電子契約はクーリング・オフできる?手順の流れとよくある疑問


目次[非表示]

  1. 1.電子契約でもクーリング・オフは可能?
    1. 1.1.クーリング・オフの基礎知識
    2. 1.2.特定商取引法の改正ポイント
  2. 2.電子契約をクーリング・オフする場合の手順と注意点
    1. 2.1.電子契約をクーリング・オフする手順の流れ
    2. 2.2.電子契約のクーリング・オフに関する注意点
  3. 3.電子契約のクーリング・オフに関するよくある疑問
  4. 4.まとめ


電子契約はクーリング・オフできる?手順の流れとよくある疑問


多くの方は、一度締結した契約でも一定の期間内であれば無条件に契約を無効にしたり、申込をキャンセルできたりするクーリング・オフ制度についてお聞きになったことがあると思います。従来は書面でのやりとりが必要でしたが、2021年からは電子交付でも可能になりました。
以下では、クーリング・オフとはそもそも何か、2021年の改正特定商取引法のポイント、電子契約をクーリング・オフする際の注意点などについて解説します。


電子契約でもクーリング・オフは可能?

ここでは、そもそもクーリング・オフ制度の対象となる取引、2021年の特定商取引法の改正ポイントについて説明します。


クーリング・オフの基礎知識

そもそもクーリング・オフ制度とは?

クーリング・オフ制度とは、契約を締結しても、一定の期間内であれば無条件に契約を無効にしたり、申込をキャンセルしたりできる制度のことです。クーリング・オフ制度が始まった1972年当時、強引な訪問販売が横行しており、消費者を救済する制度が求められていました。

消費者保護のために設けられた制度であるため、事業者同士の契約には適用されません。また、クーリング・オフ制度を当事者間で無効にすることはできません。つまり、売り手が契約の中に「本契約ではクーリング・オフはできない」と定めたり、クーリング・オフが可能な期間を法律で設定されている期間よりも短くしたりすることは許されません。


クーリング・オフの対象となる取引

クーリング・オフが制定された当初、対象となる取引は訪問販売のみで、クーリング・オフが可能な期間は4日間に限定されていました。しかし、今では対象となる契約は広がり、各契約でクーリング・オフが可能な期間に違いがあるため、以下の点をおさえておきましょう。

注意点としては、ネットショッピングは原則としてクーリング・オフの対象外ということです。ただし、未成年や高齢者が契約した場合は取り消しができる可能性もあります。


クーリング・オフが

可能な期間

契約

8日間

  • 訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールスを含む)
  • 電話勧誘販売
  • 特定継続的役務提供(エステティック、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービス)
  • 訪問購入(出張買取)

20日間

  • 連鎖販売取引(マルチ商法など)
  • 業務提供誘因販売取引(内職商法、モニター商法など)


特定商取引法の改正ポイント

特定商取引法は当初は訪問販売法と呼ばれていましたが、度々改正が実施され、コロナ禍の2021年にも改正されました。以下でポイントを紹介します。


電磁的記録でもクーリング・オフが可能になった

従来の特定商取引法でクーリング・オフを利用する際は書面を交付し、そのことを証明するために特定記録郵便や簡易書留で郵便局から手続きをする必要がありました。

しかし、コロナ禍に入り、消費者が業者に対して対面で書面交付をすることが難しくなりました。さらにクーリング・オフ制度によって保護されるべき消費者の中には高齢者も含まれていますが、実際に郵便局などに足を運んで手続きを行うということが困難なケースも増えています。

そのため、特定商取引法では、電磁的記録でもクーリング・オフが可能になりました。


書面の電子化に際して、消費者の事前承諾が必要になった

また、2023年6月1日から事業者が消費者に対して交付すべき契約書面等について電磁的方法による交付が可能となったため、契約書を印刷したり、送付したりするコストを大幅に削減し、業務効率化が可能になりました。ただし、消費者の事前承諾が必要です。

事前承諾にあたっては、まず事業者から消費者に対し、あらかじめ電子交付を行う場合の提供の種類および内容の提示が必要です。それに合わせて、重要事項について説明し、電磁的方法による提供を受ける者として適切かを確認します。その上で消費者からの承諾を得ることになりますが、口頭での承諾では足りず、書面等(メールやSMS等を送信する方法を含む)で行われなければなりません。その後、事業者は承諾を得たことを控え書面等を交付することで知らせます。

なお、この承諾を得たことの控えについては原則紙媒体での交付であることが必須です。ただし、連鎖販売取引や特定継続的役務提供および業務提供誘引販売取引の概要書面、特定継続的役務提供などの契約書面(取引全体をオンラインで完結できるものに限る)については電子交付も可能となります。


事業者側に電子化の対応が必要になった

以上のように特定商取引法が改正されたため、事業者側に各種書類の電子化のルールや手順を理解し、正しく運用することが求められるようになりました。


「電話勧誘販売」に関する規定が変更になった

特定商取引法の改正により「電話勧誘販売」の範囲がさらに拡大されました。Webやテレビ、新聞広告などを見て電話をかけてきた消費者に対し、アップセルやクロスセルを行う行為も「電話勧誘販売」にあたるようになりました。



電子契約をクーリング・オフする場合の手順と注意点

電子契約とは、電磁的記録で作成・締結する契約のことです。ここでは、電子契約をクーリング・オフする場合の手順と注意点について解説します。


電子契約をクーリング・オフする手順の流れ

書面による場合

クーリング・オフの書面には、事業者が対象となる契約を特定するために必要な情報(契約年月日、契約者名、購入商品など)に加え、クーリング・オフの通知を発送した日を記載します。その上で、契約の類型ごとに定められている期間内に送ります。


電磁的記録による場合

契約書面に電磁的記録によるクーリング・オフの通知方法が記載されており、それに従って手続きを進めます。

例えば、販売事業者へメールで通知する時は以下のように記載します。


〇〇株式会社
代表取締役 〇〇様


下記の契約を解除します。


契約年月日:

商品名:

契約金額:

販売会社:

担当者:


支払った代金〇〇円を返金し、商品の引き取りをお願いいたします。


通知後は、送信メールや送信フォームの画面のスクリーンショットを保存しておきます。


電子契約のクーリング・オフに関する注意点

事業者側の主な注意点

事業者の事業環境にもよりますが、合理的に可能な範囲で電磁的記録による通知方法に対応する必要があります。一方的にクーリング・オフは書面のみに限定し、電子メールでは受け付けない等とする特約は無効になる可能性が高いでしょう。


消費者側の主な注意点

クーリング・オフの期間は契約書面を受け取った日から起算します。電子契約の場合、電子契約をすることを承諾し、メールなどを送った日付が起算日になります。



電子契約のクーリング・オフに関するよくある疑問

ここでは、電子契約のクーリング・オフに関するよくある質問のうち、6つを取り上げます。事業者も消費者も理解を明確にしておきましょう。


ネット通販にクーリング・オフは適用されない?

その通りです。ただし、返品の可否や条件について契約書に特約があればそれに従います。


クーリング・オフできない場合の条件は?

ネット通販で購入した場合以外にも以下のような場合はクーリング・オフができません。

  • クーリング・オフの期間が経過した
  • 事業用に購入した
  • 自分の意思で店舗に足を運んで購入した
  • 商品やサービスが3,000円未満の場合


クーリング・オフの期間が過ぎた場合はどうなる?

以下のような場合には、クーリング・オフの期間が過ぎていても契約の解除・取り消しが可能です。​​​​​​​

  • 必要以上に大量の商品を購入した場合
  • 連鎖販売取引(マルチ商法)および特定継続的役務提供の場合
  • 消費者契約法に基づく取り消しが認められる場合
  • 民法に基づき錯誤・詐欺による取り消しが認められる場合


事業者が違反した場合の罰則は?

特定商取引法により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれら併科の対象となります。刑罰の対象が法人の場合は、最大で3億円の罰金が課される可能性もあります。


クーリング・オフに費用はかかる?

損害賠償や違約金を支払う必要はありません。商品の引き取りにかかる費用は事業者負担です。


電子取引におけるクーリング・オフ期間の起算日は?

電子取引の場合、電子契約をすることを承諾し、メールなどを送った日付が起算日です。



まとめ

オンラインでのやり取りが普及するにつれ、消費者を守るクーリング・オフ制度の範囲も拡大しています。消費者のニーズや法的要請に応えるためには、事業者も電子契約や電磁的な方法によるクーリング・オフに対応することが求められています。

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