【徹底解説】電子帳簿保存法に準拠した契約書や領収書の保存方法・要件
(更新日:2023年12月25日)
目次[非表示]
- 1.電子帳簿保存法とは
- 2.電子帳簿保存法に準拠して電子契約書を保存するメリット
- 2.1.①コストと手間の削減
- 2.2.②情報漏えいと改ざん防止の強化
- 2.3.③契約締結フローを可視化できる
- 2.4.④署名・記名押印のために移動する必要がない
- 3.電子帳簿保存法に基づく契約書などの保存方法
- 3.1.①電子帳簿保存
- 3.2.②スキャナ保存
- 3.3.③電子取引データ保存
- 4.電子帳簿保存法における電子契約の保存要件
- 5.令和5年度税制改正に伴う電子帳簿保存法の見直し
- 6.まとめ
紙の契約書と同様に、電子契約で使用される電子契約書にも法人税法による基準として7年間の保存義務があります。
電子データで作成された電子契約書は、印刷や郵送、保管スペースなどを必要としない企業に多くのメリットをもたらします。ただし、電子帳簿保存法などの法律で定められた要件に沿って適切に保存しなければなりません。
この記事では、電子帳簿保存法に準拠した契約書や領収書の保存方法・要件について詳しく解説します。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や書類を電子的に保存することを認める法律です。
1998年に施行された法律であり、時代の流れとともに複数回改正されています。
これまで国税関係の書類は紙で保存することが基本でしたが、保管用スペースの確保やコストなどの問題があり、電子データでの保存が認められました。
国税関係の帳簿は、主に総勘定元帳や仕訳帳などです。また、国税関係書類には決算書や契約書、領収書などが含まれています。
電子帳簿保存法に準拠して電子契約書を保存するメリット
電子契約書を各法令に対応して保存することで、企業に得られるさまざまなメリットについて解説します。
①コストと手間の削減
契約書を電子データで作成することで、紙の印刷代やインク代が不要になり、コストが大幅に削減されます。
また、契約書のスキャンや郵送・返送などの手間がなくなり、書類の保管スペースを確保する必要がないのも電磁的記録で保存するメリットです。
これまで紙の契約書の管理にかかっていた工数が削減され、組織の業務効率化や生産性向上にもつながります。
②情報漏えいと改ざん防止の強化
電子帳簿保存法に準拠した電子契約書の保存は、紙の契約書にあるような紛失・消失、改ざんなどのリスクを抑制します。
電磁的記録なら物理的にロストする心配がないため、予期せぬ災害時にも電子契約書を安全に保護することが可能です。
また、電子契約書に電子署名とタイムスタンプを付与することで、改ざんをした場合に検知ができるため、不正な取引を防止できます。
電子契約書を管理する電子契約サービスによって、セキュリティはまちまちです。
そのため、セキュリティがより高度なクラウドサービスや、国内データセンターのサーバーなど保全体制がしっかりしているサービスを選ぶことでよりセキュリティ対策を万全にすることができます。
③契約締結フローを可視化できる
紙の契約書の場合、契約締結までの煩雑なフローにおいて、進捗状況を細かく確認するのは容易ではありません。
電子契約書を作成から締結まで電子契約システムで行う場合、契約手続きがどの段階にいるのか簡単に可視化できます。
電子契約サービスによっては、署名方法や署名の順番の設定、承認者設定などの機能を使ってワークフローをカスタマイズすることも可能です。
取引先の署名・押印記名が進んでいない場合、適切なタイミングでフォローを入れられるため、締結漏れや遅延などのトラブル防止に効果的です。
④署名・記名押印のために移動する必要がない
電子契約書なら、クラウド上に保存された電磁的記録に電子署名・電子サインを施せるため、契約書への署名・記名押印のために移動する手間が省けます。
相手方が署名・押印記名をするために来社する手間もなくなるため、自社だけではなく取引先にとってのメリットにもなります。
また、署名・記名押印後の郵送・返送の工程も省略できるため、電子契約書の作成から締結までオンラインで全て完結することが可能です。
電子帳簿保存法に沿った電子契約書の保存および運用により、契約書の管理業務をテレワークに適応させることも容易です。
電子帳簿保存法に基づく契約書などの保存方法
国税関係の帳簿や書類の電子化および保存を認める法律である電子帳簿保存法では、3つの保存方法が定められています。
それぞれ保存方法や対象となる書類が異なるため、注意が必要です。ここでは、電子帳簿保存法で認められている保存方法を紹介します。
①電子帳簿保存
電子帳簿保存とは、電子データで作成された書類をデータのまま保存する方法です。
会計システムで作成した総勘定元帳や仕訳帳、損益計算書などが該当します。
電子データは原本として扱われるため、印刷して保管する必要がありません。保存場所として、クラウドやハードディスク、DVDディスクなどが利用できます。
②スキャナ保存
スキャナ保存とは、既存の紙で作成された書類をスキャナを用いてデータ化して保存する方法です。
取引先から受け取った請求書や見積書などが該当します。
また、要件を満たしていれば、スマートフォンやカメラなどで撮影した画像を使用することも可能です。
③電子取引データ保存
電子取引データ保存とは、電子的に取引したデータを保存する方法です。
電子データでやりとりした請求書や領収書などの取引に関連する書類が該当します。これは自社と取引先、双方が発行した書類が対象です。
>>電子帳簿の保存方法って?電子帳簿保存法で変わることやメリットデメリットを紹介
電子帳簿保存法における電子契約の保存要件
電子的に取引した電子契約を保存するためには、電子帳簿保存法が定める電子データ取引保存の要件を満たす必要があります。
要件が満たされていない場合は、法律違反だけではなく、取引先とのトラブルに発展しかねません。
ここでは、電子帳簿保存法における電子契約の保存要件を紹介します。
①真実性の確保
電子データは紙媒体の書類に比べ、不正アクセスや改ざんなどのリスクがあります。
そのため、書類の真実性や有効性を証明できる体制を整えておくことが大切です。以下4つの要件のうち、いずれか一つを満たす必要があります。
- ①タイムスタンプが付与されたあと、電子取引情報の授受を行う
- ②取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付与すると同時に、管理者の情報を確認できるようにする
- ③内容の訂正や削除を行った場合、その記録が残るもしくは訂正や削除ができないシステムを利用して取引情報の授受を行う
- ④正当な理由がない訂正や削除が行われないように事務処理規定を定め、規定に沿った運用を行う
②見読性の確保
電子契約書は紙の契約書と同様、7年間納税地で保管することが義務づけられています。
データを保存するデータセンターやサーバーが納税地の管轄内になくても問題ありません。
ただし、ディスプレイやプリンターなどを使用し、速やかに内容確認できる体制の構築が求められます。
また、保存したデータは、最低でも肉眼で内容確認できるほどの質を保っている必要があります。
③マニュアルの整備
システムに電子契約を保存する場合、データを確認するための機器の操作方法やルールを定めたマニュアルの整備が必要です。
パソコンやディスプレイ、プリンターなど、データの確認に使用される機器すべてが対象になります。
マニュアルは、速やかにアクセスできるものであれば、オンライン上のデータでも問題ありません。
④検索機能の確保
電子データとして書類を保存する際は、条件を絞って検索できる機能を確保しなければなりません。
検索機能の要件を満たすためには、以下3つの条件をすべて満たす必要があります。
- ①取引年月日、取引先、取引金額で検索ができること
- ②取引年月日と取引金額は、範囲指定して検索できること
- ③2項目以上を組み合わせて検索できること
ただし、税務調査時にデータがダウンロードできる状態を確保しているのであれば、②と③の条件を満たす必要はありません。
令和5年度税制改正に伴う電子帳簿保存法の見直し
電子帳簿保存法は、令和5年度の税制改正に伴い一部の要件が見直されたことで、令和6年1月1日以後に改正事項が適用されます。
ここでは、国税庁が公開した資料『電子帳簿保存法が改正されました 〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜』に沿って、重要な変更点を解説します。
①優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の見直し
『優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置』を受ける際の優良な電子帳簿として作成する帳簿の対象や、申告所得税・法人税が見直されました。
『優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置』については、以下のように定義されています。
Q:「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」とは、どのような措置ですか?
A: 一定の範囲の帳簿について、「モニター・説明書等を備え付ける」などの電子帳簿として保存するための要件に加えて、
① 訂正削除履歴の保存、 ② 帳簿間の相互関連性 ③ 日付・金額・相手方による検索機能 の3要件を全て備えて保存している場合には、後からその電子帳簿に関連する過少申告が判明しても過 少申告加算税が5%軽減される措置です(あらかじめ届出書を提出している必要があります。)。
出典:国税庁『電子帳簿保存法が改正されました 〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜 P.2』
これまでは、仕訳帳・総勘定元帳に加えて、全ての青色関係帳簿で軽減措置が適用されていましたが、改正後は仕訳帳・総勘定元帳以外の帳簿に関して適用範囲が限定的となりました。
②スキャナ保存に関する主な改正事項
電子帳簿等保存制度では、決算関係書類以外の国税関係書類に関しては、物理的な保存以外にスマートフォンやスキャナでの読み取った電磁的記録の保存が認められています。
令和6年1月1日以後に適用されるスキャナ保存に関する改正事項は、以下の3点です。
- 解像度・階調・大きさに関する情報の保存を必要とする要件の廃止
- 入力者などの情報を確認する要件の廃止
- 帳簿との相互関連性の確保が必要な書類を重要書類に限定
出典:国税庁『電子帳簿保存法が改正されました 〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜 P.3』
これらの改正事項によって、令和6年1月1日以後のスキャナ保存に関して、見積書・注文書、納品書の写しのような一般書類の相互関連性の確保が不要となりました。
③電子取引データ保存に関する主な改正事項
令和6年1月1日以後、電子帳簿等保存法に沿った電子取引データの保存に関して、以下の3点が見直されました。
- 検索機能の全てを不要とする措置の対象者の見直し
- 令和4年度税制改正で措置された宥恕措置の廃止
- 改ざん防止・検索機能などの措置が必要な要件の変更
出典:国税庁『電子帳簿保存法が改正されました 〜令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要〜 P.3』
上記は、税務調査などに電子取引データを使用する際、検索機能や改ざん防止を施す必要がある対象者や要件に関する改正事項です。
電子契約書の保存・利用に関するトラブルを回避したい場合、関連する法律の改正に柔軟に対応可能な電子契約サービスを選定することが望ましいです。
まとめ
この記事では、電子帳簿等保存法に準拠した電子契約書の保存方法・要件について以下の内容で詳しく解説しました。
- 電子帳簿保存法で認められている保存方法
- 電子帳簿保存法における電子契約の保存要件
- 令和5年度税制改正に伴う電子帳簿保存法の見直し
電子帳簿等保存法は、国税関係の帳簿や書類を電子化して保存する際の基準を定めた法律です。
電子帳簿等保存法は定期的に見直されているため、法改正に柔軟に対応した電子契約の導入・運用が求められます。
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参考:電子帳簿保存法では契約書はどう保存する?電子契約にするメリットとデメリット
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