電子サインに法的効力はある?導入メリットや活用シーンを紹介
目次[非表示]
- 1.電子サインとは?
- 1.1.①電子署名との違い
- 1.2.②電子サインの法的効力
- 2.書面契約と電子契約の違い
- 3.電子サインに法的効力を持たせる条件
- 3.1.①本人性が確認できること
- 3.2.②内容の非改ざんが確認できること
- 4.電子サインを導入するメリット
- 4.1.①コスト削減
- 4.2.②保管スペースの削減
- 4.3.③リモートワークへの対応
- 4.4.④契約業務の効率化
- 4.5.⑤コンプライアンス強化
- 5.電子サインの活用シーン
- 6.まとめ
紙文書への署名・押印に代わる手段として注目されている電子サイン。
電子文書に付与することで真正性を確保できますが、法的効力を持たせるためには、さまざまな要件を満たしている必要があります。
この記事では、電子サインの基本概要や要件、導入するメリットや主な活用シーンを詳しく解説します。
電子サインとは?
電子サインとは、手書きの署名に代わり電子的に施される署名方法です。
タブレットやスマートフォン、パソコンなどで表示される電子文書に対して、タッチペンを使い署名する方法が代表例として挙げられます。
また、メールアドレスやパスワードを使い、認証や指紋で本人確認を行い電子的な措置を施す方法も、電子サインの一つだといえます。
ここでは、電子サインと電子署名の違いや、電子サインの法的効力について解説します。
①電子署名との違い
電子サインは、電子署名よりも広い概念で使われる言葉です。
電子署名は『電子署名法第二条』で、本人性と非改ざん性を証明できなければ要件を満たせないと定められています。
要件を満たすための手段として、信頼できる第三者機関が本人性を担保する電子証明書と、改ざんがないことを証明するタイムスタンプを用いるのが一般的です。
一方で、電子署名やデジタル署名、電子印鑑など、広い概念で使われる電子サインには、電子署名のような電子証明書という仕組みがありません。
法的証拠力が強い電子署名も電子サインに含まれていますが、証拠力が低い署名方法が含まれている点には注意が必要です。
>>電子署名と電子サインの違いを知ろう!4つの項目で事業への適正を判断
②電子サインの法的効力
端末に手書きしただけの電子サインに法的効力はありません。
近年では、店舗での決済や保険の契約時などで、端末に電子サインをするケースは少なくありません。一見すると、手書きの署名や押印と同じ法的効力があるように感じるはずです。
しかし、電子署名法では公開鍵暗号方式によるデジタル署名方式が前提と定められているため、端末に手書きで電子サインをしただけでは法的効力を有しません。
電子サインに法的効力を持たせるためには、本人性と内容が改変されていないことを証明する必要があります。
>>電子印鑑の法的効力を徹底解説!普通のハンコや電子サインと異なる要件
書面契約と電子契約の違い
書面契約と電子契約の違いは、物理的な書面か電子データのどちらで契約を締結するかです。
書面契約では手書きの署名や押印で本人性を担保できますが、電子契約では電子証明書やタイプスタンプなどを使い、本人性と非改ざん性を証明しなければいけません。
書面と電子データ以外にも、書面契約と電子契約には以下のような違いがあります。
書面契約 |
電子契約 |
|
---|---|---|
形式 |
物理的な書面 |
電子データ |
署名・押印 |
・手書きのサイン ・印鑑 |
・電子サイン |
本人性の担保 |
印鑑証明書 |
電子証明書 |
非改ざん性の担保 |
契約・割印 |
タイムスタンプ |
送付方法 |
・郵送 |
インターネット通信 |
保管方法 |
・倉庫 |
・サーバー |
収入印紙 |
必要 |
不要 |
>>電子契約書のすべて!書面契約との違いから対応可能な書類まで網羅
電子サインに法的効力を持たせる条件
端末に手書きしただけの電子サインに法的効力はありません。しかし、以下の条件を満たすことで法的効力を持たせることが可能です。
ここでは、電子サインに法的効力を持たせる2つの条件を解説します。
①本人性が確認できること
電子サインに法的効力を持たせるためには、確実に本人によりサインが施されたものであると証明しなければいけません。
本人性の確認は電子署名法第三条で、『本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等は、真正に成立したものと推定される』と定めています。
本人性を担保する方法としては、電子証明書を利用した電子署名が一般的です。
電子証明書は、電子認証局によって発行され、書面契約における印鑑証明書の代わりとなります。電子証明書により、本人が署名していることを証明できます。
本人性を証明できなければ、万が一のトラブルや裁判の際に有効性を担保できません。電子サインに法的効力が必要な場合は、電子署名の利用をおすすめします。
>>電子署名と電子サインの違いを知ろう!4つの項目で事業への適正を判断
②内容の非改ざんが確認できること
電子サインに法的効力を持たせるためには、第三者により記載内容が改変されていないと証明しなければいけません。
内容の改変については、電子証明法第二条で以下のように定義されています。
- 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものと示すためのものであること
- 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認できるものであること
非改ざん性を証明する方法としては、電子証明書やタイムスタンプの付与が挙げられます。
電子証明書に用いられている公開鍵暗号方式は、「公開鍵」「秘密鍵」の2種類の鍵を組み合わせて使います。片方の鍵で暗号化されたものは対の鍵でなければ復号できないため、本人であることを証明できるという仕組みです。
また、その時刻に確かに電子文書が存在していたことを証明するタイムスタンプは、付与することで以降に文書が改ざんされていないことを証明できます。
電子サインで内容が改変されていないことを証明するためには、公開鍵暗号方式やタイムスタンプの付与が有効です。
>>【初心者必見】電子署名とタイムスタンプの特徴や役割を徹底比較!
電子サインを導入するメリット
特に近年ではリモートワークの普及により、電子サインを導入する企業が増えています。ここでは、電子サインを導入するメリットを詳しく解説します。
①コスト削減
電子サインの導入で契約業務を電子化できるため、書面契約で使用していた紙やインク、印紙代や郵送代などのコストを削減できます。
1回の契約締結にかかる費用が少額だとしても、年間を通じて契約数が多い企業では大きなコスト削減につながります。
②保管スペースの削減
書類を電子化して電子サインに対応できるようにすれば、物理的な書類を保管する必要がありません。
従来までは、自社に十分なスペースがなければ保管場所を確保するための別途費用が必要でした。ファイルやキャビネット、倉庫などが挙げられます。
しかし、電子サインを導入して契約書類を電子化すれば、サーバーやクラウド上にデータとして保管できるため、物理的な保管スペースを削減できます。
③リモートワークへの対応
電子サインを導入すれば、リモートワーク中の従業員も書類に署名できます。
これにより、従業員は書類に署名・押印するためだけに出社する必要がなくなり、幅広い働き方に対応しながらコア業務を遂行しやすくなります。
④契約業務の効率化
電子サインの導入で、契約業務の効率化が期待できます。
従来までの書面契約では、原本の印刷や押印、取引先への郵送や原本の返送など、手間と時間がかかる多くの業務がありました。
しかし、電子サインを用いた契約であれば、印刷や押印、郵送や返送などの対応がすべて不要であるため、よりスピーディーに契約を締結できます。
また、例え修正事項があってもデータ上で即座に対応できるため、電子サインを導入すれば契約業務の効率化を迅速に進めることが可能です。
⑤コンプライアンス強化
セキュリティ対策が講じられている電子サインは、コンプライアンス強化にも有用です。
従来までの書面契約では、紛失や改ざんのリスクが常に付き纏います。しかし、電子サインは電子証明書やタイムスタンプにより、本人性と非改ざん性を担保できます。
また、電子サインが施された文書にアクセス権を付与しておけば、情報漏洩のリスクも最小限に抑えることが可能です。
電子サインの活用シーン
電子サインは、さまざまな場面で活用できます。ここでは、電子サインが活用できる主なシーンを詳しく解説します。
①社内承認
社内稟議や請求書、見積書などの承認が必要な場面で電子サインが利用できます。
従来までの紙の文書では、手書きのサインや押印が必要になる場面ですが、電子サインが導入されていればそれらの処理は不要です。紙の文書を社内で物理的にやり取りする必要がなくなるため、手間と時間の削減が期待できます。
②契約業務
電子サインは契約業務の締結に利用できます。
例えば、ローンやクレジットカードの申し込みには審査があり、その承認を得るためには押印が必要です。こういった意思疎通を紙の契約書で行う場合は、手間と時間がかかります。
しかし、電子サインは対面でのやり取りが不要になるため、業務効率化につながります。
③業務委託
法的には、業務委託契約書の作成・交付は義務ではありません。しかし、トラブルを回避するために作成する企業も多いでしょう。
多くの企業では業務委託契約書を紙で作成し、契約者に押印してもらい保管します。この場合、押印してもらう手間や保管スペースを確保しなければいけませんが、電子サインならその手間や保管スペースを削減できます。
また、契約書は電子データで作成するため、人材採用の面でも有効的な活用が可能です。
④不動産契約
2022年5月の法改正により、紙での交付が前提だった『重要事項説明書』と『賃貸契約時に交付する書面』の電子化が可能になっています。
法改正により電子化が可能になった重要書類は以下の通りです。
- 重要事項説明書
- 賃貸契約書
- 定期建物賃貸借契約書
- 定期建物賃貸借契約の事前説明書
以前までは実印が必要だった書類の電子サインによる締結が認められ、オンラインで不動産契約が交わせるようになりました。
これにより、利用者は新型コロナ感染症を契機に流行したオンライン内見で物件を探し、そのままオンラインで不動産契約を締結できます。
⑤人事・法務
電子サインは雇用契約の締結でも利用できます。
現在の労働基準法では、雇用契約の作成・交付は義務ではありません。しかし、業務委託契約と同様にトラブルを避けるため、交付するケースが多くあります。
昨今ではオンラインで面接をして採用することも多いため、そういった場面では電子サインが有効な手段になります。
また、外部企業とNDA(秘密保持契約)を結ぶ場面でも、電子サインが導入されていれば安全かつスピーディーに契約を締結できます。
まとめ
この記事では、電子サインについて以下の内容で解説しました。
- 電子サインとは
- 書面契約と電子契約の違い
- 電子サインに法的効力を持たせるための条件
- 電子サインを導入するメリット
- 電子サインの活用シーン
手書きに代わり電子的に施される電子署名は、本人性と非改ざん性を証明することで、紙文書と同様の法的効力を持たせることができます。
電子サインの導入で文書を電子化できるため、コストや保管スペースの削減、リモートワークの対応や契約業務の効率化など、さまざまなメリットがあります。
活用シーンも多く、社内稟議や契約業務、業務委託契約をはじめ、近年では法改正により不動産契約にも利用できるようになりました。
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