電子契約に押印は不要?電子印鑑や署名の種類・電子印影を使うリスク

【この記事でわかること】

  • 電子契約では、原則として押印は不要(民法上、原則として当事者の合意によって契約が成立するため)
  • 画像化した電子印影だけでは、作成者や改ざんの有無を確認しにくい
  • メール認証と電子証明書では、本人確認の方法や仕組みが異なる
  • 契約の重要性に応じて、電子署名やタイムスタンプなどを使い分けることが大切

(公開日:2020年5月1日)

目次[非表示]

  1. 1.電子契約に押印は必要?
  2. 2.電子印鑑とは?
  3. 3.電子印鑑の種類
    1. 3.1.電子印影(画像化した印影)
    2. 3.2.メール認証(電子サイン)による電子印鑑
    3. 3.3.電子証明書(電子署名)による電子印鑑
  4. 4.電子署名は押印の代わりになる?
  5. 5.電子印影を契約書に使うリスク
    1. 5.1.誰が押印したのか確認しにくい
    2. 5.2.改ざんの有無を確認できない
    3. 5.3.印影を複製・悪用されるおそれがある
  6. 6.電子契約で電子印鑑を利用するメリット
    1. 6.1.印刷や郵送などの作業を減らせる
    2. 6.2.場所を選ばず契約手続きを進められる
  7. 7.電子契約と印鑑に関するよくある質問
    1. 7.1.電子印鑑と電子契約、電子署名、電子サインの違いは?
    2. 7.2.電子契約と書面契約が混在する場合はどうすればよい?
    3. 7.3.電子印鑑には法的効力がある?
    4. 7.4.電子印鑑の作成方法は?
  8. 8.まとめ

電子契約に印鑑は不要?電子印鑑の種類と電子印影を用いるリスク

働き方の多様化や契約業務のデジタル化に伴い、紙の契約書から電子契約へ移行する企業が多く見られます。電子契約を利用すれば、印刷や押印、郵送などの作業を減らし、オンラインで効率的に契約手続きを進められます。

ただし、印影を画像化しただけの電子印鑑では、誰が押印したのか、押印後に文書が変更されていないかなどを確認できません。

そのため、契約書に電子印影を使用する場合は、電子署名との違いや押印のリスクを理解しておく必要があります。

この記事では、電子契約に実物の印鑑が不要とされる理由や、電子契約で使われる印鑑・署名の種類、電子印影を利用する際のリスクを解説します。


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電子契約に押印は必要?

電子契約に実物の印鑑の押印は不要とされています。そもそも電子契約であっても、従来の書面による契約であっても、あるいは口約束であっても、特段の定めがある場合を除き、当事者双方が合意をすれば契約は成立します。

民法では、次のように規定されています。

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

【出典】e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」

したがって、法令などに特別の定めがある場合を除き、押印がなくても法的には問題なく契約が成立します。

また、電子契約の場合は、電子署名法第3条で以下のように定められています。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

【出典】e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)」

よって、一定の要件を満たす本人による電子署名が行われた電磁的記録は、電子署名法第3条により真正に成立したものと推定されます。これは「契約そのものが成立したと推定される」という意味ではなく、その電子文書が本人の意思に基づいて作成されたことを証拠上推定する規定です。契約は、法令に特別な定めがある場合を除き、原則として当事者の申し込みと承諾によって成立します。

電子印鑑とは?

電子印鑑とは、電子ファイルに表示する印影画像や、押印に代わる電子的な意思表示を指す一般的な呼称です。

書類を郵送する場合と比較してタイムラグが少ないこともあり、最近は見積書や請求書などの書類をメールやWeb上で相手先に提出するケースが多く見受けられます。

電子印鑑はこのようなインターネットを介した取引で活躍します。電子印鑑を使用すれば、ExcelやWordなどで作成した見積書や請求書に直接、電子印鑑のデータを貼り付けて、そのまま取引先に送付することができるのです。

そのため、印刷を行って押印し、スキャンして、そのデータを添付するといった従来の工程を省けるので業務効率が高まるでしょう。

関連記事:電子契約とは?メリット、書面契約との比較とともに解説

電子印鑑の種類

電子印鑑には、主に「画像化して貼り付ける電子印影」「メール認証付きの電子印鑑」「電子証明書付きの電子印鑑」の3つがあります。仕組みや信頼性・証拠力などの違いは以下のとおりです。

【3つの電子印鑑の特徴】

種類

仕組み

信頼性・証拠力

電子印影(画像化した印影)

印影を画像データ化(.jpgなど)したもの

低(改ざん・偽造リスクが高い)

メール認証(電子サイン)による電子印鑑

メールアドレス宛に届く専用URLで承認したもの

中~高(一定の本人確認・アクセス制限が可能)

電子証明書(電子署名)による電子印鑑

認証局が身元情報を担保して発行したもの

高(本人性・原本性を検証・確認しやすく、重要な契約に利用しやすい)

この3つの電子印鑑の種類を、従来の紙への押印と比較した表は以下のとおりです。

本人確認の信頼性

契約改ざんの検知

主な用途

紙への押印

中程度(実印と印鑑証明書と組み合わせることで本人性を高められる)

極めて難しい(専門的な調査が必要になる)

書面契約

電子印影

弱い

単独ではできない

社内書類など

メール認証(電子サイン)による電子印鑑

中程度

サービスによる

一般的な電子契約

電子証明書(電子署名)による電子印鑑

高い

可能

重要度の高い電子契約

電子印影(画像化した印影)

画像データ化された印影(.jpgなど)を電子印鑑といい、無料作成できるサイトも多くあります。

しかし画像データ化した印影を電子データに貼り付けるだけでは、それが原本かどうかや、改ざんの有無を確認できないなど従来の紙の押印が持つ役割を果たすことができません。

従来の紙に使用する印鑑の印影と区別するために、画像化した印影のことを「電子印影」と呼びます。

メール認証(電子サイン)による電子印鑑

メール認証は、契約相手のメールアドレスへ専用URLを送り、URLから契約内容の確認や同意の操作を行う方法です。

電子契約サービスでは、操作日時やアクセス履歴などが記録される場合があります。

一般的な流れは、次のとおりです。

  1. 契約書の電子データを電子契約サービスへ登録する
  2. 契約相手のメールアドレスを指定して、専用URLを送信する
  3. 契約相手がURLへアクセスし、契約内容を確認する
  4. 同意の操作を行い、契約相手が押印を行い締結となる

メール認証では、指定したメールアドレスに送信された専用URLへのアクセスを通じて、契約者の意思確認を行います。本人性の確認や証拠力は、本人確認の方法、アクセス制限、認証方式、操作ログなど、サービスの仕組みによって異なります。

電子証明書(電子署名)による電子印鑑

メール認証より本人性を担保しやすいのが「電子証明書」による電子印鑑です。電子証明書とは、Web上での持ち主の情報を証明してくれる、書面でいうところの印鑑証明書のようなものです。

印鑑証明書と同じように、認証局と呼ばれる組織が持ち主の身元情報を認証し発行します。書面における実印に近い仕組みのため、今まで実印で行っていた厳格な契約には「電子証明書」による電子印鑑の利用がおすすめです。

なお、電子署名と電子サインの使い分けについては、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会のガイドラインが参考になります。

【参考】公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)「電子契約活用ガイドラインVer1.0(取引書類の性質と締結方法)」

関連記事:電子契約を印刷した場合はどうなる?印紙税の有無や適切な保存方法を紹介

電子署名は押印の代わりになる?

電子署名は、多くの契約で紙への押印に代わる手段として利用できます。そもそも契約は、法令に特別な定めがある場合を除き、押印がなくても当事者の合意によって成立します。また、本人による一定の要件を満たす電子署名が付された電子文書は、電子署名法により真正に成立したものと推定されます。ただし、法令などで書面や押印等が求められる手続もあるため、個別に確認が必要です。

電子印影を契約書に使うリスク

電子印影を契約書に使用する際の主なリスクは、「押印者の確認がしにくい」「改ざんの有無が確認できない」「複製・悪用のおそれがある」の3つです。

手軽に作成・利用できる反面、画像を貼り付けただけではこれらのリスクが伴います。

電子印影しかないことを理由に契約が直ちに無効になるわけではありませんが、万が一トラブルが起きた場合、電子印影だけでは十分な証拠を示しにくい可能性があります。

誰が押印したのか確認しにくい

電子印影は電子データに画像データを貼り付けるだけなので、その画像を持っている人や、画像を作成できる人であれば、誰でも押印できます。例えば何か電子データに記載されていた印影をトレース(切り抜く)ことで、簡単に画像データは作成できてしまいます。

紙での押印の場合、種類によってはその本人しか保有していない印鑑であるために、本人が押印したものだという証明ができましたが、電子データ上では電子印影は誰でも作成が可能なため、どんなに複雑な印影であっても本人が押印したということを証明しにくい場合があります。

関連記事:電子契約における電子署名の基礎知識|実行の方法とよくある質問

改ざんの有無を確認できない

電子印影が貼られていても、押印後に契約内容が書き換えられていないかを画像だけで確認することはできません。PDFの文章を書き換えることは誰でも容易に行えます。

一方で、電子署名を利用すると、署名後に文書が変更された場合、その変更を検知できます。

タイムスタンプを併用すれば、データが特定の時刻に存在し、その後変更されていないことも確認できます。

印影を複製・悪用されるおそれがある

電子印影は画像データであるため、社外へ流出すると、複製や不正利用につながるおそれがあります。

スキャン技術の向上により、3Dプリンタを使用すれば、印影データを読み取るだけで不正に印鑑を作れてしまいます。そのため、印影が外部に出回れば悪用される可能性があるということです。

コンプライアンス上、印影が同じ印鑑の作成をお断りしている業者も見受けられますが、電子印鑑は偽造や悪用されるリスクがあるため、暗号化されている電子署名を利用するのがよいでしょう。

電子契約で電子印鑑を利用するメリット

電子契約で電子印鑑や電子署名を利用すると、紙の契約書で必要だった作業を減らせます。主なメリットは、次のとおりです。

印刷や郵送などの作業を減らせる

電子契約では、契約書の印刷、製本、押印、スキャン、郵送などの工程を省けます。

契約相手とのやり取りがすべてオンラインで完結するため、作業の手間や時間を減らせるだけでなく、用紙代や郵送料といった各種コストを削減できる点もメリットといえます。

関連記事:電子契約での電子署名とタイムスタンプの違い、役割、よくある質問

場所を選ばず契約手続きを進められる

電子契約サービスを利用すれば、インターネットへ接続できる環境から契約内容の確認や承認を行えます。

印鑑を保管している場所へ出向く必要がないため、リモートワークにも対応しやすくなります。

電子契約と印鑑に関するよくある質問

電子印鑑と電子契約、電子署名、電子サインの違いは?

電子印鑑・電子契約・電子署名・電子サインは、それぞれ指すものや役割が異なります。

  • 電子契約:紙ではなく、電子データを使って契約を締結する方法です。
  • 電子印鑑:紙の書類に押す印鑑を、電子上で表現した画像データ(印影)のことです。
  • 電子署名:電子文書の「作成者」と「改ざんの有無」を証明する、法的に定義された仕組みです。
  • 電子サイン:メール認証やタブレットへの手書きなど、電子上で本人の意思や同意を確認する幅広い手段を指します。メール認証やID・パスワードによる認証、タブレットへの手書きサインなどが含まれます。

つまり、電子契約は「契約の方法」、電子印鑑は「電子上の印影」、電子署名や電子サインは「本人確認や意思表示に用いる仕組み・手段」という違いがあります。

電子契約と書面契約が混在する場合はどうすればよい?

電子データと書面が混在する場合は、どの文書を原本として扱うのかを明確にし、それぞれに適した方法で保存・管理します。また、法律で書面の交付や保存が求められていないかも確認が必要です。

取引先が電子契約に対応していない場合は、書面契約を併用する方法があります。まず、契約を電子データと書面のどちらで締結するか、取引先と事前に確認しましょう。

電子契約サービスを選ぶ際は、電子契約だけでなく、書面の契約書も一元管理できるかを確認するとよいでしょう。

電子印鑑には法的効力がある?

2001年に施行された電子署名法の第3条に、従来の印鑑と同等であることが記載されており、これによって電子署名にも印鑑と同じく法的効力があると考えることができます。

本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
(電子署名及び認証業務に関する法律 第二章 電磁的記録の真正な成立の推定 第三条)

【出典】e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)」

電子署名法では、電子印鑑の画像ではなく、一定の要件を満たす本人による電子署名が付された電磁的記録について、真正に成立したものと推定しています。なお、電子署名法上の「電子署名」は、国の認定を受けた認証事業者の電子証明書を利用するものだけに限られません。電子署名法では、作成者を示すことができ、電子文書の改変の有無を確認できる措置を電子署名と定義しています。また、一定の基準を満たす認証業務については、主務大臣による認定制度が設けられています。

関連記事:PDFの電子契約は有効?契約締結の流れとメリット・デメリット

電子印鑑の作成方法は?

画像型の電子印鑑は、Excelなどの文書作成ソフト、PDF閲覧・編集ソフト、電子印鑑作成ツールなどを使って無料で作成する方法もあります。

ただし、無料で作成した電子印鑑をビジネスに用いることはリスクも伴います。悪用が容易であることや証拠能力が低いので、場合によっては大きな損害を被る可能性や訴訟リスクがあるでしょう。

そのため、電子印鑑を使用・作成する際は、リスクについてよく理解しておくことが重要といえます。

まとめ

今回は電子契約の印鑑について、電子署名・電子サインとの違いなどについて解説しました。

画像型の電子印影は複製しやすく、単独では本人性や改変の有無を確認しにくい点に注意が必要です。信頼性の高い契約締結を求める場合は、電子証明書による電子印鑑を導入しましょう。

また、電子署名は法的効力のある契約方法です。書面での契約に課題を感じている企業様は、電子契約システムを導入することがおすすめです。

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