電子契約に収入印紙は不要?非課税となる理由と注意点を紹介


(更新日:2024年3月26日)

目次[非表示]

  1. 1.印紙税とは
  2. 2.電子契約に収入印紙が不要な理由
    1. 2.1.①印紙税法の解釈
    2. 2.2.②国会答弁での回答
    3. 2.3.③国税庁の見解
  3. 3.電子契約を導入する際の注意点
    1. 3.1.①すべての契約が電子化に対応しているとは限らない
    2. 3.2.②電子契約を適切に締結させるためには要件がある
  4. 4.まとめ



契約書や領収書など、国税庁が課税文書と判断する書類には必ず印紙税が課せられます。

一般的に課税文書は紙で作成された書類に限り、データ上に存在する電子契約は課税対象外といわれています。

適切に電子契約を導入するためには、印紙税の概要と収入印紙が不要になる理由を知っておく必要があります。

担当者のなかには、「電子契約の導入を検討している」「収入印紙の必要性の有無について知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、電子契約に収入印紙が不要な理由と、導入する際の注意点について詳しく解説します。


>>電子契約における契約書の文言とは?変更箇所や注意点を紹介


印紙税とは

印紙税とは、経済取引に伴う契約や金銭の授受などに課せられる税金です。課税対象と判断される文書は、主に契約書や手形、領収書などです。

印紙税が課せられる書類には収入印紙を貼りつける必要があり、これが税金を納めたという証明になります。

ただし、すべての契約書や領収書が課税されるわけではないため、事前確認が大切です。


>>電子化と紙での保管、どちらがお得?~メリット・デメリットを比較する~


電子契約に収入印紙が不要な理由

電子契約が印紙税の課税対象にならない理由については、国会や国税庁より見解が示されています。

重要なのは、印紙税法における文書の作成の解釈です。ここでは、電子契約に収入印紙が不要な理由を3つ紹介します。


①印紙税法の解釈

国税庁による『法令解釈通達』にて、印紙税における課税文書の作成の意義について言及されています。

課税文書が作成されたと判断されるのは、交付を行った場合です。電子契約は紙ではなく、データで作成されるため、物理的に交付することはできません。

また、電子データの送信は交付にあたらないため、課税対象の文書には該当しません。

電子契約を印刷した場合は、原本ではなく複製として扱われるため、署名・押印をしない限り課税されないと判断できます。


②国会答弁での回答

『第162回国会(常会)』にて、電子データで作成された文書については、印紙税の課税対象外であることが述べられました。

国会答弁が行われた2005年当時から、電子契約は課税対象外であるという考えは現在まで維持されています。

今後の法改正で課税対象になる可能性もあるため、常に最新の情報を参考にしながら電子契約を行うことが大切です。


③国税庁の見解

国税庁の『文書回答事例』では、注文請書を例として取り上げ、電子メールで送信した場合の印紙税について言及しています。

電子データは現物の交付がない限り、課税文書を作成したことにならないため、印紙税の課税対象外となる旨の見解を示しています。

ただし、電子契約書をメールで送信したあとに、紙に印刷して取引先に現物を交付した場合は、課税対象になる可能性があるため注意が必要です。


>>電子契約と印紙の関係



電子契約を導入する際の注意点

電子契約は、社内のペーパーレス化や業務の効率化に有用である場合がありますが、導入する際は注意が必要です。

自社の業務が電子契約に向いていなければ、導入コストだけがかかってしまい、適切に運用できない可能性があります。

ここでは、電子契約を導入する際の注意点を2つ紹介します。


①すべての契約が電子化に対応しているとは限らない

すべての契約が電子化に対応しているわけではありません。契約書類のなかには、書面化や書面での交付が義務づけられているものがあります。

また、契約によっては取引先に紙の書類を交付しなければならない場合もあります。

書面化および、書面での交付が義務づけられている書類は以下の通りです。

  • 事業用定期借地契約
  • 企業担保権の設定または変更を目的とする契約
  • 任意後見契約書
  • 特定商取引の一部の交付書面 など


法整備により、電子化が認められる書類は年々変化しています。

今後も電子化できる書類が変わる可能性があるため、最新の情報を基に電子契約を行うことをおすすめします。


②電子契約を適切に締結させるためには要件がある

電子契約を適切に締結させるためには、要件を満たす必要があります。

電子契約の有効性を保ち、適切に契約を取り交わすためには以下2点の要件を満たさなければなりません。  

  • 電子署名の使用   
  • タイムスタンプの付与


また、税法上の規定を満たすためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 電子帳簿保存法に沿った保存方法


以上の要件は適切な電子契約システムを利用することで満たせるため、システム導入の際は機能を確認しておくことが大切です。


>>電子契約で紙はなくなる?書面契約との上手な管理


まとめ

この記事では、電子契約における収入印紙について以下の内容で解説しました。

  • 印紙税とは
  • 電子契約に収入印紙が不要な理由
  • 電子契約を導入する際に注意点


国会答弁や国税庁の見解から分かるように、データ上の存在である電子契約は印紙税の課税対象にはなりません。

あくまで物理的な紙媒体の書類が存在し、交付された場合にのみ印紙税が課税されます。

ただし、すべての契約書類が電子化に対応しているわけではないため、電子契約を導入する際は事前確認が大切です。

電子化が認められている書類については、法改正により年々変化しているため、今後も変化する可能性があります。

電子契約を導入する場合は、最新の情報を確認したうえで利用することをおすすめします。

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監修:弁護士 宮内宏
監修:弁護士 宮内宏
所属 宮内・水町IT法律事務所 経歴 東京大学工学部電子工学科及び同修士課程卒業。 日本電気株式会社(NEC)にて、情報セキュリティ等の研究活動に従事。 東京大学法科大学院を経て法曹資格取得。第二東京弁護士会所属。

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