製造委託とは?メリットやOEM・ODMとの違い、製造委託契約書の記載事項は?

目次[非表示]

  1. 1.製造委託の概要
    1. 1.1.「製造委託」とは?
    2. 1.2.製造委託の具体例
    3. 1.3.製造委託と他の用語との違い
  2. 2.製造委託のメリット
    1. 2.1.設備投資やコストを抑えられる
    2. 2.2.生産量を柔軟に調整しやすい
    3. 2.3.委託先企業の専門性を活用できる
    4. 2.4.スタッフ育成の手間を削減できる
    5. 2.5.コア業務へ集中できる
  3. 3.製造委託契約書の主な記載事項
  4. 4.製造委託契約書を作成・締結する際の注意点
    1. 4.1.製造ノウハウの流出と蓄積不足を防ぐ
    2. 4.2.品質管理の基準を明確にする
    3. 4.3.委託先との競合関係を避ける
    4. 4.4.偽装請負を回避する
    5. 4.5.下請法(下請代金支払遅延等防止法)を遵守する
  5. 5.まとめ

製造委託とは?メリットやOEM・ODMとの違い、製造委託契約書の記載事項は?

製造委託は、近年のビジネスシーンで多くの企業に活用されている手法です。製品の仕様を指定して製造を依頼するため、社内で製造する場合と比べて負担を抑えながら製品化が期待できます。その際、委託者・受託者間で製造委託契約を電子的に締結すれば、スムーズに手続きを進めることが可能です。

この記事では、製造委託に関する基礎知識や、製造委託契約書の記載事項などを解説します。また、製造委託契約の締結を電子化できる便利なサービスもご紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。

製造委託の概要

初めに、「製造委託」に関する基礎知識を解説します。製造委託の具体例や、似ている用語との違いまで改めて確認してみましょう。

「製造委託」とは?

「製造委託」とは、委託者が製品の仕様などを指定したうえで、工場などの受託者へ製造・加工を依頼することを指します。製造委託は一般的な既製品の注文とは異なり、委託者が製品の規格・形状・デザイン・品質などを詳細に指定して製造を依頼するという特徴があります。

製造委託の具体例

具体的に、ビジネスシーンにおける以下のような事例は製造委託に該当します。

  • 家電メーカーのA社が部品の規格を決めて、部品メーカーのB社へ製造を委託するケース
  • アパレルブランドのC社がデザインした衣料品の製造を、D社の縫製工場へ委託するケース
  • スーパーマーケットのE社が、プライベートブランドの菓子レシピに基づいた製造をF社の食品工場へ委託するケース

こうした場面では、企業間で製造委託契約書を締結する場合があります。

製造委託と他の用語との違い

製造委託とOEMの違い

「OEM(Original Equipment Manufacturer)」は製造委託の一形態です。委託者が仕様を指定し、完成した製品は委託者のブランドで販売されるという特徴があります。

製造委託とODMの違い

「ODM(Original Design Manufacturer)」は、製造委託の一形態です。製品の設計から製造までを受託者が担うため、委託者側にノウハウがなくても製造が可能となります。また、完成した製品は委託者のブランドで販売されます。

製造委託と外注の違い

「外注」とは、製造委託を含め、外部の事業者へ自社の業務の一部または全部を発注することを広く指す用語です。後述する「業務委託」や「製造請負」も外注に含まれます。

製造委託と業務委託の違い

「業務委託」とは、外部の事業者へ特定の業務の一部または全部を委託することです。製造委託と同様に外注に含まれますが、業務委託では業務の遂行に対して報酬が支払われる点に違いがあります。

製造委託と製造請負の違い

「製造請負」とは、外部の事業者へ製造業務の一部または全部を委託することです。製造請負では、成果物の完成に対して報酬が支払われ、受託者は完成させる責任を負います。

製造委託のメリット

製造委託を利用すると、委託者のビジネスには以下のように多くのメリットがあります。委託を検討している事業者の方は、該当するメリットをチェックしておきましょう。

設備投資やコストを抑えられる

製造委託を利用する場合、委託者側は社内に製造のための設備や人員を確保する必要がありません。製造にかかる固定費を変動費化して、コスト削減や効率化につなげられることが大きなメリットです。

生産量を柔軟に調整しやすい

製造委託では、需要に応じて自社製品の生産量を柔軟に調整することが可能です。突発的な売上増加や繁忙期にも対応しやすくなります。

委託先企業の専門性を活用できる

製造受託の経験が豊富な受託先に依頼することで、外部企業の技術やノウハウを有効活用して製品化を実現できます。技術力の高い受託者との連携によって品質向上が期待できるでしょう。

スタッフ育成の手間を削減できる

製造委託を利用すれば社内で製造スタッフを育成する手間を削減できます。人材の育成や確保が難しい状況下でも、外部企業の熟練したスタッフに製造を任せることが可能です。

コア業務へ集中できる

製品の製造を外部企業へ委託すれば、社内のリソースをコア業務へ集中させられるメリットがあります。人材や資金をコア業務に投じることで、収益アップにつなげられる可能性があります。

製造委託契約書の主な記載事項

「製造委託契約書」とは、製造委託における委託者・受託者間の取引の約束を記載する重要な書類です。契約書には、主に以下のような項目を盛り込みます。

【製造委託契約書の主な記載事項】

  • 委託する業務の範囲
  • 原材料の支給
  • 製造物の仕様と品質基準
  • 検品方法と検収
  • 納期と納品場所
  • 委託料と支払方法
  • 再委託の可否
  • 知的財産権の取り扱い
  • 競業避止条項
  • 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
  • 損害賠償
  • 不可抗力による免責
  • 契約期間と解除条項
  • 準拠法と合意管轄

なかでも製造委託で製品の品質を保つうえで重要なのは、「原材料の支給」「製造物の仕様と品質基準」「検品方法と検収」などの項目です。これらの項目において書面での指定が曖昧な状態になっていると、製品の品質低下をはじめとしたトラブルが懸念されます。契約書を作成する際は、締結前に弁護士などの法律の専門家によるリーガルチェックを受けて、法的なリスクに備えるようおすすめします。

なお、継続的に製造委託するケースでは、両者の取引全体に共通する事項を定めた「基本契約書」と、個別の取引に対する事項を定めた「個別契約書」に分けて発行する場合があります。その際は、基本契約と個別契約のどちらの内容を優先させるべきか、両者で合意を形成し契約書に明記しておくことが望ましいでしょう。

製造委託契約書を作成・締結する際の注意点

製造委託契約書を作成・締結する際は、どんなポイントに注意すれば良いのでしょうか。最後に、トラブル防止の観点から注意点を解説します。

製造ノウハウの流出と蓄積不足を防ぐ

外部企業に製造を任せるにあたり、提供した情報が流出するリスクがある点や、社内に知見がたまりにくい点はデメリットです。ノウハウの流出を防ぐために、製造委託契約書には「知的財産権の取り扱い」や「再委託の可否」について明記しておくのが望ましいといえます。

品質管理の基準を明確にする

製造委託契約書を作成する際は、「原材料の支給」や「製造物の仕様と品質基準」を明確にして両者が合意するとともに、合意した内容を具体的に記載しておくことが大切です。また、不良品の発生に備えて「検品方法と検収」についても明確に規定しておきましょう。

委託先との競合関係を避ける

将来的に委託先が競合関係となることを避けるために、製造委託では適切な業者を選定することが大切です。また、場合によっては自社と同一・類似の事業を行うことを制限する「競業避止条項」を製造委託契約書に盛り込むことも検討しましょう。

偽装請負を回避する

偽装請負とは、請負契約を締結していながら実態としては労働者派遣契約となっている不正のことを指します。例えば、委託者側が受託者側のスタッフへ直接的に指示を出すと、偽装請負と見なされるおそれがあるため注意しましょう。

下請法(下請代金支払遅延等防止法)を遵守する

製造委託は、「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」の対象となる取引です。他社へ製造のほか加工などを委託する際は、下請法のルールを遵守して発注するよう努めましょう。なお、「下請法」の第2条において製造委託は以下のように定められています。

(定義)
第二条 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。

【引用】「下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)」(e-Gov法令検索)

まとめ

ここまで、製造委託に関する基礎知識や、製造委託契約書の記載事項などをお伝えしました。製造委託を利用すれば、委託者は設備投資や製造コストの負担を抑えながら、外部企業の技術やノウハウを有効活用した製品化を実現できます。その際、品質維持やトラブル防止の観点から、適切な製造委託契約書を作成し締結することが大切です。

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