電子契約の仕組み|電子署名とタイプスタンプ、方法の流れを解説
(更新日:2024年6月26日)
目次[非表示]
- 1.そもそも電子契約とは?
- 2.電子契約の仕組み
- 3.電子契約の仕組みに関するよくある疑問
- 3.1.電子契約と書面契約の主な違いは?
- 3.2.電子契約は法的に有効?
- 3.3.電子契約を求められたらどうすれば良い?
- 3.4.電子契約に関係する法律は?
- 4.電子契約の方法の流れ
- 4.1.現状の可視化
- 4.2.システム導入範囲の検討
- 4.3.電子契約システムの選定
- 4.4.導入稟議を起案する
- 4.5.電子契約システムの本導入
- 4.6.導入後のサポートを整える
- 5.電子契約のメリット・デメリット
- 5.1.電子契約のメリット
- 5.2.電子契約のデメリット
- 6.電子契約の主な導入方法
- 7.電子契約システムの運用方法
- 7.1.①契約書のアップロードと送信
- 7.2.②契約書の受信と承認
- 7.3.③契約書の保管
- 8.まとめ
電子契約はまだ広く認知されていないため、どういった方法で導入したら良いのか分からないというケースも少なくありません。
電子契約を適切に導入、運用するためには、役割や仕組みを把握することが大切です。
担当者のなかには、「電子契約の導入を検討している」「導入にあたって電子契約の方法について知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、電子契約の概要や仕組み、導入や運用の方法について詳しく解説します。
>>電子契約における契約書の文言とは?変更箇所や注意点を紹介
そもそも電子契約とは?
電子契約とは、電子的に作成した契約書を、インターネットを通して取引先に送信し、電子署名を使用して締結する契約のことをいいます。
書面契約とは異なり、物理的な紙や直接のやりとりが必要なく、オンライン上で契約手続きを完結することが可能です。
電子契約は直接署名や押印ができないため、証拠力や法的効力が懸念されています。しかし、電子契約で用いられる電子署名は本人性の証明が可能であり、電子契約の有効性を担保してくれます。
また、パソコンやスマートフォンなどの通信機器があれば契約を締結する場所や時間が問われないため、利便性の向上が期待できます。
電子契約の仕組み
電子契約を成立させる仕組みとして、電子署名とタイムスタンプが挙げられます。
いずれも電子契約の安全性や正当性を保護するものであり、契約の有効性を保つためには欠かせません。
ここでは、電子契約を成立させる仕組みを紹介します。
電子署名
電子署名は、電子契約を締結するうえで欠かせない要素です。その名の通り、電子署名は電子的に実行される署名方法の1つであり、書面契約における印鑑やサインと同等の役割を果たします。電子署名の種類に「立会人型電子署名」「当事者型電子署名」の2種類があります。
立会人型電子署名
立会人型電子署名(事業者型電子署名とも呼ぶ)は、電子契約サービスの事業者が、メールやSMSなどによる認証やログなどの仕組みにより本人確認を行って付与するタイプの電子署名です。本人確認を手軽に済ませることができ、契約者の負担が少ないため、導入しやすい電子署名として人気です。
当事者型電子署名
当事者型電子署名は、暗号技術を用いて署名者の身元確認と文書の改ざん防止を行うものです。公的認証機関によって発行される電子証明書を利用し、本人性を担保します。
電子証明書は、第三者機関による厳格な本人確認が行われたうえで発行され、高度な暗号化技術で守られているため、偽造や改ざん防止に有用です。
具体的には公開鍵暗号方式を採用しており、ペアとなる2つの「秘密鍵」と「公開鍵」を使って、文書の暗号化と復元を行います。
公開鍵は第三者に公開することができるため、公開鍵が本物であることを証明するために、「電子証明書」を用います。これにより文書が署名者本人によって作られたことと、改ざんされていないことを担保します。
不正アクセスや改ざんなどのリスクを最小限に抑えられるため、電子契約の安全性や信用性を向上させることが可能です。
タイムスタンプ
タイムスタンプとは、契約書の作成日時や編集日時を正確に記録する機能です。
時刻認証局という第三者機関によって発行されるものであり、契約書が確実に存在していることを証明します。
電子署名は、署名者本人が作った文書であることと、改ざんされていないことが証明できますが、その文書がいつ以降、改ざんされていないのかまではわかりません。
この「いつ」を担保するために、電子文書のやりとりでは、電子署名と合わせて「タイムスタンプ」が使われます。
>>電子署名とは?導入のメリット・デメリットと必ず知るべき注意点
電子契約の仕組みに関するよくある疑問
電子契約には書面契約と異なる特徴があります。また、法律によって電子契約の有効性が定められているため、関連する法律を知っておくと良いでしょう。
電子契約と書面契約の主な違いは?
書面契約では紙を使用し、電子契約は電子データを使用する点で両者は異なります。そのため、書面契約では印鑑を使用しますが、電子契約では電子署名または電子サインを用いることになります。
また、証拠力や業務フローの違いも押さえておきましょう。
「証拠力」においては、本人性の担保と改ざんの防止が重要な要素です。書面契約では印鑑を使用するため、印鑑証明書で本人性の担保がされます。一方で電子契約における本人性の担保は、電子署名を使って担保されます。
改ざん防止においては、書面契約では契印・割印で、電子契約ではタイムスタンプによって担保されます。
「業務フロー」の面での違いは、書面契約の場合、契約書の送付時に郵送や持参することが必要です。一方、電子契約の場合はオンライン上のシステムを使ってメールによるやり取りで完結します。
保管に関しても、書類であれば書棚など物理的な保管場所が必要ですが、電子契約の場合はサーバーに保存されるので場所が必要ありません。
なお書面契約では収入印紙を使用しますが、電子契約では収入印紙が不要といった違いもあります。
電子契約は法的に有効?
結論をいうと、電子契約は法的に有効です。電子署名法第3条において、同法第2条第1項を満たす電子契約は紙の契約書と同等の効力を発揮することが示されています。
民法522条2項により、契約は口頭でも成立します。契約書の目的は証拠を視覚化することにあるので、当人同士の意思に基づいて締結されていれば紙・電子にかかわらず契約は有効です。また、手書きの電子サインは有効性が定かではないといわれていますが、電子署名機能が搭載されたシステムを用いれば、法的に有効といえるでしょう。
電子契約を求められたらどうすれば良い?
まず確認するべきことは、法的・社内ルール上問題ないかどうかです。一部の契約は電子化や電子契約が認められていない場合があります。そのため、自社の業種に関連する法令を確認することが大切です。
社内ルールについても、電子契約と書面契約では、業務フローや情報管理の方法が異なるため確認しましょう。これまで紙のみで契約を行っていた場合、社内ルールが電子契約に対応していないという可能性があります。たとえ法的に有効な電子契約でも、社内ルールに違反する場合は見直しが必要となるでしょう。
電子契約に関係する法律は?
基本的な法律としては、電子文書における署名の法的効力を定めた「電子署名法」が挙げられますが、契約に関しては「民法」も関連することがあります。収入印紙の有無に関しては「印紙税法」を参照します。
また、消費者保護の観点からは「消費者契約法」が、企業の取引記録に関する法律としては「電子帳簿保存法」が策定されており、電子契約を行う状況や場面に応じて関連する法律を遵守することが必要です。
電子契約の方法の流れ
実際に自社に電子契約システムを導入する場合はどのようなフローになるか、以下でステップごとに紹介します。
現状の可視化
まず現在は契約書をどのような体制で管理しているのか、現状の把握と可視化をしてみましょう。
確認事項の例は、取り扱っている契約書の種類やそれらの作成・対応の発生頻度、対応にかかっている期間、保管方法などが挙げられます。契約書以外にも、発注書や見積書、社内の稟議書などの書類まで確認すると良いでしょう。
システム導入範囲の検討
管理体制・ワークフローが可視化できたら、電子契約を導入する範囲の検討をしましょう。最初は作成機会が多いNDAや雇用契約書からスタートしてみるというのがおすすめです。利用頻度の高い契約書の作成を効率化できるというフローを体感してもらうことで、電子契約に対する社内コンセンサスも得やすくなるでしょう。
電子契約システムの選定
前提条件の整理をすべて終えたら、導入する電子契約システムを決めましょう。電子契約システムにも様々な種類があります。搭載機能はもちろんですが、シェアや導入実績、料金負担も考慮して決める必要があります。
一度導入したシステムは後で変更するのが大変なので、最適なシステムを選択できるようにしっかり検討をしましょう。
導入稟議を起案する
新しい仕組みを導入する際は、否定的な意見も発生することが考えられます。社内に対して、電子契約の活用促進のためにも導入によるメリットを丁寧に説明すると良いでしょう。
特に同業他社または隣接業種の導入事例を挙げることは有効で、具体的な導入事例を稟議参考資料として添えられると良いでしょう。
電子契約システムの本導入
事前の周知が済んだら、電子契約システムを正式に導入します。導入にはツールの利用者登録や印鑑登録、アクセス制御などの初期設定を行います。ツールの挙動確認を行い、利用者に引き継ぎましょう。
導入後のサポートを整える
導入後、円滑に利用を開始できるように利用マニュアルを作成して配布しましょう。しかしマニュアルを読むだけでは難しいこともあるかもしれないので、社内研修を行って、実際の操作を説明し触れてもらう機会を設けます。
利用中に不明点が発生した際の問い合わせ窓口や、問い合わせフローも準備しておくとさらに良いでしょう。
電子契約のメリット・デメリット
企業が電子契約を導入することで複数のメリットが得られます。ただし、企業の状況によってはデメリットが生じることもあり、それぞれ検討が必要です。
電子契約のメリット
まず電子契約は、紙や印刷、郵送などの費用を削減することができ、企業は大幅なコスト削減につながります。契約書の作成や署名、送付などもシステムを用いれば容易なため、契約締結までの期間を短縮できるでしょう。また、場所や時間に関係なく契約が行えるため、リモートワークとの相性も悪くありません。
コンプライアンスや監査への対応も容易になります。署名やタイムスタンプの履歴をデジタルで管理できるため、企業のガバナンス強化も実現できるでしょう。
最後に、クラウド型のシステムを用いれば、契約書の進行状況をリアルタイムで共有可能です。契約手続きの透明性が向上し、社内での確認も取りやすくなります。
電子契約のデメリット
国際取引や特定の業界などでは、法的に電子契約が認められていない場合があり、その場合は紙の契約書が必要になることがあります。また、自社だけが電子契約を導入しても、相手方が対応していなければ契約ができません。取引先や顧客の協力も欠かせないといえるでしょう。
書面契約から電子契約に移行する際のコストも無視できません。一般的にはシステムの導入や従業員の研修が必要になる場合もあり、一時的に業務負荷が増加することがあります。
最後に、電子契約はデジタルデータで管理されるため、不正アクセスや情報漏えいのリスクもあります。適切なセキュリティ対策を行いましょう。
電子契約の主な導入方法
電子契約は、文書作成ソフトや電子契約システムを利用することで導入できます。
自社にあった導入方法を選ぶためには、それぞれの特徴を把握することが大切です。ここでは、電子契約の導入方法を紹介します。
文書作成ソフト
電子契約書を文書作成ソフトで作成し、メールやビジネスチャットなどで送信するという方法もあります。
無料で契約書を作成できるメリットがありますが、電子署名やタイムスタンプなど機能が備わっていないことが課題の一つです。
文書作成ソフトを利用する場合は、自社で電子署名やタイムスタンプを用意する必要があるため、労力とコストがかかる可能性があります。
また、検索やその後の管理も考慮すると、専用のシステムを導入することをおすすめします。
電子契約システム
電子契約システムは、契約の締結やその後の管理に特化したものです。
電子署名やタイムスタンプなどのセキュリティ対策が講じられているため、より安全に契約を締結できます。
ただし、電子契約システムによって法的効力が異なる場合があるため、適切な選び方を把握し、慎重に検討するべきでしょう。
>>電子契約の導入にかかる費用やシステム選びのポイントを紹介
電子契約システムの運用方法
電子契約システムの運用の流れは、立会人型署名(事業者型署名)と当事者型署名によって異なります。
ここでは、電子契約システムの運用方法について詳しく解説します。
①契約書のアップロードと送信
契約書を作成する側が、契約書の電子データを電子契約システム上にアップロードします。その後の流れは立会人型署名と当事者型署名で異なります。
立会人型の場合は、自社のシステムから契約相手へ、契約書の電子データをメールで送信します。契約相手のメールアドレスがあれば送信できるため、相手が同じ電子契約システムを導入する必要がない場合がほとんどです。
当時者型の場合は、電子契約システム上で契約相手へ、契約書の承認依頼を送信します。契約相手も、同じ電子契約システムの利用やアカウントの作成がほとんどのケースで必要です。
②契約書の受信と承認
契約書を受信した契約相手が、署名処理を行います。
立会人型は、メールで送られてきた契約書のリンクを開き、署名処理へ進みます。
当事者型は、電子契約システム上にログインし、送られてきた契約書を確認し、署名処理が可能です。
③契約書の保管
電子契約を利用して締結した契約書は、電子帳簿保存法やe-文書法に基づいて、保管する必要があります。
電子帳簿保存法は、電子契約書を含む電子データの保存に関する法律です。
『国税庁による電子取引関係に関する通達』によると、令和6年以降は電子データの保存をせずに、紙のみで保存することは認められず、電子データの保存が義務づけられています。
個人事業主・法人の皆さまへ
請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です。令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差支えありません(事前申請等は不要)が、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう、必要な準備をお願いします。
引用元:国税庁『電子取引関係』
e-文書法は、法律によって保管が義務となっている文書や帳簿(電子データ以外も含む)の保存方法について、紙だけでなく電子化も認める法律です。
e-文書法の要件は、各府省令によって異なりますが、『「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」の概要』によって4つの要件が定められています。
要件 |
要件の概要 |
見読性 |
保存した電子データをパソコンやモニターに表示したり、書面で印刷したりして確認できる状態にする。 |
完全性 |
電子署名とタイムスタンプを使用して、本人性や非改ざん性を証明する。 |
機密性 |
文書の漏洩を防止するように対策する。 |
検索性 |
該当文書の検索、確認ができるようにする。 |
電子契約書の保管において、電子帳簿保存法やe-文書法の要件を満たす電子契約サービスを導入することが望ましいです。
まとめ
今回は電子契約の方法について、電子契約の導入フローや電子契約システムの運用の流れも踏まえて解説しました。
電子契約の方法は書面契約と異なり、自社が契約書の送付を行い、相手先が署名した後、お互いの契約書データを保管するという流れで進行します。
導入においては、計画・準備・導入のプロセスの中で、自社の課題と目的を明確にし、最も適した電子契約を選定することが望ましいです。
システムの運用方法では、当事者型署名と立会人型署名で業務の流れが異なります。電子契約書の保管についても、電子帳簿保存法とe-文書法の要件を遵守する必要があります。
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