リスクマネジメントとは?具体例と上手に進めるためのポイント
目次[非表示]
- 1.リスクマネジメントの基礎知識
- 1.1.リスクマネジメントとは?
- 1.2.リスクマネジメントの目的
- 1.3.リスクマネジメントを行うプロセス
- 2.リスクマネジメントの具体例
- 3.リスクマネジメントを上手に進めるポイント
- 3.1.組織全体で取り組む
- 3.2.定期的に検証と見直しを行う
- 3.3.マニュアル化する
- 3.4.事実と判断の違いを明確化する
- 4.まとめ
企業を取り巻くリスク因子は増え続ける一方です。地震や台風など人間の力ではリスクコントロールできない災害に加え、社内で発生する労働災害や情報漏洩など、人為的に引き起こされるものもあります。すべてのリスクを回避することが不可能である以上、企業は「リスクマネジメント(リスク管理)」を心がけるべきです。
ここでは、リスクマネジメントに関する基礎知識を紹介し、具体例やリスクマネジメントを上手に進めるポイントについて解説します。
リスクマネジメントの基礎知識
最初にリスクマネジメントとは何か、その目的とリスクマネジメントを行う4つのプロセスについて解説します。
リスクマネジメントとは?
中小企業庁によるとリスクマネジメント(リスク管理)とは、「リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失等の回避又は低減を図るプロセスをいい、企業の価値を維持・増大させていくために、経営上の障壁となるリスク及びそのリスクが及ぼす影響を正確に把握し、事前に対策を講じることで危機発生を回避するとともに、危機発生時の損失を極小化するための経営管理手法」と説明されています。
リスクマネジメントの目的
リスクマネジメントの最大の目的は、万が一問題が発生しても事業を継続できるようにすることです。事業を継続できるかは企業の直接的な売上につながります。また、一つの企業の事業がストップしてしまえば、取引先や顧客など、幅広い範囲で社会にも影響を与えます。
投資家としては投資先を検討する上で、そうした社会的リスクにどれだけ配慮し、前もってリスクマネジメントをしているかに注目します。そのため、リスクマネジメントを怠っている企業は資金調達が困難になり、企業価値やブランド力も低下する可能性が高くなります。
リスクマネジメントを行うプロセス
一般的にリスクマネジメントは「リスクの特定」→「リスクの分析」→「リスクの評価」→「リスク対策の実施」というプロセスを経て行われます。以下でそれぞれのステップについて解説します。
リスクの特定
最初のステップはリスクを特定することです。そのためには想定されるあらゆるリスクを洗い出さなければなりません。災害や事故、情報漏洩などに加え、株価下落などの財務リスクや、リストラなどの労務リスク、為替変動などの経済リスク、訴訟リスクなど、さまざまな面が含まれます。
ブレインストーミングの形でとにかく思いつくものをどんどん挙げていき、リストアップしていきましょう。この際、リスク管理部門のように特定の部門だけに頼らず、幅広い部署から想定されるリスクを挙げてもらうほうが想定される幅広いリスクを拾えるでしょう。このステップを実施するにあたっては、「考えすぎ」「大袈裟」「あり得ない」などと考えないようにしてください。
リスクの分析
リスクを洗い出したら、次はその一つひとつについて深く分析していきます。具体的にはそれぞれのリスクが顕在化したときの「影響の大きさ」と「発生確率」を可能な限り定量化していきましょう。
中には「顧客からの信頼失墜」のように定量化が難しいリスクもあります。そうだとしても、各リスクを関係者でできるだけ具体的に分析することで、重要度や対策の優先度が明確になってきます。
リスクの評価
リスクを分析したら、結果を評価し、可視化します。例えば、「影響の大きさ」をX軸、「発生確率」をY軸にとって、個々のリスクをマップ上にプロットしていきます。その結果、リスクに対する対応の優先順位が明らかになります。
リスク対策の実施
リスク対応の優先順位が明らかになったら、実際にリスク対策を実施していきます。一般的に、リスク対策には以下の4つがあるといわれています。
リスク対策の種類 |
内容 |
回避 |
リスクに対して前もって対策を講じることでリスク発生の確率を低くする。
(具体例)情報漏洩に備えて、情報を暗号化して保管しておく、など。
|
低減 |
リスクが発生したときの影響を少なくする。
(具体例)交通事故に備えて、シートベルトやチャイルドシートを使用する、など。
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移転 |
リスクが起きたときの影響を第三者に移すこと。
(具体例)サイバー攻撃による被害を保険で補填したり、損害賠償をする、など。
|
受容 |
リスクを許容範囲として受容すること。 |
リスクマネジメントの具体例
ここでは、リスクマネジメントの具体例について、さらに掘り下げて解説します。企業で起こり得るリスクは、偶発的な事故や人為的なミスによって起こる「純粋リスク」と、政治や経済状況等の環境変化によって起こる「投機的リスク」があります。それぞれの具体例を挙げます。
純粋リスクの場合
リスクの種類 |
具体例 |
自然災害 |
地震、洪水、台風、竜巻、津波など |
事故 |
火災、交通事故、労働災害、製品事故など |
事件 |
テロ、盗難、情報漏洩、不正行為など |
以上のような純粋リスクに対するリスクマネジメントの例として、BCP(事業継続計画)などの災害対策(リスク低減対策)や、損害保険への加入、緊急時対応計画の策定などが挙げられます。
投機的リスクの場合
主な投機的リスクの具体例として、事業投資、新商品開発、海外進出、金融商品投資などが挙げられます。これらのリスクに対するリスクマネジメントの例としては、事業計画の策定、市場調査、リスク分散、専門家の助言などがあります。
リスクマネジメントを上手に進めるポイント
どの企業もリスクマネジメントが重要であることは分かっています。それでも、なかなか具体的な対策が進まないのは何からどのように手を付けたら良いのか具体的なイメージが沸かないからでしょう。ここでは、リスクマネジメントを上手に進める4つのポイントをご紹介します。
組織全体で取り組む
1つ目のポイントは企業全体でリスクマネジメントに取り組むことです。前述したようなリスクの洗い出しについても、特定の部署だけで行おうとすると、どうしても想定されるリスクが狭められしまい、漏れや抜けが生まれてしまいます。また、組織全体で進めることで、誰もがリスクマネジメントを「自分事化」できます。
定期的に検証と見直しを行う
2つ目のポイントは定期的に検証と見直しを行うことです。リスクの発生確率や影響の大きさは刻一刻と変化します。例えば、特定エリアの災害リスクも時の経過とともに変化します。対策の精度を高めるため、検証と見直しを繰り返していきましょう。
マニュアル化する
3つ目のポイントは、マニュアル化です。リスクマネジメントで大切なことは、従業員がリスクマネジメントに対して同じ意識を持ち、誰が行っても同じ効果が出るようにすることです。マニュアルがなければ、対応が属人的になりますし、緊急時に何をすれば良いのか迷ってしまい、対応が遅れてしまう可能性もあります。
事実と判断の違いを明確化する
4つ目のポイントは、リスク対策を適切に評価するため、起こった事実と実施した判断の違いをしっかり分けることです。こまめに評価を繰り返すことで、事実と判断の違いを見分けられるようにしましょう。
まとめ
先述したとおり、リスクマネジメントは「リスクの特定」「リスクの分析」「リスクの評価」「リスク対策の実施」という4つのプロセスを経て行われます。リスク対策を効果的に進めるために、特定の部署だけでなく、組織全体で行い、すべての従業員が自分事としてとらえるようにしましょう。
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