特定商取引法とは?7つの類型や改正後の電子化に適切に対応する方法


目次[非表示]

  1. 1.特定商取引法とは
  2. 2.特定商取引法に該当する7つの類型
    1. 2.1.①訪問販売
    2. 2.2.②通信販売
    3. 2.3.③電話勧誘販売
    4. 2.4.④連鎖販売取引
    5. 2.5.⑤特定継続的役務提供
    6. 2.6.⑥業務提供誘引販売割引
    7. 2.7.⑦訪問購入
  3. 3.【2023年6月1日施行】特定商取引法改正に伴う契約書面等の電子化とは
    1. 3.1.改正前の契約書面等の電子化
    2. 3.2.改正後の契約書面等の電子化
  4. 4.特定商取引法改正に準拠した電子交付の重要ポイント
    1. 4.1.電子交付の種類を把握する
    2. 4.2.電子交付が認められる書面を確認する
    3. 4.3.電子データを明瞭的に表示できるようにする
    4. 4.4.消費者から事前に承諾を得る
    5. 4.5.承諾後の控え書類を交付する
    6. 4.6.特商規18条9号に基づく注意事項を確認する
    7. 4.7.電子契約サービスで電子契約書を適切に管理する
  5. 5.まとめ


特定商取引法とは?7つの類型や改正後の電子化に適切に対応する方法


商品やサービスを提供する事業者は、特定商取引法で定められたルールを遵守し、消費者とのトラブル防止に努める必要があります。

2023年6月1日、特定商取引法改正によって、従来は書面で対応していた申込書や契約書の交付が一部電子交付でも認められるようになりました。

この記事では、特定商取引法の7つの類型や改正後の電子化に適切に対応する方法を紹介します。


特定商取引法とは

特定商取引法(特商法)とは、『特定商取引に関する法律』のことで、事業者が行う違法・悪質な勧誘行為などを未然に防ぎ、消費者等の取引の相手方の利益を守るために策定したものです。

特に事業者と消費者との間でトラブルが生じやすい訪問販売や通信販売、電話勧誘販売などにおいて、事業者が遵守すべきルールやクーリングオフ制度などを明確に定めています。

2023年6月1日から、事業者が交付した契約書面に関して、電子化を認める法改正がありました。これに伴い、事業者は各種書類の電子化のルールや手順を理解し、正しく運用することが求められます。



特定商取引法に該当する7つの類型

ここでは、特定商取引法の規制対象となる7種類の取引類型について、分かりやすく解説します。


①訪問販売

訪問販売とは、販売業者やサービス提供事業者が営業所以外の場所を訪問し、商品や特定権利の販売、サービスの提供を行う取引のことです。

最も一般的な例が、セールスマンが消費者の自宅に出向いて行う訪問販売です。喫茶店などで待ち合わせをして行うアポイントメントセールスや、路上でのキャッチセールスなども訪問販売に該当する場合があります。

また、公民館やホテルなどで行う展示販売でも、期間や施設が店舗と類似するものに認められない場合、訪問販売に該当します。

出典:特定商取引法ガイド『訪問販売


②通信販売

通信販売は、販売業者やサービス提供事業者が郵便・電話・ファクシミリ・インターネットなどの手段を用いて、消費者から売買契約またはサービス提供契約の申込を受け取る取引のことです。

例えば、事業者が新聞・雑誌・テレビ・Webサイト・ダイレクトメールなどで商品を宣伝し、それを見た消費者がハガキの郵送や電話で申し込み、Webサイトにある申込フォームからの注文などを行う取引の場合、通信販売に該当します。

出典:特定商取引法ガイド『通信販売



③電話勧誘販売

電話勧誘販売は、販売業者やサービス提供事業者が消費者に電話をかけるか、欺瞞的な方法で消費者に電話をかけさせ、その通話で商品やサービスの勧誘を行う取引のことです。

消費者からの購入意思の表示は、勧誘の通話のなかで行うものに限られません。例えば、事業者が電話で商品の勧誘を行い、消費者がその通話を一度切ったとします。後日、その勧誘によって消費者が購入意思を決定した場合、電話勧誘販売に該当します。

電話勧誘販売に該当するアプローチについては、さらに細かい条件があるため、十分な理解が必要です。

事業者が電話・郵便・電報・チラシなどの手段で商品を認知させたあと、その商品の契約締結を勧誘するための電話であることを隠し、消費者に電話をかけることを要請した場合でも電話勧誘販売になります。

欺瞞的な方法での電話勧誘販売については、他の商品と比べて著しく有利な条件で契約できると虚偽の情報を伝え、電話をかけることを要請した場合などが該当します。

出典:特定商取引法ガイド『通信販売


④連鎖販売取引

連鎖販売取引とは、日本でマルチ商法として規制されている販売形態です。

販売員として個人を勧誘し、勧誘したその本人に次の販売員の勧誘をさせるという流れを連鎖的に行うのが連鎖販売取引です。

特定商取引法では、以下の4つの条件を定めて連鎖販売取引を規定しています。


  1. 物品(施設を利用し又はサービスの提供を受ける権利を含む。)の販売(又はサービスの提供など)の事業又はそのあっせんの事業であって
  2. 再販売、受託販売若しくは販売のあっせん(又は同種サービスの提供若しくはサービス提供のあっせん)をする者を
  3. 特定利益(勧誘による入会の紹介料や、勧誘により入会した者の販売等によって得られる利益)が得られると誘引し
  4. 特定負担(取引を行うために必要となる費用等)を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

出典:特定商取引法ガイド『連鎖販売取引


⑤特定継続的役務提供

特定継続的役務提供とは、長期的または継続的に役務(=サービス)を提供し、高額の対価を受け取るための取引のことです。2023年10月1日においては、以下のサービスが特定継続的役務提供に該当します。


  • 美容医療
  • エステティック
  • 語学教室
  • 家庭教師
  • 学習塾
  • パソコン教室

  • 結婚相手紹介サービス


上記のサービスを提供(又は提供を受ける権利を販売)するものであって、なおかつ一定期間・一定金額を超えた契約に対して、特定商取引法が適用されます。

出典:特定取引商法ガイド『特定継続的役務提供


⑥業務提供誘引販売割引

業務提供誘引販売割引とは、事業者が相手方に対して「物品の販売やサービスの提供をする仕事で利益が得られる」という口実で誘引し、その仕事に必要な物品を販売する取引のことです。

例えば、チラシを配布する仕事のために事前にチラシを購入させるものや、健康寝具を購入させてその使用した感想を提供するモニター業務などが、業務提供誘引販売割引の代表的な事例です。

出典:特定取引商法ガイド『業務提供誘引販売割引


⑦訪問購入

訪問購入とは、事業者が営業所以外の場所にいる消費者を訪問し、物品の買い取りを行う取引のことです。

営業所以外の場所であれば、消費者の自宅や喫茶店、一時的に設けられた買取会場、路上などでの取引も訪問購入に該当します。

逆に訪問購入に該当しない場所は、リサイクルショップや古本屋、ブランド品買取店などが挙げられます。

出典:特定取引商法ガイド『訪問購入



【2023年6月1日施行】特定商取引法改正に伴う契約書面等の電子化とは

2023年6月1日をもって、特定商取引法における施行規則や施行令などが一部改正されました。
ここでは、本改正の重要な変更点とされる、特定商取引法の契約にかかる各種書類の電子化について詳しく解説します。


改正前の契約書面等の電子化

2023年6月1日以前の特定商取引法では、訪問販売などで消費者から契約の申込を受けた場合、詳細な内容を記載した書面を消費者に交付する義務がありました。

交付する契約書や紙ベースの書面のみ許可されていたため、メールやPDFファイルなどの電子交付は認められていませんでした。

ただし、通信販売における前払いに関しては、法改正前でも承諾などの通知を電子的に行うことが許容されていました。


改正後の契約書面等の電子化

2023年6月1日からの特定商取引法では、契約書類の交付についてメールでのデータ送信や、Webサイト上でのデータ閲覧またはダウンロードでも許容されることになりました。

また、特定商取引法におけるすべての書類を電子化できるわけではないため、適用範囲を把握しておくことが大事です。


>> 【初心者向け】電子契約の導入方法とは?すぐに分かる7つのステップ


特定商取引法改正に準拠した電子交付の重要ポイント

2023年6月1日の特定商取引法改正後、契約書などの電子化にどのように対応すれば良いか、消費者庁が公開した『契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン』に沿って分かりやすく解説します。


電子交付の種類を把握する

事業者が消費者から電子交付の承諾を得るためには、電子交付の種類と内容を明示する必要があります。

まず、どのような電磁的方法で書面の電子化を行うのかを決めます。電磁的方法とは、メールでの送信、Webサイト上でのデータ閲覧またはダウンロードなどです。

提供するファイルの形式も明示する必要があります。

例えば、WordファイルやPDFファイルなどのデータ形式、データの閲覧に対応したソフトウェアの種類やバージョンなどを具体的に消費者に伝えます。

電子交付を行う場合でも、データから書面に印刷できる形式であり、データの改ざんの有無を確認するための電子署名や電子サインなどの措置がとられていることが望まれます。


>> 契約書に電子署名を付与する3つの方法!自社に最適な手段を見つけよう


電子交付が認められる書面を確認する

電子交付に対応している書類は、取引類型によって異なります。以下の取引類型と書面に関しては、おおむね共通した規定が定められています。


特定商取引法の取引類型

電子交付に対応可能な書類

①訪問販売
②電話勧誘取引
③訪問購入

申込書面

①通信販売以外の取引類型

契約書面

①連鎖販売取引
②特定継続的役務提供
③業務提供誘因販売取引

概要書面

①電話勧誘販売

承諾通知


電子データを明瞭的に表示できるようにする

各種書類の内容を電子データとして記載する際は、視覚的に分かりやすく明示する必要があります。

赤背景に赤地の文字や極端に小さな文字、極端に大きな文字などで記載することは避けましょう。

契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン』では、フォントサイズ8pt以上が望ましいとされており、消費者の使用デバイスに配慮した表示を想定することが大事です。


消費者から事前に承諾を得る

実際に電子交付を行う際は、消費者から事前に承諾を得る必要があります。その際、電子化する書類の種類や提供するファイル形式などの詳細も伝えます。

電磁的記録で契約書などの内容を提供する際、特定商取引に関する法律に基づき、消費者から以下のようなプロセスで承諾を得る必要があります。

​​​​​​​

  1. 電磁的記録による提供を消費者が希望・承諾していることが前提
  2. 事業者は消費者に電磁的方法の種類と内容を明確に示し、紙の書面から電磁的方法に代わることの真意に基づく承諾を得る
  3. 消費者が電磁的方法を希望しない場合、原則通り紙の書面で交付されることを説明する
  4. 事業者は消費者に対して、電磁的方法で提供する情報を実際に閲覧・確認できるかどうかを確認する(適合性の確認)
  5. 消費者が第三者へ情報提供(契約内容など)を求めた際、事業者はその第三者への情報提供も行なう
  6. 電磁的方法による情報提供の承諾を得た場合、承諾の意思表示を書面または電子メールなどの手段で行なう(不備があった場合、書面交付義務違反として処罰の対象となる)


事業者は消費者が電子データの内容を確認しやすいように、特殊なソフトウェアのみで閲覧できるようなファイル形式は避けるべきです。

上記のプロセスを経て、事業者は承諾を得たことを証明する書面の交付も行います。


承諾後の控え書類を交付する

電子交付の承諾を得たことを証明する控え書類に関しては、書面での交付、つまり紙に印刷して交付する必要があります。

ただし、連鎖販売取引、特定継続的役務提供及び業務提供誘引販売取引の概要書面や、特定継続的役務提供などの契約書面(取引全体をオンラインで完結できるものに限ります)については、控え書面も電子交付することが可能です。

電子交付の承諾については、消費者側で撤回の申し出をすることができます。その場合、事業者側で電子交付を行うことはできません。

一度撤回したあとに再承諾があった場合、消費者の真意や適合性に問題がないかを確認したうえで、電子交付に対応する必要があります。



特商規18条9号に基づく注意事項を確認する

特定商取引法改正後の注意事項については、『特定商取引に関する法律施行規則 18条9号』や『契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン P.15』で明示されています。

以下は、特定商取引法改正後の禁止事項を分かりやすく要約したものです。


  1. 電子交付を希望しない消費者に対して電磁的方法を勧める行為
  2. 消費者の意思決定に影響を及ぼすものについて、虚偽の情報を伝える行為
  3. 消費者を脅したり不安を煽ったりして困惑させる行為
  4. 財産上の利益を供与する行為
  5. 書面交付において、消費者に費用を徴収するなどして不利益をもたらす行為
  6. 電子交付の適合性を確認する際、不正によって不当な影響を与える行為
  7. 適合性を確認せず電子交付を行う行為、または確認ができない消費者に電子交付を行う行為
  8. 消費者からの商品購入やサービス提供の承諾を不正の手段で代行する、または電子交付する事項の受領を代行する行為
  9. 消費者の意志に反して、電子交付の承諾や事項の受領をさせる行為


財産上の利益を供与する行為については、電子交付を促す目的でキャッシュバックキャンペーンやお得なクーポン配布などが該当します。

消費者は電子交付と書面での交付を自由に選択できますが、書面交付に郵送料や手数料などの不利益を設けることはできません。

適合性の確認については、消費者が所有するパソコンやスマートフォンで行うことが必要です。そのため、事業者側で用意したデバイスで承諾を得る行為は禁止されています。

万が一上記の禁止行為が確認された場合、電子交付の承諾は無効になり、さらに書面交付義務違反として罰せられる可能性があります。


電子契約サービスで電子契約書を適切に管理する

特定商取引法に準拠した契約書類の電子化と契約管理には、電子契約サービスの導入が望まれます。

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>> 【2023年最新】電子契約サービスの基本!企業にもたらす効果や注意点を解説


まとめ

この記事では、特定商取引法(特商法)について以下の内容で解説しました。


  • 特定商取引法に該当する7つの取引類型
  • 特定商取引法改正に伴う契約書類等の電子化
  • 特定商取引法改正に準拠した電子交付の重要ポイント


特定商取引法は、販売事業者やサービス提供事業者による違法・悪質な行為を防止するための法律であり、消費者の利益を守る目的があります。

2023年6月1日の特定商取引法改正により、一部の取引類型で申込書や契約書の電子交付が許容されるようになりました。これから電子交付を利用する事業者は、適用範囲やルールを十分に理解し、各法律に準拠した正しい運用が求められます。

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監修:弁護士 宮内宏
監修:弁護士 宮内宏
所属 宮内・水町IT法律事務所 経歴 東京大学工学部電子工学科及び同修士課程卒業。 日本電気株式会社(NEC)にて、情報セキュリティ等の研究活動に従事。 東京大学法科大学院を経て法曹資格取得。第二東京弁護士会所属。

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