電子帳簿保存法の対象外になるものは?法律に対応する際の注意点


目次[非表示]

  1. 1.電子帳簿保存法の対象外になる書類はある?
    1. 1.1.データ保存の義務があるのは「電子取引で授受した書類」だけ
    2. 1.2.電子帳簿保存法の対象となる主な書類
    3. 1.3.電子帳簿保存法の対象外となる書類
    4. 1.4.電子帳簿保存法の対象外となる企業や個人事業主はある?
  2. 2.書類を電子取引する主なメリット
    1. 2.1.業務の効率化
    2. 2.2.保管スペースの有効活用
    3. 2.3.印刷代や郵送コストの削減
  3. 3.電子帳簿保存法に対応する際の注意点
    1. 3.1.電子帳簿保存法における区分ごとの要件を把握する
    2. 3.2.書類を電子化する際の要件を把握する
    3. 3.3.データの保存方法と保存場所を統一する
    4. 3.4.業務フローを見直す
    5. 3.5.システムの導入は早めに検討を始める
  4. 4.電子帳簿保存法に対応するなら電子契約サービスの導入を!



電子帳簿保存法とは、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能にする法律で、同法に基づく各種制度を利用することで経理のデジタル化、ペーパーレス化が実現できます。2022年に改正され、2023年12月まで対応が猶予されていた電子取引データの電子保存が2024年1月から義務付けられました。

この記事では、電子帳簿保存法の対象外になる書類があるのか、また対応のポイントについて解説します。


電子帳簿保存法の対象外になる書類はある?

電子帳簿保存法で電子データでの保存義務の対象外になるのは、電子取引以外の書類です。ここでは、具体的にどんな書類が対象外になるのか、すべての企業や個人事業主が対象になるのかについて説明します。


データ保存の義務があるのは「電子取引で授受した書類」だけ

まず、押さえておきたいのは、電子帳簿保存法上、データ保存の義務があるのは「電子取引で授受した書類」だけです。紙の書類で受け取った契約書をデータ保存する義務はありません。


電子帳簿保存法の対象となる主な書類

電子帳簿保存の対象となる主な書類には、国税関係帳簿、国税関係書類、電子取引で授受した書類があります。具体的には以下の通りです。


・国税関係帳簿

例:仕訳帳、総勘定元帳、売上台帳、仕入台帳、固定資産台帳


・国税関係書類

「決算関係書類」と「取引関係書類」が該当します。

決算関係書類の例:貸借対照表、損益計算書

取引関係書類の例:契約書、領収書、見積書、注文書


・電子取引

例:電子契約、メールデータ、Web請求書


電子帳簿保存法の対象外となる書類

まず、履歴書や図面など、国税関係書類に該当しない書類が挙げられます。こうした国税関係書類に該当しない書類の電子保存の条件などについては、e-文書法の規定に従います。

また、事業者自らがPCなどの機器で作成していない「国税関係帳簿」と「決算関係書類」も電子帳簿保存法の対象外です。手書きの総勘定元帳や、紙で作成された貸借対照表などが対象外の書類に該当します。一方、領収書などの「取引関係書類」については手書きや紙に印刷されたものはスキャナ保存し、データで受け取った場合は電子取引として処理します。

いずれにしても、データ保存の義務があるものは電子取引のみです。


電子帳簿保存法の対象外となる企業や個人事業主はある?

電子帳簿保存法はすべての企業・個人事業主が対象であり、電子取引で授受した書類については必ずデータ保存しなければなりません。

もし、電子取引を一切行わない企業であれば、電子データ保存を行わずに済むため、実質的に対象外ともいえるでしょう。ただ、電子取引は利便性が高く、紙ベースでのやりとりに比べ圧倒的にコストを抑えることができます。そのため、電子取引を一切行わない企業は減少しており、自社(自分)だけ電子取引に対応しないスタンスを取り続ければ、取引先から敬遠されるおそれがあることは覚えておきましょう。



書類を電子取引する主なメリット

企業であれ、個人事業主であれ、電子取引を始めれば電子帳簿保存法の対象に含まれることになります。電子データ保存をするのは手間がかかりますが、以下のようなメリットもあります。


業務の効率化

書類を電子取引することで業務の効率化を図ることができます。日本社会は少子高齢化で労働人口が減少しており、今後は業界に関わらず必要な人材を確保するのが難しくなります。そのため、効率化を図れる業務はテクノロジーを利用し、負担を減らすことが不可欠です。

例えば、紙ベースで作成・印刷し、送付・ファイリング・保管を行っていた請求書などの書類を電子化すれば、手作業による負担を大きく軽減できます。さらに電子データを保存するシステムと精算システムなどを連携させることで、手入力する手間も削減できます。


保管スペースの有効活用

書類を電子化すれば、保管スペースの有効活用ができます。従来、紙ベースで書類を作成した場合、それらをすべてファイリングし、保管するスペースが必要でした。しかし、書類を電子化すれば、社内サーバーやクラウド上に保存することができるため、物理的なスペースは必要なくなります。


印刷代や郵送コストの削減

書類を電子化するなら、印刷代や郵送コストを削減できます。すでに2024年10月1日から郵便料金は値上げされることになっており、25グラム以下の定型郵便は84円から110円に、はがきも63円から85円に値上がりします。

例えば、取引先に請求書を月に50通送っているとしましょう。値上げ前の郵送料は4,200円ですが、値上げ後には5,500円となり、月で1,300円、年間では15,600円の差額を生みます。もし、請求書を電子データで送ったり、クラウド上で共有したりすれば、そうした郵送コストは必要ありません。



電子帳簿保存法に対応する際の注意点

電子帳簿保存法に対応することにはさまざまなメリットがありますが、注意点もあります。以下の5つのポイントに気を付けましょう。


電子帳簿保存法における区分ごとの要件を把握する

電子帳簿保存法には、電子帳簿、スキャナ、電子取引データの3つの区分があります。それぞれの区分ごとの要件をきちんと把握しましょう。


・電子帳簿

税務関係帳簿書類は電子データで保存できます。例えば、帳簿管理を会計ソフトで行っている場合は、会計ソフトで作成した書類を電子データで保存します。


・スキャナ

紙ベースの発注書や領収書などの国税関係書類はスキャナ保存が可能です。また、PDFファイルなどの電子データに変換して保管することも認められます。ただ、スキャナ保存する場合には解像度やカラー要件などが定められていますので、注意が必要です。


・電子取引データ

メールなどで電子ファイルの領収書や発注書を受け取った場合、データのまま保存しなければいけません。


書類を電子化する際の要件を把握する

書類を電子化する際にはおおまかに次の4つの要件が定められています。


・システム概要に関連した書類を備え付けること

会計ソフトなどのマニュアルを備えておかなければなりません。


・見読可能装置の設置

PCで作成した電子データを視認できるモニターなどを設置します。


・検索機能を使えるようにする

取引に関連した年月日、金額、取引先などの項目で検索できるようにしておきます。


・データの真実性の担保

電子データの日付などが信頼できることを証明するためタイムスタンプなどを付します。


データの保存方法と保存場所を統一する

データを電子化しても、後で探せなくなってしまったら意味がありません。検索の利便性を考えて、データの保存方法と保存場所を統一しておくと良いでしょう。


業務フローを見直す

書類を電子化する目的の一つは業務効率化です。電子化に伴い業務フローの変更が必要になります。書類の電子化をきっかけにして、社内の業務フロー全体を見直すことをおすすめします。


システムの導入は早めに検討を始める

書類作成を電子化するだけでもコストは大幅に削減できますが、社内でドラスティックな変革を目指すなら、早めに経理システムなどと連携できるようにしておくと良いでしょう。



電子帳簿保存法に対応するなら電子契約サービスの導入を!

電子帳簿保存法によるデータ保存の義務は電子取引のみで、紙で受け取った書類を電子化する義務はありません。ただし、上記の義務はすべての企業や個人事業主が対象となり、違反すると罰則が科されるおそれがあります。

また、利便性を考えると、今後自社だけ書類契約のみを堅持していくのも難しくなってくるはずです。業務効率を向上させ、少ない人材を価値ある業務に振り分けるためには、システムと連携した電子取引の導入が不可避でしょう。

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