電子契約の立会人型署名(事業者署名型)とは?当事者型との違いや有効性を解説
(更新日:2024年3月25日)
目次[非表示]
- 1.電子署名とは
- 2.電子署名の仕組み
- 3.電子署名の種類
- 3.1.当事者型署名とは
- 3.2.立会人型署名(事業者署名型)とは
- 4.当事者型署名と立会人型署名(事業者署名型)の違い
- 5.電子署名の4つのメリット
- 5.1.①「どこでも押印」することができる
- 5.2.②「どこでも閲覧」することができる
- 5.3.③厳重なセキュリティによるコンプライアンス強化
- 5.4.④ペーパーレスによるコスト削減
- 6.当事者型署名と立会人型署名(事業者署名型)のメリット、デメリット
- 7.電子契約を導入する際の選定基準
- 7.1.法的証拠力が高い当事者型署名
- 7.2.利用者の負担が少ない立会人型署名
- 7.3.両方を備えたハイブリッド型署名
- 8.立会人型署名は法的根拠に基づいているのか
- 8.1.電子署名法における電子署名の定義
- 8.2.政府的見解による法的根拠
- 9.知っておきたい電子契約に関する法律
- 9.1.前提(民法)
- 9.2.認証(電子署名法、民事訴訟法)
- 9.3.保管(電子帳簿保存法)
- 10.まとめ
現在テレワークの普及とともに、押印の代替として電子契約サービスも普及が進んでいます。
電子契約の導入時には、電子署名の仕組みや立会人型や当事者型などの違いを理解したうえで、慎重に選択するべきです。
この立会人型や当事者型の「違いがよくわからない」と考えの方は少なくないのではないのでしょうか。
電子署名についての説明はこちらでも詳しく書いておりますが、最近新聞でもよく出る「立会人型」と「当事者型」の違いを中心に解説していきます。
電子署名とは
手始めに電子署名についておさらいしていきましょう。
簡単に言うと、電子署名とは書面でいう印鑑の代替となるものです。印鑑は書面への押印を行うことで、その書類はその印鑑を持つ本人の意思があったことを裁判所が推定します(民事訴訟法228条)。
電子署名とは、その代替、つまり電子署名が使用されたその電子文書が正式なものであり、かつ改ざんされていないことを証明するものです。
電子署名の仕組み
ではなぜ押印の代わりとなりえるのか、その仕組みについて簡単に解説しましょう。
電子署名の役割は、主に下記の2つがあります。
①本人証明:電子文書が署名者本人により作成されたことを証明する
②非改ざん証明:署名時点から電子文書が改ざんされていないことを証明する
この本人証明には、これらを実現するのは、公開鍵暗号と公開鍵基盤(PKI)、そしてハッシュ関数という3つの技術を組み合わせています。
送信者は受信者が正しいと証明できる公開鍵を使って、受信者に送りたい文書を暗号化し、送信します。
受信者は、その暗号化された文書を秘密鍵を使い、文書の暗号化を解除することが可能です。この技術を公開鍵暗号といいます。
そして、この送信者の公開鍵が正しいという状況を整えるセキュリティ基盤が、公開鍵基盤(PKI)です。暗号化技術であるハッシュ関数を利用して、改ざんの検知をしています。
この3つの技術を組み合わせて、電子証明書とタイムスタンプを使用することで、本人証明と非改ざん証明のされたデータであることがわかります。
これらのプロセスや電子署名の仕組みについての詳細は、関連記事で解説していますのでぜひご覧ください。
>>立会人型・当事者型どちらも利用可能なWAN-Signの詳細はこちら
電子署名の種類
さて電子署名には「当事者型署名」と「立会人型署名」と種類があります。こちらについて説明していきましょう。
当事者型署名とは
当事者型とは第三者である電子認証局が事前に本人確認をしたうえで発行した電子証明書を利用し、本人だけが利用できる環境で署名する方法のことです。
申請や契約の当事者同士が署名を行うため、本人型、契約者署名型とも呼ばれる場合があります。この電子証明書とは印鑑文化で言う「印鑑証明書」のようなものとお考え下さい。
立会人型署名(事業者署名型)とは
当事者署名型と違い、立会人型署名はユーザーの指示に基づき、事業者が署名を行います。
作成名義人が締結をメールアドレスに依頼し、そのメールを受信した人からの依頼により署名を行う方法です。
利用する際には、本人性の要件を満たす仕組みや機能があるかを確認する必要があります。立会人型とは別に、事業者署名型とも呼ばれています。
当事者型署名と立会人型署名(事業者署名型)の違い
当事者型署名と立会人型署名の主な違いは、電子証明書の名義の違いです。
どちらの電子署名も本人によるものですが、電子証明書の持ち主が異なります。
当事者型は当事者名義の電子証明書を使用するのに対し、立会人型では契約当事者の合意を確認したうえで、第三者名義の電子証明書を使用します。
また、当事者型は事前に利用者での電子証明書の発行が必要です。
どちらも適切な利用方法ですが、契約締結前の事前準備が異なるため、自社の利用目的に適した電子署名の選定を行う必要があります。
電子署名の4つのメリット
印鑑から電子印鑑に切り替えることで、ペーパーレス化・収入印紙削減・業務効率化と様々なメリットが発生します。
ここでは、電子署名の4つのメリットを詳しく解説します。
①「どこでも押印」することができる
リモートワーク時に、「この書類に押印しなければ.」と出社しなければならなくなるケースがあります。
そのようなケースでは、書面での押印となると現物の書類と印鑑がある場所でないと押印することができません。
電子署名であれば、パソコンやスマートフォンがあれば「どこでも押印する」ことができるため、出社する手間が不要となります。
②「どこでも閲覧」することができる
電子化した契約書は、「どこでも閲覧」することができます。
書面契約のようにファイリングしてキャビネットにしまっていたときと変わり、サーバー上で管理をするため、パソコンやスマートフォンなどのデバイスがあればどこでも内容を確認することが可能です。
>>電子署名とは?導入のメリット・デメリットと必ず知るべき注意点
③厳重なセキュリティによるコンプライアンス強化
電子署名は、電子契約システムのセキュリティ機能によって文書の紛失や改ざん、情報漏えいのリスクが抑えられます。
書面での管理の場合、人的ミスによる文書の紛失や、直接関係のない従業員も文書を見る可能性があるため、外部に情報を漏洩する恐れがあります。
電子署名を使用する電子契約システムでは、アクセス制限や承認設定ができる機能を備えたものを選定すると、厳重なセキュリティ対策ができ、改ざんや不正アクセスが困難です。
④ペーパーレスによるコスト削減
電子署名はペーパーレスで契約業務ができることによって、印刷や郵送などのコストを削減できます。また、書面での契約時に発生する印紙税の削減も可能です。
書面での契約業務は、契約書類の印刷や製本、郵送代がかかり、収入印紙も貼らなければなりません。業務手順が多いため、時間と手間もかかります。
ペーパーレスによる契約は、紙や押印が不要になり、収入印紙も貼らなくていいため、コストが削減できます。また、契約業務が簡略化されるため、効率的な業務が可能です。
当事者型署名と立会人型署名(事業者署名型)のメリット、デメリット
ここでは、当事者型署名と立会人型署名(事業者署名型)における、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
当事者型署名
メリット
最大のメリットは事前に身元確認がされているため、本人性を満たすことが考えられることです。
電子署名法第3条の推定効が認められるためには、締結する電子文書の作成名義人の意思による電子署名が行われていることを証明する要素が必要です。
当事者署名型は事前に第三者機関が自己申告以上の厳格な身元確認を行ったうえで発行する電子証明書を利用した署名方法です。そのため立会人型署名よりも本人性の要件を満たしていると考えられています。
デメリット
当事者型署名であれば安心して締結することができる一方で、電子証明書を発行するための手間とコストが負担になります。
電子証明書の発行には、名義人が公的な身分証を用意する必要があったり、また認証局側もその確認の時間が必要であったりと、発行には手間と時間がかかります。また、発行自体に費用が発生しますので、立会人型署名より負担がかかります。
自社で上記対応を行ったとしても、相手方にも当事者署名型を希望するということは同じ負担を強いることになります。
取引のパワーバランスであったり、個人との締結であったりすると依頼できない場合があります。
ローカル署名とリモート署名
この電子証明書による署名方法にも2つの種類があります。
ローカル署名とは、電子証明書をUSBトークンやICカードなどで物理的に本人が保有・管理し、契約する際には自分の利用するPCなどのローカル環境で署名を行う方法です。
従来の当事者署名型とは、このローカル署名を指していました。
しかし、この方法は契約者本人の管理負担が非常に大きく、また安全性にも疑問がありました。
そのため、最近は電子証明書と秘密鍵を安全に管理されたサーバーで保管し、そのサーバー内で電子署名を行うリモート署名が普及しています。
立会人型署名
メリット
当事者署名型とは違い、証明書の発行などが必要なく、相手方のメールアドレスがあれば締結できることが最大のメリットです。
締結前の手間やコストも発生しないため、相手方への負担が少なく導入がしやすくなりました。
デメリット
やはり当事者署名型よりも法的効力を得にくいことです。
確かに事前にやり取りのあるメールアドレスや、相手方から依頼のあったメールアドレスでの締結であれば、限りなく本人からの依頼に基づく締結であるといいたくなります。ただし、身元確認がなされていない依頼であることには変わりありません。
総務省・法務省・経済産業省はこれに対し、立会人型に対する本人性担保として、二要素認証を例示しています。
しかし、やはり二要素認証を経ても当事者署名型よりは厳格ではないことを不安視する声もあります。
>>電子契約における立会人型と当事者型とは?それぞれのメリットとデメリットを紹介
電子契約を導入する際の選定基準
取引先や契約内容に応じて、当事者型署名か立会人型署名か最適な署名方法の選定が必要です。
電子契約サービスの中には、両方選択できるハイブリッド型署名という署名方法もあります。
ここでは、電子契約を導入する際の選定基準について詳しく解説します。
法的証拠力が高い当事者型署名
契約に強い法的証拠力を持たせたいときに選ばれるのが、当事者型署名です。
電子認証局で本人確認をするため時間と手間がかかりますが、強い法的証拠力を持ちます。
初めて契約を結ぶ相手や高額な取引を行う際など、より法的証拠力を持たせたい場面で効果を発揮します。
利用者の負担が少ない立会人型署名
立会人型署名は当事者型署名と違い、第三者である事業者の名義で電子署名を使用できるため、迅速に契約ができます。
当事者型署名を利用した場合に、すでに取引のある契約相手や一般の消費者に対し、電子証明書を発行させてしまうのは、相手への負担がかかります。
信頼できる取引先や一般の消費者と取引を行う際は、立会人型署名を活用すると便利です。
両方を備えたハイブリッド型署名
ハイブリッド型署名は、自社の本人性の担保と相手先の手続きの手軽さを兼ね備えています。
当事者型は、自社と相手先の両方が電子証明書を発行する必要があり、立会人型は自社の本人性の担保に懸念が残ります。
取引先や契約内容に応じて、自社は当事者型、相手先は立会人型の方法で契約ができるハイブリッド型署名だと、内部統制に基づいたうえで相手先へ負担をかけない契約の締結が可能です。
状況にもよりますが、当事者型と立会人型の両方とも利用する可能性があります。ハイブリッド型署名に対応した電子契約サービスを導入すると、より柔軟な契約締結ができ、安心して利用ができます。
立会人型署名は法的根拠に基づいているのか
立会人型署名は、第三者である事業者が当事者の指示に応じて電子署名を使用します。
このような、第三者による電子署名の発行の解釈について、『利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法2条1項に関するQ&A)』が令和2年9月4日に発表されました。
ここでは、立会人型署名は法的根拠に基づいているのか、政府的見解に基づき詳しく解説します。
電子署名法における電子署名の定義
電子署名法に基づいた電子署名の定義は、『平成十二年法律第百二号電子署名及び認証業務に関する法律』で明示されているように、「電子文書が本人の意思によって作成され、作成後改ざんされていないことを証明するもの」となっています。
前提として、作成者の表示機能と改ざん検知機能を備えた電子データを電子署名としています。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
引用元:e-Gov法令検索『平成十二年法律第百二号電子署名及び認証業務に関する法律』
政府的見解による法的根拠
立会人型署名は、契約の当事者が電子署名を発行するのではなく、電子契約サービスの事業者が電子署名を発行します。
第三者による電子署名の発行がされる立会人型署名ですが、『利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法2条1項に関するQ&A)』によって、電子署名法に基づく電子署名であることが認められています。
立会人型署名は、電子契約サービス提供事業者の意思の介入はなく、利用者の意思によって電子署名が発行されていると考えられています。
Q2.サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による電子署名を行う電子契約サービスは、電子署名法上、どのように位置付けられるのか。
利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
引用元:経済産業省『利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法2条1項に関するQ&A)』
知っておきたい電子契約に関する法律
電子契約に関する法律は、前提・認証・保管の状況別に定められており、それぞれの要件に沿って電子契約を導入、運用する必要があります。
▼電子契約に関する法律
段階 |
要点 |
関連法律 |
前提 |
契約当事者の合意のうえで成立 |
民法 |
認証 |
書類の本人性と非改ざん性 |
電子署名法、民事訴訟法 |
保管 |
要件に沿った電子データの保存 |
電子帳簿保存法 |
前提(民法)
民法では契約時において、前提として契約当事者の合意のうえで契約が成立するとされています。
このように書面の契約や電子契約にかかわらず、当事者同士が合意した時点で契約は成立すると言えます。
▼民法
522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
引用元:e-Gov法令検索『民法 第五百二十二条2』
認証(電子署名法、民事訴訟法)
電子署名法では、電子文書が本人の意思によって作成され、作成後改ざんされていないことを証明するものであるとされています。
したがって、電子署名は本人性と非改ざん性の要件を満たした場合、法的効力を持つため、電子署名法に基づいた電子契約システムの導入が必要です。
民事訴訟法では、文書に本人や代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものとされています。
電子契約においては、電子署名が署名や押印と同等の効力を持つため、民事訴訟法上でも有効です。
▼民事訴訟法
228条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
引用:e-Gov法令検索『民事訴訟法 第二百二十八条4』
保管(電子帳簿保存法)
電子契約を運用する際は、電子帳簿保存法に基づいて電子契約書の保存をしなければなりません。令和6年以降は、電子契約を利用した契約書(電子取引)は、電子データのままの保存が義務付けられています。
個人事業主・法人の皆さまへ
請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です。
令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば差支えありません(事前申請等は不要)が、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう、必要な準備をお願いします。
引用元:国税庁『電子取引関係』
まとめ
この記事では、電子契約の立会人型署名(事業者型署名)について、以下の内容で詳しく解説しました。
- 当事者型署名と立会人型署名(事業者型署名)の違い
- 立会人型署名の法的根拠について
- 知っておきたい電子契約に関する法律
電子契約において、当事者型署名は強力な本人性があり、立会人型署名は利用者の負担が少ないというメリットがあります。
立会人型署名は、電子署名法に基づいていると認められるため、法的証拠力を備えています。
また、電子契約に関する他の法律について知っておくと、法律の要件に沿って電子契約の運用が可能です。
NXワンビシアーカイブズが提供する『WAN-Sign(ワンサイン)』は、当事者型と立会人型どちらの電子署名も利用できるハイブリッドな電子契約・契約管理サービスです。
あらゆる契約レベルに応じて適切な電子署名を選択でき、業界最高水準のセキュリティや大変便利な内部統制機能も標準搭載しています。
各法律にも準拠した『WAN-Sign』の機能や導入効果がわかる資料を、ぜひこの機会に無料でダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
>>お問い合わせ
>>資料ダウンロード