法務省が指定する電子証明書とは?商業・法人登記のオンライン申請について解説します
(更新日:2024年5月29日)
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2020年7月6日により、電子契約サービス「WAN-Sign」を通して使用されたGMOグローバルサイン社発行の電子証明書が、商業・法人登記のオンライン申請に利用可能な電子証明書として追加されました。
出典:法務省HP 商業・法人登記のオンライン申請についてより
そもそも法務省が指定する商業・法人登記に利用可能な電子証明書とは何なのでしょうか。今回はそんな商業・法人登記のオンライン申請時の電子証明書について解説していきます。
商業・法人登記とは?
まず "登記"について説明します。登記とは日本の行政上の仕組みの一つで、個人や法人が持つ権利や義務などを公示するための制度です。この登記には不動産登記、商業登記、法人登記、債権譲渡登記などがあり、それぞれに法律が定められています。
今回解説をする商業登記と法人登記についてですが、時に一括して法人登記(会社登記)などと呼ばれますが、厳密には違うものになります。
商業登記とは株式会社,合名会社,合資会社,合同会社などの営利目的の企業に対し、その法人名称や所在地、役員の氏名などを商業登記簿に記載することで一般に公示する制度です。民法、商法などによって規定されています。
対して法人登記は一般社団法人、一般財団法人、医療法人社団、宗教法人、学校法人などの会社以外の様々な法人の設立において必要となる登記です。こちらは民法、法人法などによって規定されております。
この登記申請を行うと、法務局の審査を経て登記簿謄本に記録されていきます。この情報は申請すればだれでも閲覧が可能なため、取引を行う相手方が安全性を確認する手段として活用されます。
また登記を行うことで、企業側には登記事項証明書が法務局より発行されます。この登記事項証明書がないと法人名義の銀行口座や各種税務手続きが行えないため、法人活動を行う上では必要な証明書となります。
登記申請については法務局HPにて登記申請書と記載事項について記載されておりますのでこちらをご覧下さい。また申請についての相談は,会社・法人の本店又は主たる事務所を管轄する法務局で受け付けています。
今までの登記のオンライン申請方法について
この商業・法人登記については上記に記載した申請書を管轄する法務局に直接書類申請しに行く方法と、オンライン申請と2つございます。
オンライン申請方法については法務省ホームページより商業・法人登記について想定される事例を基に申請方法を記したマニュアルがあります。
しかし実際にこのマニュアルにない入力が必要になる場合もあるため、管轄する法務局で実際の作業を確認することをお勧めしています。
また登記は設立時に申請するだけでなく、登記されている事項に変更が発生したときも、必ず登記変更申請が必要になります。
さて、このオンライン申請をする場合、作成した申請書の他に根拠となる添付書面を求められます。ここでいう添付書類とは、本店所在地の変更や取締役の変更などの決議した取締役会議事録などが該当します。(商業登記法46条2項)この添付書類には申請人(その代理人)や作成者の電子署名を使用する必要があります。この使用できる電子証明書について法務局ホームページには以下のように記載されています。
【電子証明書の有効性に関する注意事項】
1 申請書情報及び取下書情報にされた電子署名及び電子証明書については,申請人等が登記・供託オンライン申請システムに,これらの情報を送信した後に署名検証及び有効性確認を行うこととなります。そのため,登記・供託オ ンライン申請システムに,これらの情報を送信する時点(送信ボタンを押す時点)において電子証明書が有効でない 場合には,エラーとなり,登記の申請をすることができません。
2 補正情報にされた電子署名の電子証明書については,その電子証明書が既に失効している場合であっても,申請 書情報と併せて提供された電子証明書と同一のものであるときは,有効な電子証明書の提供があったものとして取り 扱います(ただし,補正の内容が電子証明書の失効に関するものでない場合に限ります。)。
3 委任状情報にされた電子署名の電子証明書については,既に無効となった電子証明書を登記・供託オンライン申 請システムに送信した場合であっても,エラーとはなりません。しかし,委任状情報にされた電子署名の電子証明書 は,その性質上,申請書情報にされた電子署名の電子証明書と同じ取扱いをする必要があります。そのため,登記・ 供託オンライン申請システムが,これらの情報を受信する時点において有効な電子証明書が提供されていない場合には、商業登記法第24条第7号に基づく却下の対象となります。
4 添付書面情報(委任状情報を除きます。)にされた電子署名の電子証明書については,その情報に電子署名を 行った時点において,有効なものであれば,有効な電子証明書の提供があったものとして取り扱います。
出典:法務省HP「商業・法人登記のオンライン申請について」より
つまりどの電子証明書でも良しというわけではなく、法務省が指定した電子証明書による電子署名でなければならないのです。
これからの登記のオンライン申請について
しかし2020年7月6日法務省が指定する商業・法人登記のオンライン申請時に必要な電子証明書として、「WAN-Sign」を通して使用されたGMOグローバルサイン社発行の電子証明書が追加され、商業・法人登記のオンライン申請にご利用いただけるようになりました。
ただし、登記の際の取締役会議事録等の添付書類への電子署名については以下のようになっているため留意しておく必要があります。
【書面では実印が必要な場合】
商業登記電子証明書、マイナンバーカードの署名用電子証明書又は法務大臣が定める認定認証業務の電子証明書のいずれかによる電子署名が必要
【書面では認印でよい場合】
立会人型電子署名等であって法務大臣が定める電子証明書でよい(※WAN-Signはこちらに該当)
商業登記のよくある例として、代表取締役就任の登記の際に添付する取締役会議事録が挙げられますが、代表者の出席の有無により必要な電子署名が異なってきます。
代表者が出席した場合は、代表者のみが商業登記電子証明書、マイナンバーカードの署名用電子証明書又は法務大臣が定める認定認証業務の電子証明書のいずれかによる電子署名を行えば、他の役員は立会人型等の法務大臣が定める電子署名(WAN-Signなど)の利用も可能です。
代表者が欠席等で電子署名しない場合は、出席者全員において商業登記電子証明書、マイナンバーカードの署名用電子証明書又は法務大臣が定める認定認証業務の電子証明書のいずれかによる電子署名が必要になってきます。
電子化を検討する場合は、必要な電子証明書について事前にご確認ください。
>>電子署名とは?導入のメリット・デメリットと必ず知るべき注意点
何故電子署名が必要なのか
元々会社登記事項に変更が生じた場合は、必ず登記内容を変更する手続きをしなければいけません。この手続きについては期日なども設けられており、これを過ぎた場合は過料などが科せられます。そのため即座に変更手続きをしなければなりません。
しかしこの変更内容が誰による申請なのか、送信されたデータ(申請書や添付書類)が改ざんされていないかを確認するために、法務省により定められた電子証明書サービスの利用が必要となります。
電子証明書による電子署名の非改ざん性についてはこちらで詳しく掲載しております。
オンライン申請手続を利用する際の注意点
商業登記電子証明書による電子署名を使用する必要がある
WAN-Signで作成した取締役会議事録を商業・法人登記のオンライン申請で利用する際には、商業登記電子証明書による電子署名を使用する必要があります。方法については法務省よりガイドを発行しておりますのでこちらをご覧ください。
またこの電子署名を使用するためには法務省ホームページで申請用総合ソフトを使用する必要があります。
※2021年2月15日より、登記の申請や印鑑証明書の請求を行う際に、商業登記電子証明書だけでなく、マイナンバーカードに格納した公的個人認証サービスの電子証明書なども使用することができるようになっています。詳しくは法務省サイトをご確認ください。(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00070.html)
引き続き取締役個人の実印または指定公証人電子証明書が必要なケースがある
申請書面の中ではこれまでどおり取締役個人の実印または指定公証人電子証明書提出が必要となるケースがあります。
- 添付書面情報作成者が印鑑提出者(実印登録をする会社の代表取締役)でない場合であってオンライン添付書面に市町村の印鑑証明書が必要とされているもの
- 添付書面に認証者の認証が必要とされている場合の認証者に関するもの
これの具体的な書類例としては下記があげられます。
- 代表権を持つ取締役になる際の就任承諾書
- 代表権を持つ取締役を変更する際、新しい代表者を選任したことを証する書面
つまり法人の代表が変わる場合は従来の運用通りの申請方法になります。詳しくは管轄する法務局へ問い合わせください。
最後に
以前当ブログでは、2020年5月29日付の法務省の新見解として取締役会議事録の電子化が簡易になった一方で、登記申請を必要とする内容の決議があった取締役会議事録を添付資料として利用できない問題があると紹介していました。(詳しくはこちら)
今回はまさにこの問題を解決し、より一層電子契約を利用しやすい環境が整いっていると実感しています。現在新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにリモートワークを推進する企業が多い中、一つでも押印のための出社せざるを得ないケースが解消されたことは非常に喜ばしいことです。
この機会に取締役会議事録を電子化したいとお考えの方はぜひ弊社へお問い合わせください。