電子契約サービスの最新市場動向とトレンド、導入するうえで大切なこと・メリットは?
(公開日:2019年9月18日)
目次[非表示]
- 1.電子契約サービスの市場動向
- 2.電子契約サービスの普及が進む背景
- 2.1.電子帳簿保存法など法律の整備
- 2.2.DX・ペーパーレス化を推進する企業の増加
- 2.3.テレワーク需要の増加
- 2.4.契約書管理の課題とニーズの合致
- 3.電子契約サービスを導入するメリット
- 3.1.コスト削減効果
- 3.2.契約業務の効率化(短期化)
- 3.3.コンプライアンス対応
- 4.電子契約サービスのトレンドが「クラウドサービス」である理由
- 5.電子契約サービスを導入する上で大切なこと
- 6.電子契約サービスに関するよくある質問
- 6.1.Q.電子契約サービスを選ぶポイントは?
- 6.2.Q.電子契約サービスの料金の相場は?
- 6.3.Q.無料で利用できる電子契約サービスはある?有料プランとの違いは?
- 6.4.Q.電子契約サービスの主な機能は?
- 6.5.Q.電子契約サービスと電子署名、電子印鑑、電子サインは違う?
- 6.6.Q.電子契約は法的に有効?
- 6.7.Q.電子契約の保管で気をつけることは?
- 7.まとめ

電子帳簿保存法の改正やDX推進の流れを受けて、契約書の電子化に踏み切る企業が増えています。「紙の契約書をなくしたいが、何から手をつければいいのか分からない」と感じている担当者も多いのではないでしょうか。
そうした課題の解決策として注目されているのが、電子契約サービスです。ただし、サービスごとに署名方式や機能、料金体系が異なるため、導入前にポイントを整理しておく必要があります。
本記事では、電子契約サービスの市場動向と普及の背景を整理したうえで、導入のメリットやサービス選びのポイント、よくある質問まで解説します。
電子契約サービスの市場動向
紙の契約書からの移行が進むなか、電子契約サービスの国内市場は年々拡大しています。まずは、直近の市場データからその推移を確認します。
電子契約サービスの国内市場規模と成長率の推移
株式会社アイ・ティ・アール(ITR)の調査によると、2024年度の国内電子契約サービス市場は売上金額295億円、前年度比20.7%増でした。2025年度も22.0%増が見込まれています。
成長を牽引しているのは、BtoC分野への利用拡大です。不動産取引における電子契約の解禁や、外食産業での雇用契約の電子化など、利用用途の裾野が広がったことが市場を押し上げました。
また、CAGR(年平均成長率)は2024〜2029年度で11.3%の予測で、2029年度には500億円を超える見通しです。2020年度の約101億円から約5倍に拡大する計算になります。
導入率・普及率の増加傾向
電子契約の導入はかつて大企業が先行していましたが、クラウド型サービスの普及により初期費用のハードルが下がり、中堅・中小企業へと裾野が広がっています。
JIPDECとITRの「企業IT利活用動向調査2024」によると、従業員50名以上の企業における利用率は77.9%に達しました。前回調査の76.8%からも上昇しています。
ただし、導入率の差は依然として残っており、すべての企業に行き渡っているわけではありません。今後はこの格差がどこまで縮まるかが注目されます。
出典:電子契約の導入率は77.9%。導入企業はコスト削減効果を実感。 導入検討中の企業はシステム導入の手間とコスト増加を懸念。 データ越境移転先で多い国・地域はアジア太平洋地域
>>電子契約における契約書の文言とは?変更箇所や注意点を紹介
電子契約サービスの普及が進む背景
電子契約サービスが急速に普及した背景には、法改正とビジネス環境の変化が大きく関わっています。ここでは主な4つの要因を紹介します。
電子帳簿保存法など法律の整備
2022年施行の改正電子帳簿保存法により、電子取引データの電子保存が義務化されました。2年間の宥恕措置を経て、2024年1月からは完全義務化となっています(相当の理由がある場合には猶予措置あり)。そのため、メールやクラウドで送受信した契約書・請求書は、紙に印刷せず電子データのまま保存しなければなりません。
この法改正をきっかけに、契約書を電子的に管理する体制の整備が急務となりました。加えて、電子署名法(2001年施行)やe-文書法(2005年施行)といった関連法令がすでに整備されていたことも、電子契約の法的有効性に対する企業の信頼を下支えしています。
DX・ペーパーレス化を推進する企業の増加
DX(デジタルトランスフォーメーション)を経営課題に掲げる企業が増えるなか、紙ベースの契約業務が見直されています。紙の契約書には印刷・押印・郵送・保管といったアナログ作業がともなうことから、デジタル化の妨げになりやすい業務の一つでした。
契約の締結から文書管理までをオンラインに切り替えれば、こうした手作業の工程を一括で解消できます。
テレワーク需要の増加
2020年以降、テレワークの普及によって「オフィスに出社しなくても業務を完結させたい」というニーズが急速に高まりました。ただ、紙の契約書は押印のためだけに出社が必要になることがあり、柔軟な働き方を阻む要因の一つでした。
クラウド上で契約の作成・確認・署名まで完結できる仕組みが広まったことで、出社に依存しない契約フローが実現しています。
契約書管理の課題とニーズの合致
契約件数が増えるにつれ、紙の契約書の管理負担は大きくなります。保管スペースの確保、紛失リスク、検索性の低さ、更新漏れなど、課題は多方面にわたります。
電子契約に切り替えれば、契約書の一元管理や文書検索、期限のリマインド通知によってこれらの課題を解消できます。管理コストの削減と業務精度の向上を同時に実現できる点が、導入企業の増加につながっています。
電子契約サービスを導入するメリット
では、クラウドサービスかオンプレミスかに関わらず、電子契約サービスにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
コスト削減効果
契約業務により発生する「目に見えるコスト」としては、印紙代や郵送代など契約書作成にかかるコストですが、さらには原本の保管スペースなども目に見える物理的なコストとなります。
一方で目に「見えないコスト」として大きな比重となるのが人件費です。
紙で契約書を作成・管理している以上は、外出先や自宅で書類を作成することができないため、ほとんどの場合オフィスで作業する必要があります。そうした移動の時間や契約締結までにかかるトータル所要時間が、契約に携わる社員の人件費として消費されます。
一概にコスト算定は難しいですが、営業担当者がどの程度契約書作成に時間を割いているか算出できれば、おおよそのコストは把握できるでしょう。
契約業務の効率化(短期化)
契約業務では、契約書の作成や印刷、郵送など手間が多く時間もかかります。さらに契約締結が完了するためには、取引先から署名された原本の返送を待たなければなりません。
また、ようやく手にした契約書に記載ミスや条件の変更が発生した場合は、また最初から手続きをやり直す必要があり、その都度オフィスでのデスクワークが発生することになります。
いつでもどこからでも仕事ができる環境が整いつつある現在において、契約書作成や締結のために出社しなければならないとしたら、業務効率の観点から最優先で見直すべき領域といえるかもしれません。
コンプライアンス対応
契約締結はどの企業においても取引を開始するためには必要な行為となります。ただ、その契約締結に多くの労力や時間がかかってしまう状況では、企業にとってリスクが生じる期間とも言えます。
注意点として、契約締結にあまりに時間を要する場合、それを見越してプロジェクトを見切り発車させてしまうなど、コンプライアンス上の問題に発展するケースも起こり得ます。
特に物販でなく役務を提供する請負工事やシステム開発などでよくみられる問題の一つです。
一方で、物販などでもよく生じる問題は、売上計上のための会計処理と書類(原本)が届くタイミングです。最近では外資系企業などを中心に管理会計として四半期決算や月次締めを適切に行う企業が増えています。そのためには当然のことではありますが、正しく契約書が締結されている必要があり、契約締結の遅延は売上計上のタイミングに影響が及ぶため、厳しく数字を管理している企業ほど、契約締結の遅延による影響はおろそかにできません。
電子契約サービスは、こうした問題点に対しても効果を発揮します。契約システム上で契約書を作成し、電子署名によって契約書の信憑性を担保、そのまま契約書をアップロードできるので、契約書の作成から提出までの時間が大幅に短縮されます。
取引先はアップロードされた契約書を、迅速に検索・閲覧・ダウンロードができ、また電子署名を行うことで契約締結が完了します。
契約書原本のみならず関連書類もまとめて管理することで、原本の紛失や後から参照する際にも検索性が高く、非常に便利です。
電子契約サービスのトレンドが「クラウドサービス」である理由
電子契約サービスの提供形態は「オンプレミス型」と「クラウド型」に大別されます。現在はクラウド型が主流です。
オンプレミス型は自社サーバーにシステムを構築する方式です。カスタマイズの自由度は高いものの、初期費用がかさみ、導入までに数か月を要することもあります。中小企業にとっては導入のハードルが高い選択肢でした。
こうした課題を解消したのがクラウド型です。インターネット経由で利用でき、自社でサーバーを持つ必要がありません。月額料金だけで始められるうえ、アップデートやセキュリティ対策はサービス提供者側が担うため、運用の手間が大きく減ります。
また、場所を問わずアクセスできる点は、テレワーク環境との親和性が高く、取引先にとって利用しやすい仕組みといえます。近年はAPI連携で既存の業務システムと接続できるサービスが増えており、契約業務から周辺業務まで一気通貫の効率化が図れるようになりました。
電子契約サービスを導入する上で大切なこと
クラウド型の普及で電子契約サービスは導入しやすくなりましたが、自社の契約業務に合った設計がなければ効果は限定的です。押さえておきたい4つのポイントを見ていきます。
対象とする契約書と業務フローを確定させる
電子契約サービスを導入する際、最初に決めるべきは「どの契約書を電子化するか」です。締結件数が多い契約や定型的な書類から段階的に移行すると、社内の混乱を抑えながら運用を軌道に乗せられます。
対象を絞ったら、契約書の作成から保管までのワークフローを可視化しましょう。承認フローのどこをシステム化するかを明確にしておくことで、導入後の手戻りを減らせます。
自社に適切な署名タイプと仕組みを選択する
電子署名の方式は、大きく「当事者型」と「立会人型」の2つに分かれます。
当事者型は契約当事者自身が電子証明書を取得して署名する方式で、電子署名法にもとづく高い法的証拠力を持ちます。一方の立会人型はサービス提供者が立会人として電子サインを付与する方式で、取引先に電子証明書の取得を求めずに送信・締結できます。
自社が扱う契約の重要度や取引先の対応状況をもとに、どちらの署名方式が適しているかを判断しましょう。両タイプに対応したサービスを選んでおけば、契約内容に応じた使い分けができます。
文書の保存・検索・更新を含む運用を設計する
電子契約サービスは「締結して終わり」ではなく、契約書の保管・検索・更新まで含めた運用設計が求められます。電子帳簿保存法では、電子データの保存に際して検索機能の確保が必要です。加えて、真実性を担保する手段として、タイムスタンプの付与・訂正や削除の記録が残るシステムの利用・事務処理規程の策定のうち、いずれか1つ以上を満たさなければなりません。
サービスの選定時には、こうした法的要件への対応状況に加え、文書検索やフォルダ分類、契約期限のリマインド通知、PDFダウンロードといった文書管理機能の充実度を確認してください。契約書を一元管理できる仕組みが整っていれば、書類の散逸や更新漏れを防ぎやすくなります。
取引先への周知や社内規程の整備を徹底する
電子契約は自社だけで完結するものではありません。取引先にも電子契約での締結に同意してもらう必要があるため、導入前に移行スケジュールと利用方法を説明しておきましょう。メールや書面で案内を送り、問い合わせ窓口を設けておくとスムーズです。
社内に対しても、押印廃止の範囲や電子署名の権限者、文書の保管ルールなどを規程やガイドラインとして明文化・周知します。ルールが曖昧なまま運用を始めると、セキュリティ面のリスクや現場の混乱を招きかねません。
電子契約サービスに関するよくある質問
Q.電子契約サービスを選ぶポイントは?
サービスを比較する際は、署名方式(当事者型・立会人型)の対応有無、料金体系(月額料金・送信料・追加料金)、セキュリティ対策、API連携をはじめとしたシステム連携の可否、サポート体制の5点を軸にチェックしましょう。
自社の契約件数やユーザー数を踏まえたうえで、コストと機能のバランスが取れたサービスを選ぶことが大切です。
Q.電子契約サービスの料金の相場は?
料金体系は月額固定型と従量課金型に大別されます。月額料金の相場は数千円〜数万円程度で、送信件数に応じた送信料が別途かかるサービスもあります。初期費用が無料のサービスも多いため、コスト面での導入ハードルは以前より下がっています。
Q.無料で利用できる電子契約サービスはある?有料プランとの違いは?
無料プランを用意しているサービスはあります。ただし、月あたりの送信件数やユーザー数に上限が設けられているのが一般的です。
有料プランに移行すると、送信件数の上限が大幅に緩和される、または無制限になるほか、ワークフロー機能やAPI連携、導入事例の共有など利用できる機能の幅が広がります。まずは無料プランで操作感を確かめ、契約件数が増えた段階で有料プランへ切り替えると良いでしょう。
Q.電子契約サービスの主な機能は?
代表的な機能として、契約書の作成・テンプレート管理、電子署名の付与、承認から締結までのワークフロー管理が挙げられます。締結済み文書の保管・検索や契約期限のリマインド通知を備えるサービスも多く、契約書管理を一元化できます。
また、最近はAIを活用した契約書レビューや外部システムとのAPI連携、申込フォームと連動した契約書の自動生成に対応したサービスも登場しています。
Q.電子契約サービスと電子署名、電子印鑑、電子サインは違う?
電子契約サービスは、契約書の作成から締結・管理までを一貫して行うシステムの総称です。電子署名は本人確認と改ざん防止のための技術的な仕組み、電子印鑑は印影をデジタル化したもの、電子サインはメール認証やタブレット上の手書きなど、広義における「電子的な同意手段」を指します。
Q.電子契約は法的に有効?
有効です。電子署名法第3条では、本人が一定の要件を満たす電子署名を行った電子文書について、真正に成立したものと推定すると定めています。
Q.電子契約の保管で気をつけることは?
電子帳簿保存法の電子取引データ保存要件を満たす形での保管が必要です。タイムスタンプの付与や訂正・削除の記録が残るシステムでの保存など、真実性の確保手段を1つ以上満たさなければなりません。多くのサービスは保存要件に対応した保管機能を備えているため、選定時に確認しておきましょう。
まとめ
電子契約サービスの国内市場は拡大を続けており、クラウド型を中心に企業規模を問わず導入が進んでいます。対象とする契約書の範囲や署名方式を明確にし、ワークフローや文書管理の運用まで含めて設計することが、導入効果を高めるポイントです。
サービスを選ぶ際は、料金体系や機能だけでなく、取引先の受け入れやすさやサポート体制も判断材料に加えておきましょう。
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