アルバイトにも雇用契約書は必要?記載項目と作成時の注意点は?
目次[非表示]
- 1.アルバイトにも雇用契約書は必要か?
- 1.1.そもそも雇用契約書とは?
- 1.2.アルバイトの雇用契約書を作成する必要性
- 1.3.雇用契約書と労働条件通知書の違い
- 2.雇用契約書の記載事項
- 2.1.絶対的明示事項
- 2.2.相対的明示事項
- 2.3.パートタイム・有期雇用労働法によりアルバイト向けに明示が義務づけられている記載事項
- 2.4.2024年4月の労働基準法施行規則改正で追加された記載項目
- 3.アルバイト向けの契約書を作成するにあたっての注意点
- 3.1.2部作成し、1部は保管、1部はアルバイトスタッフに渡す
- 3.2.試用期間中であっても雇用条件を書面で取り交わす
- 3.3.解雇にあたってのルールを確認する
- 3.4.記載項目に漏れがないか確認する
- 3.5.正社員との不合理な格差を設けない
- 4.まとめ
企業がアルバイトスタッフを採用し雇用契約を締結するときは、「雇用契約書」の作成が推奨されます。その際は、法的に交付が必須である「労働条件通知書」の役割を兼ねた、「労働条件通知書兼雇用契約書」が用いられるケースが多いです。
この記事では、アルバイトスタッフの採用における雇用契約書の必要性や、必要書類の記載項目、作成時の注意点について解説します。企業の人事・労務・契約業務のご担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
アルバイトにも雇用契約書は必要か?
初めに、アルバイト雇用の労働契約における「雇用契約書」の必要性について解説します。使用者は必要書類を改めて確認し、法的に適切な手続きを行いましょう。
そもそも雇用契約書とは?
「雇用契約書」とは、労働者と雇用主が合意した雇用契約の内容を証明する書類です。「民法」の第623条では、雇用について以下のように定められています。法律上は、当事者間の合意があれば契約書を締結しなくても契約が成立するとされています。
(雇用)
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
【出典】「民法(明治二十九年法律第八十九号)」(e-Gov 法令検索)
アルバイトの雇用契約書を作成する必要性
前述した通り、当事者間で雇用の合意があれば、アルバイトの雇用契約書を締結しなくても雇用契約が成立するとされています。法的に書類の作成は義務ではありません。ただし、アルバイトを雇用する際は、トラブル回避のためにも、書面の作成が推奨されます。
一方、アルバイトを雇用する際に文書での明示が法的に義務づけられている書類もあります。労働者を雇用する場合は、アルバイト・パート・正社員などの雇用形態を問わず、「労働条件通知書(雇い入れ通知書)」の交付が必須です。そのため、多くの会社では雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」が一般的に用いられています。
労働条件通知書とは、労働者の労働条件を明示する書類です。「労働基準法」の第15条および「労働基準法施行規則」の第5条では、労働条件通知書の交付義務について以下のように定められています。万が一、明示された労働条件と実際の就労状況に相違がある場合、労働者は労働契約を解除できる決まりとなっています。
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
【引用】「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」(e-Gov 法令検索)
第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第一号の二に掲げる事項については期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
【引用】「労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)」(e-Gov 法令検索)
雇用契約書と労働条件通知書の違い
「雇用契約書」と「労働条件通知書」は、それぞれ役割が異なります。「雇用契約書」には雇用契約への合意を証明する役割があり、「労働条件通知書」には具体的な労働条件を明示する役割があります。また、雇用契約書の締結が任意であるのに対して、労働条件通知書は法的に文書での明示が義務づけられている点も大きな違いです。
雇用契約書の記載事項
前述した通り、アルバイトを雇用する場合は「労働条件通知書」の交付が必須となります。ここでは、多くの会社で採用されている「労働条件通知書兼雇用契約書」の記載事項をご紹介します。
絶対的明示事項
絶対的明示事項とは、労働条件の中でも必ず明示すべき事項のことです。書面の交付による明示が求められています(ただし、昇給に関する事項のみ口頭の明示でもよいとされています)。「労働条件通知書兼雇用契約書」のひな形を作成する際は、以下の事項を必ず盛り込みましょう。
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相対的明示事項
相対的明示事項とは、必ず書面で明示しなければならない労働条件ではないものの、使用者がその内容について定めている場合は明示が義務付けられている事項のことです。なお、これらの明示は口頭の明示でもよいとされています。以下に加えて、自社の業務において必要な事項を盛り込む場合もあります。
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パートタイム・有期雇用労働法によりアルバイト向けに明示が義務づけられている記載事項
「パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」では、アルバイトを雇用する際に書面によって以下の事項を明示するよう義務づけられています。なお、ここでいう相談窓口とは、パートタイム労働者の雇用管理の改善をはじめとした相談に対応する窓口のことです。
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2024年4月の労働基準法施行規則改正で追加された記載項目
「労働基準法施行規則」の改正にともない、2024年4月以降は労働条件の明示事項に以下の項目が新たに追加されました。これらの項目は明示するタイミングにも決まりがあります。例えば、「就業場所・業務内容の変更の範囲」はすべての労働者が対象となり、労働契約を締結するタイミングや、有期労働契約を更新するタイミングで明示が必要です。
<すべての労働者に対する明示事項>
<有期雇用契約労働者に対する明示事項>
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アルバイト向けの契約書を作成するにあたっての注意点
アルバイト雇用のために契約書を作成する場合は、書き方や契約締結時のポイントに注意しておきましょう。最後に、アルバイト向けの契約書を作成するにあたっての注意点をお伝えします。
2部作成し、1部は保管、1部はアルバイトスタッフに渡す
「雇用契約書」や「労働条件通知書兼雇用契約書」などの書類を発行したときは、2部を作成して、1部は社内で保管し、もう1部はアルバイトスタッフに交付しましょう。重要な書類であるため両者で保管するのが望ましいとされています。
試用期間中であっても雇用条件を書面で取り交わす
試用期間中の従業員も、法律上はすでに雇用契約を締結していると見なされるため、雇用条件を書面で取り交わす必要があります。そのため、試用期間前に必要書類を発行して手続きを進めておきましょう。
解雇にあたってのルールを確認する
採用したアルバイトスタッフの勤務態度に問題があった場合、解雇や懲戒処分を行うには、事前に「雇用契約書」や「労働条件通知書」にルールを明記しておく必要があります。あらかじめ解雇に関するルールを取り決めて、書類に明記しておきましょう。
記載項目に漏れがないか確認する
「雇用契約書」や「労働条件通知書兼雇用契約書」のひな形を作成したら、記載項目に漏れがないかチェックしましょう。特に、「労働条件通知書」の絶対的明示事項のような法的に記載が必須の項目については、違反がないよう記載を徹底することが大切です。
正社員との不合理な格差を設けない
アルバイトと正社員との間に不合理な待遇差を設けることは、「パートタイム・有期雇用労働法」により、中小企業も含めて禁止されています。アルバイトスタッフを採用する際は、労働条件が公正であるかを検討し、不合理な待遇差の解消に努めましょう。
まとめ
ここまで、アルバイトスタッフの採用における雇用契約書の必要性や、必要書類の記載項目、作成時の注意点についてお伝えしました。近年は、アルバイトを採用する度に発生する手続きを効率化するために、契約業務の電子化を推進する企業が多くなっています。
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