電子契約できない契約書とは?相手の事前承諾が必要な例と見分ける際の注意点


目次[非表示]

  1. 1.電子契約できない契約書とは
  2. 2.電子契約できない契約書の種類
    1. 2.1.電子契約できない契約書一覧
    2. 2.2.一部の契約書が電子契約に対応できない理由
  3. 3.電子契約できる契約書の種類
  4. 4.電子契約で相手の事前承諾が必要な契約書
    1. 4.1.特定商取引が電子化できるようになった背景
    2. 4.2.相手の事前承諾・希望・請求が必要な契約書と文書
    3. 4.3.電子契約で相手の事前承諾が必要なシーン
    4. 4.4.電子契約で相手の希望が必要なシーン
  5. 5.電子契約できない契約書を見分ける際の注意点
  6. 6.まとめ


電子契約できない契約書とは?相手の事前承諾が必要な例と見分ける際の注意点


近年、宅地建物取引業法改正や特定商取引法改正などが整備され、契約書の電子化が進められてきました。

しかし、一部の契約においては電子化の基準を満たさない場合、書面契約書での契約締結が必要です。また、書面による契約を法的に義務付けられている契約書もあります。

この記事では、電子契約できない契約書や条件が定められているケース、見分ける注意点について詳しく解説します。


電子契約できない契約書とは

電子契約できない契約書とは、事業用定期借地契約や任意後見契約書、企業担保権の設定又は変更を目的とする契約などがあげられます。

2022年5月には宅地建物取引業法や借地借家法等、2023年6月には特定商取引法が改正されたため、現在はほとんどの契約書が電子化できるようになりました。

しかし、一部の契約書は、法律によって書面での契約が義務化されているため、電子化することができません。

自社で取り扱っている契約を電子化したい場合、法律に準拠した正しい電子契約の知識を得ておくことが大切です。



電子契約できない契約書の種類

一部の法律により、書面での契約が義務化されている契約書は電子契約を行えません。

ここからは、電子契約できない契約書の例を紹介します。


電子契約できない契約書一覧

電子契約できない契約書は、事業用定期借地契約・企業担保権の設定又は変更を目的とする契約・任意後見契約書があげられます。

電子契約を利用できない契約書と根拠になっている法令は、下記のとおりです。


文書名

根拠法令

改正法施行予定

事業用定期借地契約

借地借家法23条

企業担保権の設定又は
変更を目的とする契約

企業担保法3条

任意後見契約書

任意後見契約に関する法律3条


上記の契約書は、法律によって書面での契約が定められており、電子化できません。

電子契約できない契約書を把握しておくことで、安心して電子契約サービスを利用できます。


一部の契約書が電子契約に対応できない理由

事業用定期借地契約・企業担保権の設定又は変更を目的とする契約・任意後見契約書は、公正証書によって契約をしなければならないことが法律で定められています。そのため、現状は書面による契約が必須です。

公正証書とは、私人(個人または会社、その他の法人)からの嘱託により、公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことです。

なお、規制改革推進会議において公正証書の電子化を認める範囲や、時期について検討が進められています。

今後、公正証書を必要とする契約書も、電子契約による取引が認められる可能性があります。



電子契約できる契約書の種類

IT書面一括法・e-文書法・電子帳簿保存法・デジタル社会形成整備法などにより、ほとんどの契約書が電子契約できるようになりました。


▼電子契約できる契約書類例

  • 保証契約書
  • 取引基本契約書
  • 秘密保持契約書
  • 雇用契約書
  • 労働者派遣契約書
  • 売買契約書
  • 請負契約書
  • 委任契約書・準委任契約書
  • 業務委託契約書
  • 代理店契約書
  • フランチャイズ契約書
  • 注文書・注文請書など


契約書だけではなく、注文書や注文請書などの書類も電子化に対応しています。

一部の契約は電子契約に対応できませんが、ほとんどの契約書が電子化できるため、幅広い業種や取引で電子契約が用いられています。



電子契約で相手の事前承諾が必要な契約書

特定商取引法における書面も法改正によって電子化が可能になりました。

ただし、取引先の事前承諾や希望などを必要とし、要件を満たさないと電子契約できない契約書もあります。

ここでは、特定商取引法における書面が電子化できるようになった背景と、取引先の事前契約や希望が必要な契約書について詳しく解説します。


特定商取引が電子化できるようになった背景

2021年の特定商取引法改正により、事業者が交付する契約書・文書の電子化が認められています。

2023年6月以前の特定商取引法では、訪問販売や電話勧誘販売などの特定商取引については、消費者の保護のため、書面での契約書を交付する義務が定められていました。

特定商取引法の改正が適用された2023年6月1日以降は、事業者が交付する必要がある契約書面について、消費者の承諾を得ていれば電磁的方法での交付が可能です。電磁的方法の例として、電子メールや電子契約サービスによる電子署名も含まれます。

特商法の改正によって、消費者によるクーリングオフ通知書面についても、電磁的方法で行えるようになりました。

〇 消費者からのクーリング・オフの通知について、電磁的⽅法 (電⼦メールの送付等)で⾏うことを可能に(預託法も同様) 

〇 事業者が交付しなければならない契約書⾯等について、 消費者の承諾を得て、電磁的⽅法(電⼦メールの送付等)で ⾏うことを可能に(預託法も同様)

引用元:特商法取引ガイド『特定商取引法の主な改正内容 抜粋


相手の事前承諾・希望・請求が必要な契約書と文書

契約書の電子化にあたって、取引先の事前承諾・希望・請求などの要件を満たす必要がある契約があります。


▼承諾に該当する契約書、文書一覧例と根拠となる法令

承諾に該当する契約書、文書

根拠となる法令

投資信託契約約款

貸金業法の契約締結前交付書面

貸金業法の生命保険契約等に係る同意前の交付書面

貸金業法の契約締結時交付書面

貸金業法の受取証書

割賦販売法の契約等書面

旅行契約の説明書面

特定商取引における、事業者が交付する申込書面、契約書面、概要書面

建設工事の請負契約書

設計受託契約・工事監理受託契約の重要事項説明書

設計受託契約・工事監理受託契約成立後の契約等書面​​​​​

下請事業者に対して交付する「給付の内容」等記載書面

定期建物賃貸借契約の際の説明書面

宅地建物の売買・交換の媒介契約書

宅地建物の売買・交換の代理契約書

宅地建物の売買・交換・
賃借の際の重要事項説明書

宅地建物取引業者の交付書面

不動産特定共同事業契約書面


希望に該当する文書は、労働条件通知書面や派遣労働者への就業条件明示書面などがあります。

労働条件通知書面は『労働基準法15条1項』、『施行規則5条4項』を根拠とし、派遣労働者への就業条件明示書面は『派遣法34条』、『施行規則26条1項2号』を根拠としており、電子化された文書で交付するには、相手の希望を確認する過程が必要です。

請求に該当する文書は、金銭支払の受取証明書があり、『民法486条2項』によると、紙ベースの受取証明書の交付の請求に代わり、電磁的な手段での提供の請求が可能になっています。

ここで紹介した、契約書や文書は、承諾・希望・請求の要件さえ満たしていれば、電子化が可能です。自社で取り扱う文書において、要件の要否を確認する必要があります。


電子契約で相手の事前承諾が必要なシーン

建設工事の請負契約や下請との受注発注書面の電子化については、取引先の事前承諾が必要です。

事前に取引先へ電子契約の仕様やメリットなどを提示し、承諾を得られた場合、電子契約を利用可能です。

建設工事請負契約などは、契約金額が高く件数も多いため、電子契約の利用によって印紙税のコスト削減に期待できます。


電子契約で相手の希望が必要なシーン

労働条件通知書や派遣社員に対する条件明示書面は、労働者へ電子化についての希望を確認するプロセスが必要です。

取引先がメールや電子契約サービスなどで契約書の交付を希望した場合、電子データで作成した電子契約書の交付ができます。

DX化が進んだ現代においては、ペーパーレス化を推進するため、電子契約サービスを積極的に導入する企業も増えてきています。



電子契約できない契約書を見分ける際の注意点

契約書は、契約当事者同士の立場や関係性によって、電子契約ができないケースもあります。


▼契約当事者同士の立場で電子契約できない、承諾が必要な例

  • 賃貸人と賃借人
  • 親事業者と下請事業者
  • 企業と消費者
  • 雇用主と労働者


契約当事者の力関係や情報格差次第で、ハンディが生じやすい場面かどうかで、電子契約できない、承諾が必要な契約書が見分けられます。

対等関係で結ばれる契約については、電子契約が利用できると言えます。また、契約書を電子化するにあたり、電子帳簿保存法に基づいた法対応も必要です。

電子帳簿保存法において、契約書に関する電子データの保存方法を令和5年12月31日までは媒体を指定しないとしています。しかし、令和6年からは電子データのままの保存が必要となります。​​​​​​​

個人事業主・法人の皆さまへ
請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です。

令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差支えありません(事前申請等は不要)が、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう、必要な準備をお願いします。

引用元:国税庁『電子取引関係



まとめ

この記事では、電子契約できない契約書について以下の内容で詳しく解説しました。

  • 電子契約できない契約書の種類
  • 電子契約できる契約書の種類
  • 電子契約で相手の事前承諾が必要な契約書


電子契約に関する法整備により、以前よりも多くの契約で契約書の電子化ができるようになりました。

しかし、事業用定期借地契約や任意後見契約書など、一部の契約は電子契約できない状況です。また、取引先の事前承認が必要な場面などでも、契約書を電子化できないケースがあります。

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