電子契約の原本とは?条件や書面契約との違い、保存時の注意点
目次[非表示]
- 1.原本に関する基礎知識
- 1.1.そもそも原本とは?
- 1.2.原本と謄本、正本、副本、抄本、写しの違い
- 2.電子契約における原本とは?
- 2.1.書面契約と電子契約の違い
- 2.2.電子契約における原本の条件
- 2.3.電子契約における書類区分の違い
- 3.電子契約における原本の必要性と保存方法
- 3.1.電子契約で原本が必要になるケース
- 3.2.電子契約の原本の保存方法
- 4.まとめ
2024年1月1日から「電子帳簿保存法」により、電子取引において授受した契約書や書類全般は、電子データのまま保存することが義務付けられました。そのため急遽、自社内の対応や仕組みづくりについて検討する企業も多いでしょう。今回は、電子契約における原本の定義や保存方法、そして書面契約との違いなどについて解説します。
原本に関する基礎知識
はじめに原本とは何か、について把握しておきましょう。また原本の類義語に謄本、正本などがありますが、提出を求められたときのために、各書類区分の違いについても把握することが大切です。
そもそも原本とは?
原本とは、最初に作成された文書・資料のことであり、オリジナルを指します。写しなどの元になる文書・資料です。
原本が必要になるケースとして、例えば企業を対象とした税務調査や金融機関への融資申請などの場面で、契約書や領収書の原本の提出を求められることがあります。
原本と謄本、正本、副本、抄本、写しの違い
原本の類義語として間違えやすい書類区分に「謄本」「正本」「副本」「抄本」「写し」などがあります。各書類区分の違いを理解すれば、提出が求められた際、適切な書類または電子データを用意できます。
原本
一番初めに作成された文書・資料です。通常は1通のみですが、契約や文書作成に携わった人および企業の数分用意することもあり、複数存在する場合もあります。
写し
原本の内容において一切の改変や変更を行わず、そのままコピーや写しを行った文書全般を指します。
謄本
写しの1種であり、文字や符号含めて原本の内容すべてをそのままコピーまたは写した文書全般を指します。たとえば「戸籍謄本」や「不動産登記簿謄本」などがあります。
正本
写しの1種であり、文字や符号含めて原本の内容をすべてコピーまたは写した文書を指します。謄本と異なる点は、正本はあくまで権限を持つ者が作成した文書であることです。
たとえば遺言書を作成する場面で考えると、公証人により遺言者の代わりに作成された遺言書(公正証書遺言)は正本にあたります。遺言者本人と遺言書の関係者以外であるにもかかわらず、権限を持つ者として公証人が作成しています。
副本
正本の控えとして作成される正本の写し文書です。原本を基に作成された正本の写しであるため、正本や原本と同等の効力が認められます。副本の提出を求められた場合は、謄本の写しではなく正本の写しを副本として提出します。
妙本
写しの1種であり、原本の一部をコピーまたは写した文書です。一部ではありますが、内容は原本と全く同じ内容かつ同じ文字や符号である必要があります。
電子契約における原本とは?
電子契約は、書面契約とは異なり実体のないデータ上で行われます。保存すべき原本の定義や、書面契約と異なる点について解説します。
書面契約と電子契約の違い
書面契約ならば、紙という実体がある物を用いて契約書が作成されます。一方で電子契約はサーバー上の情報という実体が手元にない状態で契約書が作成されます。双方の違いは下記のとおりです。
電子契約 |
書面契約 |
|
契約書の媒体 |
電子データ |
用紙 |
保管方法 |
電子契約サービス会社の サーバー上など |
自社の棚など |
法的効力 |
電子署名 |
印鑑 |
本人性の証明 |
電子証明書 |
印鑑証明書 |
改ざん防止 |
(タイムスタンプ) |
契印・割印 |
送付方法 |
メール・インターネット |
郵送・持参 |
収入印紙 |
不要 |
必要 |
電子契約にて作成される電子契約書は、改ざん防止のためにタイムスタンプの付与があります。しかし昨今の電子契約サービスでは、作成した契約書の改変・変更が容易に行えないようになっており、行うとしても変更履歴が容易に閲覧できるようになりました。
そのため2022年1月1日にて「電子帳簿保存制度」の見直しが行われ、上記に該当するサービスを利用しているならば、タイムスタンプは不要とされています。
電子契約における原本の条件
書面契約ならば、契約書が用紙で作成されるため原本の特定が容易です。一方、電子契約で作成される契約書は、実体がなく複製が容易な電子データとして作成されるため、原本の特定や把握について疑問が生じます。
電子帳簿保存法では、下記の要件を満たした電子データが原本として認められるとしています。
・下記4点のいずれかの措置
- タイムスタンプが付与された書類データのやりとりを行うこと
- 書類データを受け取った後、すみやかにタイムスタンプを付与すること
- 書類データの訂正や削除を行った場合に履歴が残るシステムか、訂正や削除を行えないシステムを利用してやりとりと書類の保存を行うこと
- 正当な理由がない書類の訂正や削除の防止について事務処理規程に定めて、規程に沿った運用を行うこと
・電子データを作成するために使用する機器のマニュアルがすべて完備されていること(パソコン、クラウドサービスなど)
・電子データの保存場所に、電子データを作成する際に利用する全機器・全システムのマニュアルを用意し、速やかに出力し閲覧できるようにしてあること
・下記の要件で容易に検索し閲覧できること
- 取引年月日、勘定科目、取引金額、その他電子データに応じた主要項目
- 日付または金額の範囲指定
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できる
・税務職員による調査や質問があった場合、速やかにダウンロードして提出できること
なお税務職員の求めに応じて速やかに電子データがダウンロードできるのであれば、検索要件のうち2と3は不要です。
電子契約における書類区分の違い
書面契約においては「原本」「謄本」「正本」「副本」「抄本」「写し」などの書類区分がありました。しかし電子契約の場合は、書類を作成する際に電子署名とタイムスタンプを付与します。また使用するクラウドサービスによっては容易に内容を改ざん・変更ができず、可能であったとしてもログが残ります。
そのため正当性や真実性が担保できているため、明確な書類区分はないと考えてよいでしょう。
電子契約における原本の必要性と保存方法
電子契約で作成した原本は、書面契約と同様にトラブル時における証拠として、また税務調査などが行われた際に必要です。必要な時にすぐ提出できるよう適切な保存方法について説明します。
電子契約で原本が必要になるケース
電子契約で作成された電子データの原本は、「電子帳簿等保存法」により5年または7年の保管が義務付けられています。(最長10年のものもあります)そして実際に、裁判や税務調査などで提出が求められる場合があります。
トラブルによる裁判
業務上のトラブルにより、顧客やパートナー企業などの関係者から訴訟を起こされるケースがあります。その際に、証拠として契約書や関連する資料・書類の原本の提出が求められる場合があり、実際に「民事訴訟規則」にて下記の記述があります。
(受命裁判官等の証拠調べの調書)
第百四十三条 文書の提出又は送付は、原本、正本又は認証のある謄本でしなければなら
ない。
2 裁判所は、前項の規定にかかわらず、原本の提出を命じ、又は送付をさせることがで
きる。
【引用】裁判所 民事訴訟規則 受命裁判官等の証拠調べの調書 第百四十三条
税務調査
企業の税務申告の正当性を図るため、国税庁より税務調査が行われた際、売上や経費に関わる契約書や領収書などの原本の提出が求められる場合があります。
電子契約の原本の保存方法
書面契約の場合、作成した契約書や書類の原本を保管する際は、自社の棚や倉庫などで保管します。一方で電子データの場合は、保存方法が電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の3つの区分に分かれており、それぞれ保存方法が異なります。
電子帳簿等保存
パソコンなどで作成した電子データの書類・資料は、電子データのまま保存します。
スキャナ保存
契約書などの書類を用紙で授受した場合は、電子帳簿保存法で定められているスキャナ保存の要件を満たしていれば、スキャナで電子データとして取り込み、取り込んだ画像を原本として保存できます。ただし、下記に当てはまる国税関係書類や重要書類は、電子データとして取り込んだ際、紙も併せて保管が必要です。
- 入力期間が経過してしまった書類
- 使用するプリンタの最大出力より大きい書類
- 定期的な検査で不備があった書類
また電子帳簿保存法ではスキャンした電子データが原本として認められていますが、民事訴訟法では原本として認められておらず、あくまで複製としています。そのため紙で授受した契約書に関しては、スキャナで電子データとして保存はできるものの、万が一の裁判時に備えて紙での保存も必要です。
電子取引
インターネットやメールなど電子的にやり取りを行い、一度も用紙として出力していない場合の取引情報や契約書などは、そのまま電子データとして保存します。電子契約は電子取引にあたります。
書面に出力する場合
メールやインターネットなどの電子取引により授受した書類や、パソコンなどで作成した電子データは、すべて電子データのままで保存することが、2024年1月1日より義務付けされました。
そのため電子データを用紙で出力して原本として保存することはできません。税法上書面による出力が必要な場合も同様に、出力して提出することは認められていますが、原本として保存はできないため注意が必要です。
電子帳簿保存法の要件に沿って、電子データのまま保存しましょう。
ただし、一貫して用紙のまま作成された書類については用紙のままでの保存が可能で、スキャナで取り込んで電子データとして保存する方法も選べます。
まとめ
電子契約は書面契約とは異なり、実体のないインターネット上でやり取りが行われるため、契約書の正当性や本人性の担保に疑問が生じます。しかし容易に内容の変更が行われない、また行われたとしてもログが残るシステムを用いれば、法的効力を持った原本として保存できます。2024年1月1日から完全義務化された「電子帳簿保存法」に則り、正しく保存しましょう。
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