派遣契約とは?基本的な仕組みや業務委託との違い、契約時の注意点
目次[非表示]
- 1.派遣契約についての基礎知識
- 1.1.派遣契約とは
- 1.2.派遣契約の仕組み
- 1.3.派遣契約の種類
- 1.4.派遣契約の期間
- 1.5.派遣契約を導入するメリット
- 2.派遣契約と業務委託契約との違い
- 3.派遣契約を締結する流れ
- 4.派遣契約を締結する際の注意点
- 4.1.厚生労働大臣の許可を受けている派遣会社か確認する
- 4.2.事前に面談することはできない
- 4.3.依頼できる業務は契約で定めた範囲のみ
- 4.4.中途解約には一定の制約がある
- 4.5.3年を超えて契約したい場合には一定の制約がある
- 4.6.法令上の必要事項に漏れがないか確認する
- 4.7.自社に不利益な条項が含まれていないか確認する
- 4.8.派遣契約書の控えは保管しておく
- 5.派遣契約に関連する法律
- 6.まとめ
近年は多様な働き方を選択する労働者が増え、派遣サービスを利用する企業が増えています。派遣サービスを導入する際は、派遣会社と契約を締結する必要があります。改めて派遣契約について基本から確認しておきましょう。
この記事では、派遣契約の基礎知識や、契約締結の流れ、注意点などを解説します。派遣サービスを利用する企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
派遣契約についての基礎知識
初めに、派遣契約に関する基礎知識を解説します。基本的な働き方の仕組みについて、改めて確認してみましょう。
派遣契約とは
派遣契約とは、派遣会社と派遣先企業が締結する契約のことです。法律上では「労働者派遣契約」と呼ばれます。
派遣契約の仕組み
派遣の仕組みには、派遣会社・派遣労働者・派遣先企業が関わっています。派遣会社が派遣労働者・派遣先企業の間に立ち、それぞれと契約を締結する仕組みです。派遣会社と派遣労働者は「雇用契約」を締結し、派遣会社と派遣先企業は「労働者派遣契約」を締結します。その際、派遣労働者の給与は派遣会社から支払われ、業務の指揮命令権は派遣先企業が持つのが特徴です。
派遣契約の種類
派遣会社と派遣先企業が締結する「労働者派遣契約」は、「基本契約」と「個別契約」に分けられます。
基本契約
派遣の取引におけるトラブルを防止する目的で、初めに締結する契約です。主な記載事項として「料金の設定方法、計算方法、支払方法」「雇用安定措置」「個人情報・機密情報の保護」「損害賠償」「契約解除」などが挙げられます。ただし、法律上、締結する義務はありません。
【主な記載事項】
- 料金の設定方法、計算方法、支払方法
- 雇用安定措置
- 個人情報・機密情報の保護
- 損害賠償(例:派遣先都合による休業が生じた際の損害金の取り決め)
- 契約解除
- 労働者派遣法および関係法令の遵守
- 労働者派遣契約を別途締結すること
個別契約
個別の派遣社員ごとに締結する契約です。「労働者派遣法」において契約締結が義務づけられています。主な記載事項として、「業務内容、業務に伴う責任の程度」「就業場所」「就業時間・休憩時間」などの就業に必要な情報が挙げられます。派遣先企業は、個別契約に則って業務の指揮命令を行います。
【主な記載事項】
- 業務内容、業務に伴う責任の程度
- 就業場所
- 就業時間・休憩時間
- 派遣先責任者
- 派遣料金
派遣契約の期間
派遣契約の期間は最大で3年間と定められています(=3年ルール)。「事業所単位」と「個人単位」でそれぞれ以下の期間制限があります(※一部例外があります)。
- 事業所単位の期間制限:同じ派遣会社から同じ事業所へ派遣できる期間は3年まで
- 個人単位の期間制限:同じ部署へ同じ派遣社員を派遣できる期間は3年まで
派遣契約を導入するメリット
派遣先企業は、派遣契約の導入によって以下のメリットが期待できます。
- 人材不足を解消できる
- 人材採用の手間とコストを削減できる
- 労務管理の業務負担を軽減できる
派遣サービスを利用すると、社内で人材採用を実施する必要がありません。そのため、採用の手間とコストを削減しながら人材不足の課題を解消することが可能です。また、派遣社員は派遣会社に雇用されるため、社会保険関連の手続きなどの業務負担が軽減されます。
派遣契約と業務委託契約との違い
派遣と業務委託には、主に以下のような違いがあります。
派遣 |
業務委託 |
|
契約形態 |
|
委託企業と受託企業(個人事業主)が「業務委託契約」を締結する |
契約当事者 |
派遣会社・派遣労働者・派遣先企業 |
委託企業・受託企業(個人事業主) |
契約期間 |
一定期間 |
案件の完了まで |
指揮命令 |
派遣先企業が行う |
委託企業が行う |
利用目的 |
労働力の確保 |
依頼業務の遂行・納品 |
報酬 |
派遣費用 |
業務委託費用 |
もっとも大きな違いは契約形態にあります。派遣では、派遣会社と派遣労働者が「雇用契約」を締結し、派遣会社と派遣先企業が「労働者派遣契約」を締結します。それに対して、業務委託では委託企業・受託企業(個人事業主)が「業務委託契約」を締結するのが主な違いです。このほかに、派遣の目的は労働力の確保である一方、業務委託の目的は依頼業務の遂行・納品となっています。
派遣契約を締結する流れ
ここでは、派遣先企業が派遣契約を締結する流れを5つのステップでご紹介します。契約担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
Step1. 派遣会社に相談
派遣先企業が派遣会社に相談します。派遣社員の業務内容、派遣期間、費用などを確認して利用を検討します。
Step2. 基本契約の締結
派遣先企業と派遣会社が「基本契約書」を締結します。基本契約は法律上で義務づけられていないものの、トラブル防止の観点から締結することが一般的です。
Step3. 抵触日の通知
派遣先企業は、派遣会社に対して「抵触日」を通知します。抵触日とは、派遣可能期間(3年)が満了した翌日を指し、「労働者派遣法」において通知が義務づけられています。
Step4. 個別契約の締結
派遣先企業と派遣会社が、派遣社員ごとに「個別契約」を締結します。契約の締結は、「労働者派遣法」において義務づけられています。
Step5. 派遣先管理台帳の作成・保管
派遣先企業は、派遣先管理台帳の作成・保管を行うことが「労働者派遣法」で義務づけられています。派遣先管理台帳は3年間の保存が求められ、記載内容は派遣会社に通知しなければなりません。
派遣契約を締結する際の注意点
派遣契約を締結する際は、いくつか注意するべき点があります。以下でご紹介する注意点を踏まえて契約を検討しましょう。
厚生労働大臣の許可を受けている派遣会社か確認する
派遣会社が労働者派遣事業を実施する際は、厚生労働大臣の許可が必須となります。厚生労働省職業安定局の「人材サービス総合サイト」より許可・届出事業所の検索を行い、許可を受けた派遣会社であるか確認しましょう。
【参考】「人材サービス総合サイト」(厚生労働省職業安定局)
事前に面談することはできない
派遣社員の事前面談は、「派遣社員の特定行為」と見なされ、派遣労働者の選別につながることから「労働者派遣法」によって禁じられています。そのため、派遣先企業は派遣社員と事前に面談することはできません。
依頼できる業務は契約で定めた範囲のみ
派遣社員に依頼できる業務は、契約で定めた範囲のみとなります。契約で定められていない業務内容や、「労働者派遣法」で禁じられている業務内容を依頼しないよう注意が必要です。
中途解約には一定の制約がある
派遣契約の中途解約は、「労働者派遣法」により自由に行うことはできません。やむを得ず中途解約を行う場合、「別の派遣就業場所を確保する」「派遣会社に対して休業手当の費用を負担する」といった制約を受けます。
3年を超えて契約したい場合には一定の制約がある
前述した「3年ルール」により、派遣契約の期間は最大で3年間となります。3年を超えて契約する際は、「直接雇用への切り替え」「無期雇用の派遣社員への切り替え」「部署の異動」といった対応が必要です。
法令上の必要事項に漏れがないか確認する
派遣サービスを利用する場合は、関連する法律を確認し、必要事項に漏れがないかチェックしましょう。法律に則って適切な労働環境を確保することが大切です。派遣契約に関連する法律について、詳しくは次の見出しで後述します。
自社に不利益な条項が含まれていないか確認する
派遣会社と契約を締結する際は、自社に不利益な条項が含まれていないか確認することが大切です。必要に応じて、法律の専門家へ契約内容の確認を依頼する「契約書レビュー」を検討しましょう。
派遣契約書の控えは保管しておく
労働者派遣契約書は、派遣会社との取引を証明する重要な書類です。保管義務は明確に定められてはいませんが、契約締結後はトラブル防止の観点から書類を保管しておくとよいでしょう。なお、派遣先管理台帳に関しては3年間の保存が義務となっているため注意が必要です。
派遣契約に関連する法律
派遣契約に関連する「労働者派遣法」「労働契約法」「労働基準法」の法律の概要をご紹介します。派遣契約の締結にあたり、押さえておきましょう。
労働者派遣法
労働者派遣法は、派遣労働者を保護し雇用の安定を図るための法律です。具体的には、「派遣元・派遣先・労働の関係」「派遣会社のマージン率や教育訓練に関する情報公開」「派遣労働者の待遇の説明」などに関するルールが定められています。
【参考】「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)」(e-Gov 法令検索)
労働契約法
労働契約法は、労働者の保護や個別労働関係の安定を目的とした法律です。個別労働者と事業主間の紛争を防止する役割があります。派遣契約をはじめとした多様な働き方の普及にともない、労働紛争の増加に対応するために制定された背景があります。
【参考】「労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)」(e-Gov 法令検索)
労働基準法
労働基準法とは、労働者と使用者が締結する契約が不公平なものとならないよう、労働者に配慮して最低限の基準を定めた法律です。基準を下回る労働条件での雇用は違反となり、使用者は処罰を受ける可能性があります。派遣契約で働く場合も労働基準法が適用されます。
【参考】「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」(e-Gov 法令検索)
まとめ
ここまで、派遣契約の基礎知識や契約締結の流れ、注意点などをお伝えしました。派遣会社と派遣先企業が締結する「労働者派遣契約」は電子化することが可能です。特に「個別契約」は個別の派遣社員ごとに締結する必要があり、頻繁に契約締結が行われます。こうした契約業務を効率化する際は、電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」がおすすめです。低コストで業界最高水準のセキュリティを確保した電子契約を導入できます。詳しくは無料の資料ダウンロードをご利用ください。