株主総会とは?目的と種類、進行方法、成功のポイントを解説

目次[非表示]

  1. 1.株主総会の基礎知識
    1. 1.1.株主総会とは何か
    2. 1.2.株主総会の重要性
    3. 1.3.株主総会と取締役会の違い
    4. 1.4.株主総会の出席者
    5. 1.5.株主総会の開催時期
  2. 2.株主総会の目的と役割
    1. 2.1.経営報告と決議事項の説明
    2. 2.2.株主の意見収集とフィードバック
    3. 2.3.議決権を行使する機会の提供
  3. 3.株主総会の種類と違い
    1. 3.1.定時株主総会とは?
    2. 3.2.臨時株主総会とは?
    3. 3.3.定時株主総会と臨時株主総会の違い
  4. 4.株主総会決議の種類
    1. 4.1.普通決議
    2. 4.2.特別決議
    3. 4.3.特殊決議
  5. 5.株主総会の準備と手順
    1. 5.1.事前準備とアジェンダ(議題)の作成
    2. 5.2.会場の選定と手配
    3. 5.3.株主への案内と招集手続き
  6. 6.株主総会の進行方法と議事録の作成
    1. 6.1.株主総会の進行方法と注意点
    2. 6.2.議事録の重要性と作成方法
    3. 6.3.弁護士やALSP(代替法務サービス事業者)による運営支援
  7. 7.株主総会での質疑応答の対応
    1. 7.1.よくある質問の回答を準備しておく
    2. 7.2.質疑応答をスムーズに進めるポイントを押さえる
  8. 8.株主総会の後に行うこと
    1. 8.1.議決結果の通知と公表
    2. 8.2.適切なフォローアップ
  9. 9.株主総会を成功させる主なポイント
    1. 9.1.事前準備の徹底
    2. 9.2.コミュニケーションの強化
    3. 9.3.株主の満足度向上につながる取り組みの実施
  10. 10.バーチャル株主総会(オンライン株主総会)の概要
    1. 10.1.バーチャル株主総会の種類
    2. 10.2.バーチャル株主総会のメリット
    3. 10.3.バーチャル株主総会のデメリット
  11. 11.まとめ

株主総会とは?目的と種類、進行方法、成功のポイントを解説

株主総会は、会社の経営に関する基本方針や重要事項を決定する、会社の最高意思決定機関です。会社の所有者である株主が経営陣に対して意見を述べ、決議を行う重要な会議であるため、法令に則って適切に株主総会の運営を行わなければなりません。

近年、コーポレートガバナンス・コードの浸透やコンプライアンス体制の重要性が増していることに加え、M&A(買収・合併)の活性化、物言う株主(アクティビスト)の活動活発化、海外投資家やESG投資の増加といった環境変化があります。これにより、株主との対話の重要性はかつてなく高まっており、株主総会の運営はより一層注視されています。

この記事では、株主総会の目的や種類といった基礎知識から、株主総会の具体的な準備・進行方法、成功に導くポイントまで網羅的に解説します。また、法律の専門家が株主総会の適切な運営を支援するALSP(代替法務サービス事業者)サービスもご紹介しますので、運営に課題を感じている担当者の方はぜひ参考にしてください。

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株主総会の基礎知識

初めに、株主総会の概要や重要性、取締役会との違いなど、知っておくべき基礎知識を解説します。株主総会の役割を改めて深く理解し、適切な会社経営に役立てましょう。

株主総会とは何か

株主総会とは、株主によって構成され、会社の基本的な方針や重要事項について意思決定を行う、会社法で定められた機関です。株式会社では、会社の所有者(株主)と経営者(取締役)が分離している「所有と経営の分離」が原則であり、株主総会は会社の所有者である株主が、経営を監督し、会社の重要事項に関する意思決定に参加するための最も重要な機会となります。

具体的には「取締役・監査役など経営陣の選任・解任」「役員報酬の決定」「計算書類の承認」「定款の変更」「M&Aなどの組織再編」といった、会社の根幹に関わる議題が審議・決議されます。これにより会社の進むべき方向性が確立され、株主の利益保護と企業の持続的な成長が図られます。

株主総会の重要性

株主総会は、株主が企業統治(コーポレートガバナンス)を機能させるための根幹であり、会社経営において極めて重要な役割を果たします。

例えば、株主総会では経営陣に対する信任や不信任を明確に表明することが可能です。経営陣の業績が株主の期待に応えられていない場合、株主は総会での議決権行使や質疑応答を通じて経営の改善を直接求めることができます。

また、株主総会は、株主が会社の経営状況を正確に把握し、経営の透明性を確保するためにも不可欠です。事業報告や計算書類の報告を通じて、株主は企業の財産状況や損益を理解できます。このように、株主総会は経営陣と株主の間の健全な緊張関係と信頼関係を築き、企業の持続的な価値向上をサポートする重要な場なのです。

株主総会と取締役会の違い

「取締役会」とは、代表取締役や社外取締役などの取締役で構成され、会社の業務執行に関する意思決定を行う機関です。株主総会と同様に会社の重要な意思決定を行いますが、その権限の範囲、構成員、決議要件などに明確な違いがあります。

役割の違い:株主総会が「会社の基本方針や法律・定款で定められた重要事項」を決定するのに対し、取締役会は「株主総会で決定された方針に基づき、具体的な業務執行の方針や重要事項」を決定します。

構成員の違い:株主総会は「株主」で構成されるのに対し、取締役会は「取締役」で構成されます。

決議要件の違い:決議に必要な定足数や賛成数が異なります。

株主総会
取締役会
【普通決議の場合】
定足数:議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
必要賛成数:出席した株主の議決権の過半数の賛成


【特別決議の場合】
定足数:議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
必要賛成数:出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成


【特殊決議の場合】
・議決権を行使できる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上の賛成
・総株主の半数以上であって、総株主の議決権の4分の3以上の賛成(内容による)
定足数:議決権を持つ取締役の過半数の出席
必要賛成数:出席した取締役の過半数の賛成

株主総会の出席者

株主総会に出席できるのは、原則として基準日時点の株主名簿に記載されている「議決権を持つ株主」です。株主本人に代わり、委任状を持った代理人(任意代理人や法定代理人)が出席することも可能です。

会社側からは、株主に対して説明義務を負う取締役、監査役、会計参与などの役員が出席します。また、会計監査人(監査法人など)も、計算書類に関する質疑応答に備えて出席することが一般的です。

株主総会の開催時期

株主総会の開催時期に法律上の具体的な日付の定めはありません。ただし、「定時株主総会」は、会社法第296条第1項により「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と規定されています。

多くの日本企業が3月決算であり、事業年度終了後3ヶ月以内(6月中)に定時株主総会を開催します。これは、法人税の申告期限が事業年度終了後2ヶ月以内(申告期限の延長届を提出している場合は3ヶ月以内)であることや、定款で議決権を行使できる株主を「事業年度末の株主」と定めている会社が多いことなどが理由です。

株主総会の目的と役割

株主総会は、単に決議を行うだけでなく、多様な目的と役割を担っています。ここでは、株主総会が果たすべき具体的な機能について詳しく解説します。

【参考】「会社法(平成十七年法律第八十六号)」(e-Gov法令検索)

経営報告と決議事項の説明

株主総会の最も基本的な役割は、経営陣から株主へ経営状況を報告し、会社の重要事項について決議を行うことです。

会社の経営上の重要事項

株主総会では、会社の根幹に関わる重要事項が決議されます。これには、会社法第466条に定められた「定款の変更」、第467条第1項の「事業譲渡等の承認等」、第783条第1項の「吸収合併契約等の承認」などが含まれます。これらは経営の根幹を揺るがす可能性があるため、株主の承認が不可欠です。

役員の選任・解任、役員報酬

会社の経営を委任する取締役や、その経営を監督する監査役などの役員を選任・解任することは、株主総会の重要な権限です。また、役員の働きに見合った報酬額を決定・承認することも、経営の健全性を保つ上で重要な役割を担っています。

株主の利害にかかわる事項

株主の経済的な利害に直接影響する事項も、株主総会で決議されます。具体的には、会社法第447条第1項に定められた「資本金の額の減少」や、第454条第1項の「剰余金の配当」などが該当します。特に配当は、株主の投資リターンに直結するため、大きな関心事となります。

株主の意見収集とフィードバック

株主総会は、経営陣が会社の所有者である株主の声を直接聞き、経営に反映させるための貴重な機会です。質疑応答を通じて、株主は日頃感じている疑問や懸念、経営に対する提案などを直接経営陣に伝えることができます。

経営陣は、これらのフィードバックを真摯に受け止め、より株主の期待に沿った、的確な経営判断に繋げることが期待されます。株主総会は役員と株主の双方向コミュニケーションの場であり、両者の信頼関係を構築する上で重要な役割を果たします。

議決権を行使する機会の提供

株主総会は、株主がその権利の根幹である「議決権」を行使する場を提供します。議決権とは、会社の運営や重要な決定に対する投票権であり、株主の意思を企業運営に反映させるための最も強力な手段です。

株主は議決権を行使することで、企業の方向性や経営方針の決定に直接参加します。これにより、株主は企業に対して透明性や責任ある運営を促し、企業価値の向上と健全な発展に寄与することができるのです。

株主総会の種類と違い

株主総会には、開催時期と目的によって「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2種類があります。それぞれの特徴と違いを正確に理解しておきましょう。

【参考】「会社法(平成十七年法律第八十六号)」(e-Gov法令検索)

定時株主総会とは?

定時株主総会とは、会社法第296条第1項に基づき、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集が義務付けられている株主総会です。年に一度、定期的に開催されます。

議題の内容に法律上の制限はありませんが、主にその事業年度の「事業報告」や「計算書類(貸借対照表、損益計算書など)の承認」、「剰余金の配当の決定」といった決算に関する事項や、任期満了に伴う「役員の選任」などが議題となるのが一般的です。

臨時株主総会とは?

臨時株主総会とは、定時株主総会以外で、必要に応じて臨時に開催される株主総会のことです(会社法第296条第2項)。定時株主総会を待たずに、緊急で株主の意思決定が必要な事態が発生した場合に招集されます。

例えば、急なM&A(合併・買収)の決定、予期せぬ役員の欠員補充、重要な定款変更など、迅速な対応が求められる議題が扱われます。

定時株主総会と臨時株主総会の違い

「定時株主総会」と「臨時株主総会」の最も大きな違いは、開催のタイミングと義務の有無です。

定時株主総会:毎事業年度終了後に必ず開催が義務付けられている。

臨時株主総会:時期を問わず、必要に応じていつでも開催される。

なお、法律上はどちらの総会も議題の内容に制限はなく、決議の効力に差はありません。

株主総会決議の種類

株主総会の決議は、議題の重要度に応じて「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の3種類に分けられます。それぞれ決議が成立するための要件(定足数と賛成数)が異なります。

【参考】「会社法(平成十七年法律第八十六号)」(e-Gov法令検索)

普通決議

普通決議は、株主総会における最も基本的な決議方法です(会社法第309条第1項)。原則として、議決権を持つ株主の過半数が出席し、その出席した株主の議決権の過半数の賛成によって可決されます。

決議事項の例としては、「取締役・監査役の選任」「会計監査人の選任・解任」「役員報酬の決定」「剰余金の配当」など、比較的定型的な議案が多く含まれます。

特別決議

特別決議は、会社の組織や運営に重大な影響を与える事項について用いられる、より厳格な決議方法です(会社法第309条第2項)。原則として、議決権を持つ株主の過半数が出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。

決議事項の例としては、「定款の変更」「事業譲渡」「合併・会社分割などの組織再編」「資本金の額の減少」などが挙げられます。

特殊決議

特殊決議は、株主全体の利益に極めて重大な影響を及ぼす特定の事項について要求される、最も厳格な決議方法です(会社法第309条第3項、第4項)。

決議要件は複数あり、例えば「すべての株式に譲渡制限を設ける定款変更」の場合、「議決権を行使できる株主の半数以上が出席」し、かつ「総株主の議決権の3分の2以上の賛成」が必要となります。

株主総会の準備と手順

株主総会を成功させるには、周到な事前準備が不可欠です。ここでは、開催決定から招集通知の発送まで、総会当日までの具体的な手順とポイントをご紹介します。

事前準備とアジェンダ(議題)の作成

株主総会をスムーズに進行させるためには、まず取締役会で株主総会の開催日時・場所・議題(アジェンダ)を決定します。アジェンダは、報告事項と決議事項を明確に区別し、株主が理解しやすいように構成することが重要です。

この段階で、想定される質問や議論の項目を洗い出し、回答の方向性を準備しておく「想定問答集」の作成に着手します。これにより、当日の質疑応答がスムーズになります。これらの準備をしっかり行い、株主総会を円滑に進行させましょう。

会場の選定と手配

株主総会の会場選びは、株主の参加しやすさや満足度を左右する重要な要素です。予想される出席者数に応じた十分な広さと、必要な設備(マイク、プロジェクター、スクリーンなど)が整った場所を選びます。また、交通の便が良い立地を選ぶことで、株主の来場負担を軽減できます。

近年では、バリアフリーへの配慮や、感染症対策も重要な選定基準となります。多くの出席者が予想される場合は、受付スペース、クローク、トイレ、休憩スペースの確保も重要です。事前に会場を視察し、当日の動線や設備に懸念点がないか確認するのが望ましいでしょう。

株主への案内と招集手続き

株主総会の招集通知は、株主に対する法的な義務であり、適切な手続きを踏むことが極めて重要です。

発送時期:招集通知は、原則として株主総会開催日の2週間前までに発送する必要があります(公開会社の場合。非公開会社では原則1週間前)。

記載事項:開催日時、場所、議題の詳細を記載します。特に、株主の判断に影響を及ぼす重要な議案については、参考となる書類を添付しなければなりません。

送付方法:従来は郵送が一般的でしたが、株主の承諾を得れば電子メールなど電磁的方法で送付することも可能です。

これらの法的な要件を遵守し、必要な資料を事前に準備・送付することで、当日の混乱を避け、スムーズな進行が可能となります。

株主総会の進行方法と議事録の作成

株主総会当日の運営では、適切な議事進行と、法的に有効な議事録の作成が求められます。ここでは株主総会の進行方法と議事録作成のポイントについて解説します。

株主総会の進行方法と注意点

株主総会の進行は、通常、議長(多くは代表取締役社長)が議事進行権と秩序維持権を行使しながら進めます。議長は、事前に作成したシナリオに基づき、各議案を説明し、株主からの質疑を受け、採決へと導きます。

時間管理:限られた時間内で全ての議事を終えるため、時間管理は非常に重要です。議長は議事日程に従って進行し、必要に応じて発言時間の制限などを行います。

質疑応答:質問や意見交換が活発に行われる場面では、議長は発言者の意見を正確に理解し、他の参加者にも分かりやすく共有することが求められます。不規則発言や議事進行を妨げる行為に対しては、毅然とした対応も必要です。

不測の事態への備え:音響トラブルや参加者の急な体調不良など、不測の事態にも柔軟に対応できるよう、運営事務局内で役割分担を決め、リハーサルを行っておくことが不可欠です。

議事録の重要性と作成方法

議事録は、株主総会で何が審議され、どのように決議されたかを証明する法的に重要な文書です。後日、決議の有効性を巡って争いが生じた際の証拠にもなります。

記載事項:会社法施行規則第72条で定められた事項(開催日時・場所、議事の経過の要領及びその結果、出席した役員の氏名、議長の氏名など)を漏れなく記載する必要があります。

作成のポイント:発言内容や決議事項を正確かつ客観的に記録します。誰が読んでも誤解が生じないよう、明確で簡潔な言葉を用いることが求められます。

保管義務:作成した議事録は、株主総会の日から10年間本店に、その写しを5年間支店に備え置かなければなりません。

弁護士やALSP(代替法務サービス事業者)による運営支援

株主総会は、開会前・開会中・閉会後の各フェーズで法的なリスクが潜んでいます。適正な運営・チェック体制を構築するため、弁護士やALSP(代替法務サービス事業者)によるサポートを活用する企業が増えています。

例えば、招集手続きや想定問答集のリーガルチェック、総会当日のオンラインまたは現地での立会いによる法的助言、閉会後の議事録チェックなど、あらゆる場面で専門家のサポートを受けることで、株主総会の質を高め、万一のトラブルを未然に防ぐことができます。

株主総会での質疑応答の対応

質疑応答は、株主との対話におけるハイライトです。株主の疑問や懸念に的確に答えることで、信頼を高めることができます。スムーズに対応するためにも、以下の事前準備を徹底しましょう。

よくある質問の回答を準備しておく

株主総会では、業績や財務状況、経営戦略、役員報酬、配当方針といった質問が頻繁に出されます。近年では、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みに関する質問も増加傾向にあります。

これらの頻出質問に対しては、事前に「想定問答集」を作成し、回答担当者と内容をすり合わせておくことが極めて重要です。回答する際は、具体的な数値や事実を交えて明確に、かつ簡潔で分かりやすい表現を心がけましょう。準備を徹底することで、自信を持って落ち着いた対応が可能になります。

質疑応答をスムーズに進めるポイントを押さえる

質疑応答を円滑に進めるためには、運営上の工夫も必要です。

ルールの事前説明:冒頭で、質問の時間や回数、質問方法(挙手、マイクの場所など)といったルールを明確にアナウンスします。

議長の役割:議長は、質問の趣旨を的確に把握し、最適な回答者を指名します。質問が長くなったり、論点から外れたりした場合は、適切に議事を整理することも重要です。

誠実な姿勢:すべての質問に即答できるとは限りません。不明な点や調査が必要な質問に対しては、無理にその場で答えず、「確認の上、後日ウェブサイト等で回答します」といった誠実な対応をすることが、かえって信頼に繋がります。

株主総会の後に行うこと

株主総会は開催して終わりではありません。決議結果の通知や適切なフォローアップを行うことで、次回の総会や平時のIR活動に繋げることができます。

議決結果の通知と公表

株主総会が終了したら、速やかに議決結果を株主に通知・公表します。これは株主の信頼を維持し、経営の透明性を確保するために重要です。

通知・公表の方法:多くの企業では、自社のウェブサイトに「株主総会決議ご通知」といった形で結果を掲載します。

臨時報告書の提出:上場会社の場合、議決権行使の結果、賛成・反対・棄権の数が判明したら、金融商品取引法に基づき、遅滞なく「臨時報告書」を内閣総理大臣(財務局)へ提出し、EDINETで公表する義務があります。

適切なフォローアップ

総会での質疑応答や決定事項を確実に実行し、企業と株主の関係を強化するためにも、総会後のフォローアップが不可欠です。

個別対応:総会で回答しきれなかった質問に対しては、約束通り調査し、ウェブサイトのQ&Aページなどで回答を公表します。

IR活動への反映:株主から出た意見や要望は、その後のIR活動(決算説明会、個人投資家向け説明会、統合報告書など)に反映させ、継続的な対話に繋げます。

次年度への改善:総会の運営方法について、株主アンケートなどを実施してフィードバックを収集し、次年度の総会運営の改善に役立てることも有効です。

株主総会を成功させる主なポイント

株主総会の成功とは、単に議案が可決されることだけではありません。株主の理解と納得を得て、企業への信頼を高めることが真の成功です。そのための重要なポイントをご紹介します。

事前準備の徹底

成功の9割は準備で決まると言っても過言ではありません。

運営事務局の設置:関連部署(総務、法務、経理、IRなど)からなる運営事務局を設置し、役割分担とスケジュールを明確にします。

シナリオと想定問答の作り込み:議事進行シナリオを詳細に作成し、あらゆる角度からの質問を想定した問答集を準備します。特に、ネガティブな質問や厳しい指摘に対しても、真摯かつ論理的な回答を用意しておくことが重要です。

リハーサルの実施:役員や運営スタッフが参加するリハーサルを複数回行い、時間配分、動線、機材の動作確認、役割連携などを徹底的にチェックします。

近年では、企業ガバナンス・コンプライアンスの重要性が高まり、法的側面から株主総会の運営を見直すため、準備段階から弁護士の支援を受ける企業が増えています。

コミュニケーションの強化

株主との良好な関係は一朝一夕には築けません。平時からの継続的なコミュニケーションが、総会の成功を支えます。

分かりやすい招集通知:招集通知や事業報告書は、専門用語を避け、図やグラフを多用するなど、株主が内容を理解しやすいように工夫します。

対話の機会の創出:株主総会は年に一度の貴重な対話の場です。質疑応答の時間を十分に確保し、株主が発言しやすい雰囲気を作ることが大切です。

総会後のフォローアップ:総会で出た意見や質問に対する回答を文書でまとめ、全株主に共有するなど、丁寧な事後対応が信頼醸成に繋がります。

株主の満足度向上につながる取り組みの実施

株主が「参加して良かった」と思えるような工夫も重要です。

運営の透明性:議事録の速やかな公開や、総会当日のライブ配信(参加型バーチャル株主総会)などは、運営の透明性を高め、株主の信頼を得る上で効果的です。

フィードバックの活用:開催後に参加者からアンケート等でフィードバックを収集し、次回の運営改善に活かす姿勢を見せることも大切です。

株主との交流:近年は、お土産を廃止し、その費用を配当に回したり、事業への理解を深めてもらうための工場見学会や製品説明会を開催したりするなど、株主とのエンゲージメントを高める多様な取り組みが行われています。

バーチャル株主総会(オンライン株主総会)の概要

近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、オンラインで実施する「バーチャル株主総会」を導入する企業が増えています。ここでは、その種類やメリット・デメリットを解説します。

バーチャル株主総会の種類

バーチャル株主総会は、大きく分けて2つの方式があります。

ハイブリッド型バーチャル株主総会

従来のリアルな会場での開催と、インターネット経由でのオンライン参加を組み合わせた方式です。株主は、リアル会場へ行くか、オンラインで参加するかを選択できます。オンライン参加には、ライブ配信を視聴するだけで議決権行使はできない「参加型」と、オンラインでも質問や議決権行使ができ、会社法上の「出席」として扱われる「出席型」があります。

バーチャルオンリー株主総会

リアルな会場を設けず、オンラインのみで実施する方式です。2021年の産業競争力強化法等の改正により開催が可能となりました。全ての株主がオンラインで出席し、質問や議決権行使に参加します。ただし、バーチャルオンリー株主総会を導入するには、定款でその旨を定め、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けるといった手続きが必要です。

【参考】「場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度」(経済産業省)

バーチャル株主総会のメリット

株主側:遠隔地に住む株主や、多忙な株主でも場所や時間の制約を受けずに参加しやすくなります。

企業側:大規模な会場を確保する費用や設営・警備にかかる人件費を削減でき、運営コストの効率化に繋がります。

バーチャル株主総会のデメリット

株主側:PCやスマートフォンの操作に不慣れな株主にとって、参加への技術的なハードルが高くなる可能性があります。

企業側:通信障害やサイバーセキュリティ(なりすまし、通信傍受など)のリスクがあり、安定した配信環境の構築とセキュリティ対策が不可欠です。また、リアル会場のような一体感や緊張感が生まれにくいという側面もあります。

まとめ

ここまで、株主総会の基礎知識から準備・運営方法、成功のポイント、そして新しい形態であるバーチャル株主総会までを解説しました。株主総会は会社の最高意思決定機関であり、法律に則った適切な手続きと、株主との真摯な対話が求められる非常に重要なイベントです。

しかし、その運営には法務・総務・経理など多岐にわたる専門知識が必要であり、「長年の慣習で運営しているが、法的に問題ないか不安」「株主構成が複雑化し、対策に悩んでいる」「議事録の作成や管理が負担になっている」といった課題を抱える担当者の方も少なくないでしょう。

このような課題の解決には、企業法務のアウトソーシングサービスであるALSP(代替法務サービス事業者)の活用が有効です。「クラウドリーガル」は、法律の専門家である弁護士が、株主総会運営を強力にサポートします。招集手続きのチェックから想定問答集の作成支援、株主対策まで、貴社の「社内法務」「企業内弁護士」として、経験豊富な弁護士チームがフォローいたします。

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関連記事:取締役会とは?役割とメリット、開催の流れ、ガバナンス強化にも効果的な運営方法を解説

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監修:弁護士 崎地 康文
監修:弁護士 崎地 康文
(第二東京弁護士会・米国ニューヨーク州) 所属:なゆた国際法律事務所 代表弁護士 慶應義塾大学オープンイノベーション推進本部 特任講師 東京薬科大学 特命教授 アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて弁護士として企業法務に従事、米国University of California Berkeley Law School.(UC Berkeley LL.M.)留学後、AI 医療機器スタートアップの執行役員プロダクトマネージャー、慶應大学発ヘルスケアスタートアップ共同創業者兼取締役COOを経て、日本初の企業法務アウトソース・サービスALSP(代替法務サービスプロバイダー)であるバーチャル法律事務所「クラウドリーガル」を開発・提供しているa23s株式会社の代表取締役を務める。

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