては角印を捺印する必要とする場合もあるため、一度印刷して捺印してから再度PDF化するというケースもあるでしょう。

原本の保存については、顧客企業との取引の中で求められるケースも少なくないため、事前に原本の必要性について確認しましょう。


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電子帳簿保存法とe-文書法への準拠

帳票書類などを電子データとして保存するためには、電子帳簿保存法とe-文書法へ準拠する必要があり、請求書の電子データ保存も例外ではありません。


電子帳簿保存法とは?

日本で初めて財務会計システムや販売管理システム等で国税関係帳簿書類の、電子データでの保存が可能になった法律であり、1998年に施行されました。高度情報化社会やペーパーレス化が進む中で、経済界からの強い要望を受けて策定され、国税庁では電子帳簿保存法の基本的な考え方について、下記のように説明しています。

新しい時代の流れに対応し、納税者の帳簿書類の保存の負担軽減を図るために、記録段階からコンピュータ処理によっている帳簿書類については、電子データ等により保存することを認めることが必要であると考えます。その際には、コンピュータ処理は、痕跡を残さず記録の遡及訂正をすることが容易である、肉眼でみるためには出力装置が必要であるなどの特性を有することから、適正公平な課税の確保に必要な条件整備を行うことが不可欠です。また、電子データ等による保存を容認するための環境整備として、EDI取引(取引情報のやり取りを電子データの交換により行う取引)に係る電子データの保存を義務づけることが望ましいと考えます。

引用:国税庁「制度創設等の背景


当時はまだ、紙の書類として作成したものをスキャンし、電子データとして保存するという法令は含まれていません。



e-文書法とは?

電子帳簿保存法の施行から7年後の2005年に施行されたのがe-文書法です。これにより、電子帳簿法が改訂され、それまで対象外となっていた取引先と紙で授受する書類をスキャンすることで電子保存ができるようになり、電子的に保存できる書類の幅がグンと広がりました。

民間企業の強い要望があり策定され、電子帳簿法が国税関係帳簿書類のみを対象とした法律なのに対し、e-文書法は紙による保存が義務付けられている書類の電子保存を容認するための、規制緩和関連の法律として施行されています。

その後、2015年と2016年の税制改正によって要件緩和が行われ、現在ではスマートフォンで撮影した画像での保存も認められており、利便性が非常に向上しています。


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電子データとしての保存が認められている書類と、その保存方法

請求書以外にも電子データとしての保存が認められている書類は多く、以下に対象書類と保存方法を明記した表をご紹介します。


<電子帳簿保存法対象の書類>

対象書類
分類
総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金・買掛金元帳固定資産台帳、売上・仕入帳など
国税関係帳簿
棚卸表、貸借対照表、損益計算書、その他決算に関して作成した書類
国税関係書類
(決算関係書類)
領収書(および写し)、契約書(および写し)、請求書、納品書など
国税関係書類
(その他の証憑類)
見積書、注文書など
一般書類


<上記書類の保存方法>

区分
対象書類
電磁的記録による保存
スキャナ保存
帳簿
仕訳帳、現金出納量、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳など
会計ソフトのデータ等
保存不可
書類

『取引関係書類』

注文書、請求書、見積書、契約書、領収書、納品書など

紙で発行した書類の控え
紙で受け取った書類

電子取引データ

『決算関係書類』

棚卸表、賃借対照表、損益計算書など

会計ソフトのデータ等
保存不可



電子帳簿保存法へ準拠するには?

請求書を電子データとして保存するには、電子帳簿保存法へ準拠する必要があります。ただし、単に要件を満たして電子データとして保存するのではなく、事前に税務署への申請を行い、認可を受ける必要があるので注意しましょう。下記にその手順をご紹介します。


  1. 国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書を記入
  2. 承認を受けようとする国税関係書類の保存を行う電子計算機処理システムの概要を記載した書類
  3. 承認を受けようとする国税関係書類の保存を行う電子計算機処理に関する事務手続の概要を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書の写し)
  4. 申請書の記載事項を補完するために必要となる書類その他参考となるべき書類その他参考書類

参考:国税庁ホームページ「[手続名]国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請


請求書の電子データ保存を希望する企業は、電子データとしての保存を開始する日の3ヵ月前までに上記の申請を完了させる必要があります。以上の申請を行わずに原本を破棄した場合は、監査対応の際のリスクが高まるので注意しましょう。

※2022年の改正により税務署長の事前承認制度が廃止となりました。詳しくは下記にて解説しています。

https://wan-sign.wanbishi.co.jp/blog/electronicbook-storage


>>電子帳簿の保存方法って?電子帳簿保存法で変わることやメリットデメリットを紹介


法的要件を正しく理解する

請求書の電子データ化を目指す企業の中には、電子帳簿保存法などの法的要件をしっかりと確認しないまま保存しているケースがあります。すぐに問題は発生しなくても、監査が入った際には電子データとして保存している請求書が正式書類として認められないため、コンプライアンス違反に当たる可能性があります。

請求書だけでなく、その他の帳票書類の電子データ化については必ず法的要件を確認し、正しい手順を踏んだ上で電子データを保存することが必要です。

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>>電子契約に関連する法律と要件を紹介

>>電子契約関連の法律まとめ


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