工事請負契約書とは?作成が必要な理由や記載事項、作成時の注意点
目次[非表示]
- 1.工事請負契約書の概要
- 1.1.工事請負契約書とは?
- 1.2.工事請負契約書の役割
- 1.3.工事請負契約書の作成は義務
- 2.工事請負契約書の記載事項
- 2.1.法定記載事項
- 2.2.法定記載事項以外で記載すべき事項
- 2.3.記載が推奨される事項
- 3.工事請負契約書を作成する際の注意点
- 3.1.工事内容の変更や追加にも契約書の作成が必要
- 3.2.見積もりは内訳を詳細に記載する
- 3.3.請負代金が原価割れとならないよう注意する
- 3.4.工期の定め方が不適切にならないようにする
- 3.5.工事請負契約書には印紙を貼付しなければならない
- 4.工事請負契約書は一定の要件を満たせば電子化も可能!
建設業界で工事を受発注する際は、受注者と発注者が互いに約束を守ってトラブルを防止するために、「工事請負契約書」の作成が不可欠です。工事請負契約書には、具体的にどんな内容を記載すべきで、どのような点に注意して書類を作成すれば良いのでしょうか。
この記事では、工事請負契約書の基礎知識や、作成時の注意点を解説します。また、工事請負契約の電子化へ向けて、建設業法において適法性が確認された電子契約サービスもご紹介しますので、契約業務のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。
工事請負契約書の概要
初めに、工事請負契約書の概要を解説します。書面の役割や法律におけるルールなどを改めて確認してみましょう。
工事請負契約書とは?
工事請負契約書とは、工事の発注者(=施主)と受注者(=施工業者)が締結する契約書です。基本的に、発注者は完了した工事に対して報酬を支払うこと、受注者は工事を完了して引き渡すことを契約します。具体的には、建物を新築するケース、建物を増改築するケース、建物を修繕・リフォームするケースなどで工事請負契約書が用いられます。
工事請負契約書の役割
工事請負契約書には、発注者・受注者の間で契約内容を明確にして、工事に関するトラブルを防止する重要な役割があります。工事の受発注時には、両者の認識の違いにより「注文した内容と仕様が違っている」「工事が完了したのに報酬が支払われない」といったトラブルが懸念されます。そのため、契約内容を書面に明記して双方で確認し、契約を締結する必要があるのです。
工事請負契約書の作成は義務
工事請負契約を締結する場合は、必ず工事請負契約書を作成しなければなりません。作成の義務については、建設業法第19条第1項で以下のように定められています。
(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
【引用】建設業法(e-Gov法令検索)
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
万が一、工事請負契約書を作成しない場合は、法令に違反していると見なされるため注意が必要です。違反すると国土交通大臣・都道府県知事から指導を受ける可能性があります。さらに、指示に従わない悪質なケースでは、営業停止処分を受けたり、建設業許可を取り消されたりするおそれがあります。
工事請負契約書の記載事項
ここでは、工事請負契約書に記載すべき内容をご紹介します。書類を作成する際は、法定記載事項やその他に必要な事項を抜け漏れなく記載しましょう。
法定記載事項
工事請負契約書を作成する際、前述した建設業法第19条第1項で記載が義務づけられている事項があります。以下では、工事請負契約書に記載すべき事項の概要を一覧形式でまとめています。これらの内容は法律で記載が必須となっているので、契約書を作成する際は建設業法を参照の上で該当の事項を必ず記載しましょう。
【工事請負契約書に記載すべき事項】
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項
【参考】建設業法(e-Gov法令検索)
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
法定記載事項以外で記載すべき事項
前述した法定記載事項のほかに、一般的に工事請負契約書へ記載したほうが良いとされているのが「現場請負代理人の選定」や「一括下請負の定め」などです。
現場請負代理人は、工事現場の取り締まりなど、施工に関する一切の事務を処理する代理人です。建設業法において、現場請負代理人を設置する場合の権限や、発注者が現場請負代理人へ申し出を行う場合の方法などを、書面で通知する必要があるとされています。現場請負代理人を設置する場合は併せて記載しましょう。
また、建設業法では原則として一括下請負が禁止されていますが、発注者から書面で承諾を得た場合に限り可能とされています。そのため、場合によっては一括下請負の定めについて記載する必要があります。
記載が推奨される事項
このほかに、工事請負契約書には「反社会勢力排除条項(=反社会勢力ではないことなどを示す条項)」や「秘密保持条項(=秘密情報を保護するための条項)」などを記載する場合があります。受発注に際してトラブルを防ぐために、必要に応じてこれらの事項も含めるのが望ましいでしょう。
工事請負契約書を作成する際の注意点
最後に、工事請負契約書を作成する際の注意点をお伝えします。以下のポイントに注意して適切に契約を締結しましょう。
工事内容の変更や追加にも契約書の作成が必要
工事内容が変更となった場合や、追加工事が発生した場合は、改めて工事請負契約書を作成する必要があります。追加変更においても発注者・受注者の認識の違いによるトラブルが懸念されるため、小規模な追加変更であったとしても、その都度必ず書類を作成しましょう。
見積もりは内訳を詳細に記載する
工事請負契約書と併せて注意したいのが、正確な見積書の発行です。見積もりには工事の完了までに必要な全ての費用を記載し、かつ材料・寸法・数量・単価などの内訳を明記しましょう。その際、「工事一式」と記載するのはトラブルにつながりかねないためNGです。
請負代金が原価割れとならないよう注意する
発注者が取引上の強い立場を利用して不当に低い請負代金で工事請負契約を強いることは、建設業法で禁止されています。受注者の原価割れが懸念されるような取引は避けなければなりません。
工期の定め方が不適切にならないようにする
請負代金の例と同様に、発注者が著しく短い工期で工事請負契約を強いることも、建設業法で禁止されているため注意しましょう。工期は一般的に必要とされる期間の範囲で検討し、受注者の過剰な負担が生じないようにする必要があります。
工事請負契約書には印紙を貼付しなければならない
工事請負契約書は課税文書であり、契約金額が1万円以上の場合は収入印紙を貼付する必要があります。なお、2014年4月1日から2027年3月31日までの期間は、工事請負契約書を含む特定の契約書の印紙税額が軽減される点を押さえておきましょう。例えば、契約金額が100万円超200万円以下の工事請負契約書の場合、通常は400円の印紙税額が軽減され200円となります。
【参考】No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置(国税庁)
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
工事請負契約書は一定の要件を満たせば電子化も可能!
ここまで、工事請負契約書の基礎知識や、作成時の注意点などを解説しました。工事請負契約書には、工事に関する契約内容を明確化し、両者のトラブルを防止する重要な役割があります。ここまでご紹介した情報を参考に、書類に必要な記載事項を漏れなく盛り込み、適切な方法で作成しましょう。
なお、工事請負契約書は相手方の承諾と一定の要件を満たせば電子契約による締結が認められている書類です。建設工事請負契約書を電子化すると、業務効率化の効果が期待できます。その際は、見読性(=速やかに表示できる)・原本性(=改ざん防止の措置を取る)・本人性(=本人確認ができる措置を取る)などの要件を満たしたシステムを選ぶ必要があります。
電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」はグレーゾーン解消制度を活用し、建設業法施行規則第13条の4に規定する「技術的基準」を満たし、適合することを国土交通省に確認済みのサービスです。建設工事請負契約にも安心してご利用いただけます。建設業界で、建設工事に関わる契約業務を電子化するなら、高水準のセキュリティと低コストを実現させた「WAN-Sign」をおすすめします。
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