内部統制システムとは?基礎知識と構築するメリット、整備のポイント
目次[非表示]
- 1.内部統制システムの基礎知識
- 1.1.内部統制システムとは?
- 1.1.1.会社法上の内部統制システム
- 1.1.2.金融商品取引法上の内部統制システム
- 1.2.内部統制システムを構築する目的
- 1.3.内部統制システムを整備する義務のある会社
- 1.3.1.会社法で定められている条件を満たす会社
- 1.3.2.金融商品取引法で定められている条件を満たす会社
- 1.4.内部統制システムで定める内容
- 2.内部統制システムを構築する主なメリット
- 2.1.不祥事の発生リスクを低減できる
- 2.2.業務効率化を図れる
- 2.3.社員のモチベーション向上が期待できる
- 2.4.対外的な会社の信頼向上につながる
- 3.内部統制システムを適切に整備するポイント
- 3.1.組織の方針や目標、構成員の役割を明確に定める
- 3.2.リスクを評価・管理する体制を整える
- 3.3.各法令で求められている要件を漏れなくカバーする
- 3.4.全従業員にシステムを浸透させる
- 3.5.弁護士に相談しながらシステムを整備する
- 4.法令遵守の義務を守るため、内部統制システムの構築は必須
IT技術が進み業務の在り方が多様化した今、内部統制システムの構築・進行が重要といえます。企業は法令に則った経営が行われるよう体制づくりが義務化されており、達成するためには内部統制システムの確立が必要です。取締役等だけではなく社員にも遵守してもらうような規程や、監査役や監査委員会など第三者からの監視や評価が得られる仕組みも確保するべきでしょう。内部統制システムの概要や盛り込むべきポイント、注意点について解説します。
内部統制システムの基礎知識
企業は法令に則って運営するよう会社法や金融商品取引法により義務付けられており、内部統制システムは義務を遂行するために必要な取り組みです。対象の企業や義務付けられている範囲について解説します。
内部統制システムとは?
企業が取り組むべき内部統制システムには、会社法上により義務付けられたシステムと金融商品取引法により義務付けられたシステムの2種類が存在します。
会社法上の内部統制システム
会社法の第三百六十二条第四項第六号により、企業は法令を遵守した運営を進めるよう義務付けられています。内部統制システムは、企業を運営していくうえで法令に即した行いや取り組みをしているかどうか、透明性を確保するために使われます。
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
出典:e-gov法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号)(取締役会の権限等)第三百六十二条第四項第六号
(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-Pa_2-Ch_4-Se_5-Ss_1-At_362)
つまり、企業が内部統制システムを設置して整備することは、会社法により義務付けられているともいえます。
金融商品取引法上の内部統制システム
金融商品取引法の第二十四条の四の四第一項に、企業は財務状況や金融取引に関する内容は、真実性や適正性を確保しつつしかるべき場所へ報告しなければならないと定められています。
※一部を抜粋しております
当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書(同条第八項の規定により同項に規定する有価証券報告書等に代えて外国会社報告書を提出する場合にあつては、当該外国会社報告書)と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。
出典:e-gov法令検索 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)(財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価)第二十四条の四の四
(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025#Mp-Ch_2-At_24_4_4)
つまり会社法における義務は業務の内容自体に対する不正を防ぐことを目的としており、金融商品取引法における義務は金融取引や財務状況などお金に関する不正を防ぐことを目的としています。
内部統制システムを構築する目的
内部統制システムの構築に着手する前に、設置する目的や達成すべき義務について把握する必要があります。
業務の有効性および効率性
業務の、企業の利益向上や目的達成につながる有効性と、短期間で達成できる効率性を高めること。
財務報告の信頼性
財務報告内容が不正に改ざんされないよう透明性や真実性を確保すること。
事業活動にかかわる法令等の順守
企業が取り組む事業や業務全般が、法令に遵守して行われるよう監視すること。
資産の保全
法令のもと、適切な方法で資産を得たり使用されたりする、または不正に搾取されないよう保全を図ること。
内部統制システムを整備する義務のある会社
会社法や金融商品取引法において、それぞれ法令を遵守するような体制の整備が義務付けられています。つまり、内部統制システムの構築と運営は義務といえます。義務の対象となる企業の特徴について解説しますが、もちろん義務の対象外とされる企業においても構築・運営は可能です。
会社法で定められている条件を満たす会社
会社法では、対象となる企業を大会社としており、定義として下記のように定めています。
六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。
ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。
出典:e-gov法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号)第一編 総則 第一章 通則
(趣旨)第二条(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-Pa_2-Ch_4-Se_5-Ss_1-At_362)
つまり企業の資産において下記にいずれかに当てはまる企業を大会社として定め、内部統制システムが義務付けられた対象であるとしています。
ー 最終事業年度にて計上した資本金が5億円以上ある
ー 最終事業年度にて計上した負債が200億円以上ある
金融商品取引法で定められている条件を満たす会社
金融商品取引法では第二十四条にて、対象となる企業の定義として「有価証券の発行者である会社」と定めています。
出典:e-gov法令検索 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)(有価証券報告書の提出)第二十四条
(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025#Mp-Ch_2-At_24)
つまり、主に上場した企業が対象となります。会社法か金融商品取引法にてどちらかに該当した場合は、内部統制システムの設置及び運営が義務付けられることになります。
内部統制システムで定める内容
内部統制システムを構築して運用する際は、定められた法令を遵守し、義務が達成されなければなりません。公益社団法人「日本監査役協会」が提示している内部統制システムの監査によれば、下記の内容を定款や基本方針に取り入れて適切に運用することとされています。
統制環境 |
取締役から経営者、従業員まで業務に対して適切に取り組む姿勢や行動を維持するための環境整備について定める |
リスク管理 |
企業の利益や目的達成のために考えられるあらゆるリスクを洗い出して分析する方法について定める |
統制活動 |
リスク管理に基づいて洗い出されたリスクに対して対応する方法について定める |
情報と伝達 |
統制活動がスムーズに遂行されるよう、他部署や子会社同士の情報伝達や連携する方法について定める |
モニタリング |
統制環境から情報と伝達までが適切に滞りなく行われているか、第三者からの目線で監視し評価するための方法について定める |
内部統制システムを構築する主なメリット
内部統制システムは企業として法令に遵守することが目的ですが、法令違反を回避すること以外にも、業務や勤めている従業員に対しても良い影響を与えます。
不祥事の発生リスクを低減できる
法令に遵守するためのルールから第三者による監視や評価の仕組みまで構築するため、不祥事を起こすリスクが大幅に減らせます。また万が一問題が生じた際も、対処法も含めてルール決めが行われておりマニュアル化されているため、被害を最小限に抑えられます。
業務効率化を図れる
内部統制システムの構築の目的の一つに「業務の有効性および効率性」があります。構築や運営を遂行するためには現状を見直す必要があり、その過程で効率化を進めるための課題や方法を理解できるため、業務効率化の向上が図れます。
社員のモチベーション向上が期待できる
内部統制システムの構築により社内の組織関係や業務の透明化が実現でき、誠実かつ公平な評価が行われます。そのため社員や使用人の企業に対する信頼性が上がり、モチベーションの向上にもつながります。
対外的な会社の信頼向上につながる
法令を遵守することに加え、各業務や事業における責任者も明確になるため、企業として社外からも信頼されます。
内部統制システムを適切に整備するポイント
内部統制システムは企業経営における土台のようなものであるため、方向性や妥協してはならないポイントを初めにおさえておく必要があります。
組織の方針や目標、構成員の役割を明確に定める
内部統制システムの全体的な方向性を定め、携わる人の役割について具体的に決めます。特に大切なことは各業務や部門における責任者の設定であり、問題が発生したときに迅速に対応し被害を最小限にとどめられます。
リスクを評価・管理する体制を整える
問題が発生した際、対応が遅れたら遅れるほど被害や損失が大きくなります。そのため、発生しうるリスクをあらかじめ洗い出しておき、評価したうえで対策方法を立案します。さらに対策方法が確立したら、実行するための責任者や体制を整え、いつでも動かせるようにしておきましょう。
各法令で求められている要件を漏れなくカバーする
各法令を遵守することは企業としての義務なので、定めた内部統制システム内に、遵守されていない法令がないかを確認します。
全従業員にシステムを浸透させる
内部統制システムは、取締役や経営管理部などのためだけではなく、すべての従業員に遵守してもらう必要があるシステムです。規程やマニュアルを完備し、全従業員が把握し認識してもらえるような体制を整えましょう。
弁護士に相談しながらシステムを整備する
法令に関することは、法律の専門家である弁護士に相談しながら作成する方法がおすすめです。遵守すべき法令がカバーできていなかったり不正が容易な抜け道があったりすれば、システムとして成立しません。作成および更新する度に弁護士に確認してもらうとよいでしょう。
法令遵守の義務を守るため、内部統制システムの構築は必須
内部統制システムは、会社法や金融商品取引法で定められている、法令に遵守する体制を整えるという義務を達成するために不可欠なシステムです。
義務付けられている対象は、資産や負債を多く持つ大会社とされていますが、社員のモチベーション向上や社外からの信頼性の向上も期待できるため、義務の対象外となっている企業も積極的に構築したほうが良いでしょう。
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