事務処理規程とは?必要になる理由とメリット、作成手順、注意点


目次[非表示]

  1. 1.事務処理規程とは何か?
  2. 2.事務処理規程が必要な理由
    1. 2.1.電子取引の保存要件のひとつであるため
    2. 2.2.システムが対応しきれないケースがあるため
    3. 2.3.システムの移行が難しくなるおそれがあるため
    4. 2.4.内部統制強化につながるため
  3. 3.事務処理規程の主なメリット
    1. 3.1.手順が明確化し、業務効率の向上につながる
    2. 3.2.責任の所在が明確になる
    3. 3.3.電子データ化の対象かどうかの判断がしやすい
    4. 3.4.業務手順を伝えやすい
  4. 4.事務処理規程の作成方法と作成する際の注意点
    1. 4.1.事務処理規程の作成方法
      1. 4.1.1.サンプルから作成する
      2. 4.1.2.税理士に相談する
    2. 4.2.事務処理規程を作成する際の注意点
      1. 4.2.1.電子データによる取引の範囲を詳細に示す
      2. 4.2.2.データの対象を詳細に示す
      3. 4.2.3.訂正や削除をする場合の条件や方法を詳細に示す
    3. 4.3.管理責任者・処理責任者を明確にし、規程に従う人の範囲も示す
  5. 5.まとめ


事務処理規程とは?必要になる理由とメリット、作成手順、注意点


電子帳簿保存法の改正により、電子取引データ保存が2024年1月から完全に義務化されました。対応策として、システムの整備などのほかに「事務処理規程(「正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規程)」を制定するという方法もあります。しかし、規程を作成する手間を考えると、本当に必要なのか、作成するメリットはあるのかなど、気になるところです。

この記事では、事務処理規程の定義、規程が必要になる理由とメリット、実際に作成する手順や注意点まで、できるだけわかりやすく解説します。


事務処理規程とは何か?

事務処理規程とは、具体的に何を定めているのでしょうか。さっそく確認していきましょう。

事務処理規程とは、電子取引データの改ざん防止のためのルールを定めたものです。なお、電子帳簿保存法の規定する電子取引データとは、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などの電子データをいい、EDI取引(EDIシステムという専用のシステムでデータをやり取りする取引方法)、インターネット等による取引(たとえばネット通販)、電子メールで請求書等をやり取りする場合なども含みます。

出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0024005-113_r603.pdf



事務処理規程が必要な理由

電子取引データの改ざん防止が目的の事務処理規程ですが、社内で注意点を共有するだけでは足りないのでしょうか。ここからは、事務処理規程が必要な理由について解説します。

主に次の4つの理由から、電子取引データ保存にあたって事務処理規程が必要になります。


電子取引の保存要件のひとつであるため

電子取引データを保存するには、法律上、「真実性」と「可視性」が確保されていることが必要とされています。

真実性の確保とは、電子取引データが完全な状態で保存され、紛失や改ざんがされていないこと、可視性の確保とは、保存された電子取引データが、いつでも検索および表示できる状態にあることです。

なお、真実性の確保のため、次の4要件のいずれかに沿って、データを保存する必要があります。


  1. タイムスタンプを付与した後、電子取引データの受け渡しをする
  2. 電子取引データの受け渡し後、速やかに(タイムスタンプ付与に関する規程を定めている場合は、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後速やかに)タイムスタンプを付与する。
  3. データの訂正・削除を行った場合に訂正・削除履歴が残るシステム、又は訂正・削除ができないシステムを利用する。
  4. 「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」(事務処理規程)を定め、その規程に沿った運用を行う


上記④のように、事務処理規程は、電子取引データの真実性確保のための保存要件の1つになっています。そのため作成する必要があるのです。


システムが対応しきれないケースがあるため

事務処理規程の作成以外の方法で真実性の確保の要件を満たそうとしても、たとえば、取引先のデータ形式が自社のシステムと合わずやり取りできない、タイムスタンプ付与のデータ形式が自社のデータすべてに対応していないなど、自社のシステムでは対応しきれないケースでは、システムの改修、新システムへの移行などが必要になります。

そうはいっても、今は経費も手間もかける余裕がないという場合に、事務処理規程で現システムの不備をカバーするという方法を採ることができます。



システムの移行が難しくなるおそれがあるため

電子帳簿保存法に対応するために新システムを導入した場合、旧システムで受け取った電子取引データを新システムに移行する必要があります。

もうひとつの要件である、「データの検索・表示をできるようにする(可視性の確保)」ためには、基本的に同じシステムでデータの授受と保存をする必要があるからです。

法律の見解では、別のシステムで授受・保存していたとしても、たとえば各データにつき保存先のシステムが明記されているというように、電子取引データが整然とした形式かつ明瞭な状態で、速やかに出力することができれば差し支えないものの、管理の不備などで保存先がバラバラになり、整然とした形式かつ明瞭な状態で、速やかに出力することができない場合は認めないとしています。

そのため、システムの移行には事務負担が増加する可能性もあり、スムーズな移行が難しくなるおそれがあります。この場合も、システム移行の不備をカバーするため、システムの導入とともに、事務処理規程を作成するのも有効です。


内部統制強化につながるため

事務処理規程は、電子取引データの改ざんや紛失を防止し、取引情報の「真実性の確保」を目的としています。そのため規程では、訂正・削除の原則禁止とともに、やむを得ない理由でデータの訂正・削除を行う場合は、「取引情報訂正・削除申請書」を管理責任者に提出するなどの詳細な処理フローを定めます。データ保存の不正処理を未然に防ぐ効果が見込めるため、内部統制の強化につながります。


出典:国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください」

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0023006-081_03.pdf

出典:国税庁「電子取引データの保存方法」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023011-012.pdf

出典:国税庁「Ⅱ適用要件【基本的事項】」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm

出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf

出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0024005-113_r603.pdf

出典:e-GOV法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」

https://laws.e-gov.go.jp/law/410M50000040043



事務処理規程の主なメリット

ここまで、事務処理規程が必要な理由を見てきました。次に、事務処理規程を策定した場合の主なメリットを紹介します。

次のとおり、規程を制定するメリットは多くあります。


手順が明確化し、業務効率の向上につながる

規程に定めることで、電子取引データの訂正・削除処理の手順が明確化し、ミスの軽減を期待できます。さらに、将来的には、業務効率の向上につながります。


責任の所在が明確になる

規程には、「管理責任者・処理責任者」を置くことを定めます(法人の場合)。さらに、訂正・削除の際の申請書提出から承認までの処理の手順も規定するため、「誰が処理したか」「誰が承認したか」といった責任の所在が明確になり、トラブルが起こった時も迅速な対応が可能になります。


電子データ化の対象かどうかの判断がしやすい

電子取引データの種類は広範囲に渡ります。そのため、認識の違いから部署によって保存しているデータの種類が異なるという事態が起こることもあります。

事務処理規程で、自社における電子取引データを具体的に定めることで、保存すべきデータが明らかになり、データ化の対象かどうかの判断がしやすくなります。


業務手順を伝えやすい

規程の整備は、業務手順の見える化につながります。そのため、異動や退職などで担当者が変わった際も、業務手順を伝えやすくなり、伝達ミスを防ぎ、説明の手間を減らすことができます。


出典:国税庁「Ⅱ適用要件【基本的事項】」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm#a023

出典:国税庁「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例)」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/word/0021006-031_d.docx

出典:国税庁「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人事業者の例)」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/word/0021006-031_e.docx



事務処理規程の作成方法と作成する際の注意点

メリットが多いことから、システム導入と並行して事務処理規程も制定すると、より安心かもしれません。ここからは、事務処理規程の具体的な作成方法と注意点を解説します。

事務処理規程を、まったくゼロの状態から作成するのは時間も手間もかかります。そのうえ、万が一法律に沿った内容でなかった場合には、法的トラブルを引き起こすきっかけにもなりかねません。リスクを回避するためには、次のようなツールや専門家の知識を積極的に活用しましょう。


事務処理規程の作成方法

サンプルから作成する

国税庁が、法人用、個人事業者用の事務処理規程のサンプルを提供しています。国税庁のサイトからダウンロードし、日付や具体的内容などを追記するなどして、自社の現状に合った規程の作成ができます。


【事務処理規程サンプル】

(法人用)

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程

(個人事業者用)

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程


税理士に相談する

自社に顧問税理士がいる場合は、顧問税理士のアドバイスを受けるという選択肢もあります。まずは社内で練った規程案をもとに事務処理規程を作成後、税理士に確認してもらうか、自社特有の事情などを盛り込んだ内容を、税理士と相談しながら作成するといった方法もあります。


事務処理規程を作成する際の注意点

次に事務処理規程作成にあたって、注意すべきポイントを紹介します。


電子データによる取引の範囲を詳細に示す

規程では、電子データによる取引の範囲を詳細に示す必要があります。社内で共通認識が醸成されていないと、保存漏れ、不要なデータの保存など、事務の混乱につながるからです。

定める際は、取引の形態をできるだけ詳細に示すことを心がけましょう。たとえば、「請求書の電子データ」だけでは、得意先と電子メールでやり取りした請求書データなのか、EDI取引での請求書データなのか、わかりません。

下記の例のように、取引で使用しているシステム名を明記するなど、詳細に記載するようにしましょう。


【規定例】

(電子取引の範囲)
第〇条 当社における電子取引の範囲は以下に掲げる取引とする。
  1. EDI取引
  2. 電子メールを利用した請求書等の授受
  3. (クラウドサービス名)を利用した請求書等の授受
  4. ・・・・・・
  5. ・・・・・・


データの対象を詳細に示す

「見積依頼情報」「納品情報」「支払情報」というように、保存の対象となるデータもすべて詳細に示すことも重要です。


【規定例】

(対象となるデータ)
第〇条 保存する取引関係情報は以下のとおりとする。
  1. 見積依頼情報
  2. 見積回答情報
  3. 確定注文情報
  4. 注文請け情報
  5. 納品情報
  6. 支払情報
  7. ・・・・・・


ちなみに、データで受け取ったクレジットカードの利用明細、出張時の交通費の明細データなども、電子取引データに該当し、後から気づいた場合は規程の改定が必要になります。

度重なる規程の改定は、事務負担の増大にもつながります。そのため、規程作成の下準備として、自社で発生している電子取引情報の洗い出しをするのも手です。その際、今は紙でも今後データ化する予定の取引方法についても、規定への盛り込みを検討しておくとよいでしょう。


訂正や削除をする場合の条件や方法を詳細に示す

電子取引データの訂正・削除は、原則禁止です。しかし、訂正・削除をする条件や方法の定め方によっては、社員に簡単に訂正・削除ができると思わせ、不正処理を誘発することもありえます。そのため、条件や方法は厳格に、かつ詳細に規定することが肝要です。

具体的には、訂正・削除をする際は、メールや口頭でのお伺いなどではなく、処理責任者が正式な申請書に記載したうえで、管理責任者に提出し、承認を得るといった手順を定めます。


【規定例】

(訂正削除を行う場合)
第〇条 業務処理上やむを得ない理由によって保存する取引関係情報を訂正または削除する場合は、処理責任者は「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、管理責任者へ提出すること。
 ① 申請日
 ② 取引伝票番号
 ③ 取引件名
 ④ 取引先名
 ⑤ 訂正・削除日付
 ⑥ 訂正・削除内容
 ➆ 訂正・削除理由
 ⑧ 処理担当者名
2 管理責任者は、「取引情報訂正・削除申請書」の提出を受けた場合は、正当な理由があると認める場合のみ承認する。
3 管理責任者は、前項において承認した場合は、処理責任者に対して取引関係情報の訂正及び削除を指示する。
4 処理責任者は、取引関係情報の訂正及び削除を行った場合は、当該取引関係情報に訂正・削除履歴がある旨の情報を付すとともに「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成し、当該報告書を管理責任者に提出する。
5 「取引情報訂正・削除申請書」及び「取引情報訂正・削除完了報告書」は、事後に訂正・削除履歴の確認作業が行えるよう整然とした形で、訂正・削除の対象となった取引データの保存期間が満了するまで保存する。



管理責任者・処理責任者を明確にし、規程に従う人の範囲も示す

トラブルが発生した時、その業務の責任の所在が曖昧だったため、解決が遅れてしまったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。このような事態を避けるため、事務処理規程には、管理責任者・処理責任者を明確にし、さらに、正社員だけなのか、契約社員やパートも含むのか、といった規程に従う人の範囲も具体的に示すようにしましょう。


【規定例】

(運用体制)
第〇条 保存する取引関係情報の管理責任者及び処理責任者は以下のとおりとする。
  1. 管理責任者 □□部〇〇課 課長(名前)
  2. 処理責任者 △△部◇◇課 係長(名前)
(適用範囲)
第〇条 この規程は、全ての役員及び従業員(契約社員、パートタイマー及び派遣社員を含む。以下同じ。)に対して適用する。


なお、管理責任者・処理責任者が変わった時など、規程の内容に変更があった場合は、規程の改定が必要です。つい改定を失念することで、いつの間にか実体の伴わない内容となってしまわないように、可能であれば、事務処理規程の定期的な内容確認をするようにしましょう。

※規定例抜粋:国税庁「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例)」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/word/0021006-031_d.docx



まとめ

事務処理規程は、電子取引データ保存の真実性確保のための要件の1つであり、システム移行に伴う様々な不具合をカバーするという点でも制定のメリットはあります。さらに、電子取引データの改ざん・削除の条件や処理手順を厳密に定めることで、不正処理の防止など内部統制の強化にもつながります。

作成するには、国税庁が提供しているサンプルを活用する方法、顧問税理士のアドバイスを受ける方法などがあり、対象となる電子取引や取引データの範囲、業務フローを出来る限り詳細に示すことが成功のコツだといえるでしょう。

電子取引データの保存義務化、さらに、2024年10月からの郵便料金の値上がりもあり、ビジネスシーンでの書類のペーパーレス化の流れはさらに加速することが予想されます。

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