個人が関わる主な契約書は?契約書の作成時に押さえておきたいポイントを解説
目次[非表示]
- 1.契約書の基礎知識
- 1.1.契約書とは?
- 1.2.契約書が必要となる理由
- 1.3.契約書と覚書、誓約書の違い
- 1.4.契約書の基本構成
- 2.個人契約書と法人契約書の違い
- 3.個人が関わる契約書の主な種類
- 4.契約書を作成する際に押さえておきたいポイント
- 4.1.法律用語を使用して作成する
- 4.2.第三者が読んでも理解できるように作成する
- 4.3.数値や表現は具体的に記載する
- 4.4.締結前にリーガルチェックを行う
- 4.5.契約書が複数になる場合は割印を押す
- 4.6.権利と義務を明確に定義する
- 4.7.契約書のひな形をそのまま流用せず、記載漏れのチェックなどに利用する
- 5.個人が作成する契約書に関するよくある質問
- 5.1.個人事業主が契約書を作成する際のポイントは?
- 5.2.個人間の契約書・誓約書に法的効力はある?
- 5.3.契約書があれば請求書は不要?
- 5.4.契約書はどちらが作成する?
- 5.5.契約書に収入印紙が必要になる場合は?
- 5.6.法律に抵触する内容の契約書は有効?
- 6.まとめ

個人が当事者になる契約では、口頭で合意したつもりの条件が、後から支払い・納期・権利関係の争点になることがあります。相手方の氏名や住所、報酬の支払時期、成果物の扱い、解除条件、契約書の保管方法まで書面で整理しておかないと、トラブル時に合意内容を説明しにくくなります。
契約書は、こうした認識のずれを防ぐために、当事者・取引条件・合意内容を確認・照合できる形で残す文書です。ただし、個人間の取引、個人事業主の業務委託、法人から個人への依頼では、契約書に入れるべき条項や、締結後に管理する情報が変わります。
本記事では、契約書の役割、個人が関わる契約と法人間契約の違い、主な契約書の種類を整理します。
契約書の基礎知識
契約書は、取引条件や合意内容を確認するための文書です。効力と役割を押さえたうえで、文書に残すべき条件を整理します。
契約書とは?
契約書は、当事者が合意した内容を契約前や契約後でも確認できるよう、文書として残したものです。契約の目的・金額・支払条件・期限・解除条件などを明記しておくと、合意内容を照合する根拠になります。
民法第522条では、契約は「申込みと承諾」によって成立するとされています。法令に特別の定めがあるときを除き、書面の作成などの方式は求められません。つまり、契約書がなくても契約自体は成立します。
契約書が必要となる理由
契約書が必要となる理由は、当事者が合意した内容を共有し、後から内容を説明できる状態にするためです。口頭やメールだけで取引が進むこともありますが、条件が増えるほど、誰が何を約束したのかを追いにくくなります。
たとえば、業務委託契約書では、業務内容・報酬・納期・検収条件を明記しておくと、どこまで対応すれば業務完了といえるのかを確認しやすくなります。著作権・秘密保持・解除条件も条項として残しておけば、成果物の利用範囲や契約終了時の扱いを見直せます。
とくに業務委託のように確認すべき条件が多い契約では、請求書やメールのやり取りだけで合意内容の全体を追うのは困難です。「何を、いつまでに、どの条件で行う約束だったのか」を確認できるようにするため、契約書を作成する必要があります。
契約書と覚書、誓約書の違い
契約書・覚書・誓約書は、いずれも合意内容や約束を文書にする点で共通しています。明確な違いは、文書が担う役割です。
契約書:当事者双方の権利義務を定める文書
覚書:既存の契約内容を補足・変更したり、合意事項を確認したりする文書
誓約書:一方当事者が一定の事項を守ることを約束する文書
注意点として、文書名だけで法的な効力や印紙税の扱いが決まるわけではありません。契約成立や、契約内容の変更・補充を証明する文書であれば、タイトルが覚書や誓約書でも契約書として扱われます。
契約書の基本構成
契約書は、当事者・契約目的・取引条件・リスク対応条項・締結情報などで構成されます。各項目の役割ごとに整理すると、ひな形を使うときも不足や記載内容のずれを見つけやすくなります。
構成要素 | 主な記載内容 | 確認する理由 |
表題・前文 | 契約名 | 何の取引について誰が合意するのかを明確にするため |
取引条件 | 業務内容 | 履行内容と支払条件を後から照合するため |
リスク対応条項 | 解除 | トラブル発生時の対応や責任範囲を決めるため |
締結情報 | 協議条項 | 契約成立日と当事者の合意を確認するため |
ひな形を使うときは、表の構成要素を目安にしながら、各条項が実際の取引内容に合っているかを確認します。記載例を残したまま締結すると業務内容や支払条件、契約期間、権利関係などが実態とずれるため注意してください。
個人契約書と法人契約書の違い
個人契約書と法人契約書では、当事者表示・署名権限・締結後の管理が変わります。以下、確認すべき違いを整理します。
個人契約書とは?
個人契約書とは、個人が当事者として締結する契約書です。個人間の金銭貸借・贈与・売買のほか、個人が借主・貸主になる不動産賃貸借、個人事業主やフリーランスとの業務委託契約も含まれます。
契約書を作成するときは、相手方を特定できるよう、氏名・住所・連絡先を契約書に明記します。本人確認書類を用いる場合は、提示方法と保管範囲も事前に整理しておくと、後日の照合に役立ちます。
また、個人事業主やフリーランスとの契約では、屋号だけで相手方を特定しきれないため、契約当事者となる個人の氏名も記載します。あわせて、報酬・納期・成果物の権利・源泉徴収・消費税・インボイス登録状況など、請求・支払処理に関わる項目を整理しておくと、締結後の行き違いを防ぎやすくなります。
法人契約書とは?
会社などの法人が当事者となり、取引条件や権利義務を文書に残したものが法人契約書です。個人の氏名ではなく法人名で契約するため、契約上の権利義務は原則として法人に帰属します。
法人契約書では、取引基本契約書や業務委託基本契約書のように、継続取引を前提とする文書が使われることがあります。基本契約書・個別契約・発注書・見積書などの関係を整理し、どの条件を優先するのかを契約書に残しておくと、取引開始後の認識違いを抑えやすくなります。
個人が関わる契約書の主な種類
個人が関わる契約書は、取引の目的によって必要な条項が変わります。代表的な種類ごとに、用途と作成前に確認すべきポイントを解説します。
金銭消費貸借契約書
お金の貸し借りに使う契約書です。貸付金額・返済期限・返済方法・利息を本文に書き込み、返済条件を明確にします。あわせて、遅延損害金・期限の利益喪失・連帯保証の有無まで明記しておくと、返済トラブルが起きたときに当事者間で確認しやすくなります。
不動産賃貸借契約書
不動産賃貸借契約書は、建物や土地を貸し借りするときに使う契約書です。賃料、共益費、敷金、契約期間を明記したうえで、更新、解約、原状回復、禁止事項などの運用ルールも定めます。また、重要事項説明書がある取引では、契約書と内容を照合し、賃料・契約期間・解約条件・原状回復の範囲に食い違いがないかを確認します。
抵当権設定契約書
債務の担保として不動産などに抵当権を設定するときに作成する契約書です。対象不動産・被担保債権・債務者・抵当権者の情報を明記し、登記手続きに必要な書類や当事者の協力義務も整理します。金銭消費貸借契約に付随して作成されることが多いため、借入条件と担保内容にずれがないかを確認してください。
売買契約書
商品や不動産などを売買するときに作成します。目的物・売買代金・支払方法・引渡し時期を明記し、契約不適合責任や所有権移転時期も定めます。個人間売買では、支払日や引渡し方法が曖昧になりやすいため、いつ・何を・どの状態で引き渡すのかまで契約書上で明確にします。
贈与契約書
贈与契約書は、財産を無償で譲渡するときに作成する契約書です。対象財産・贈与日・引渡し方法・負担付き贈与の有無を明記します。金額が大きい贈与や不動産を含む贈与では、税務・登記の扱いが関係するため、税理士や司法書士など専門家に相談するのが一般的です。
業務委託契約書
個人事業主やフリーランスへ業務を依頼するときに使われます。業務内容・報酬・納期・成果物の権利を明記し、秘密保持・再委託・解除・損害賠償の扱いも契約書内で整理します。
雇用契約書
従業員を雇用するときに労働条件を明示するための文書です。労働基準法施行規則第5条では、就業場所・業務内容・始業終業時刻・所定時間外労働の有無・休憩・休日・休暇・賃金(決定・計算・支払方法)・退職に関する事項(解雇の事由を含む)などが、労働条件として使用者が必ず明示しなければならない「絶対的明示事項」とされており、有期契約では契約期間や更新基準もあわせて記載します。
契約書を作成する際に押さえておきたいポイント
契約書を作成するときは、当事者・取引条件・責任範囲を先に確認します。ここでは、作成時に押さえておきたいポイントをまとめました。
法律用語を使用して作成する
契約書では、権利・義務・解除・損害賠償・契約不適合責任など、法律上の意味を持つ用語を正しく使います。たとえば、「キャンセル」という表現だけでは、解除・申込みの撤回・解約のどれを指すのかが曖昧です。用語を使うときは、発生条件、通知方法、効果まで条項内で整理してください。
第三者が読んでも理解できるように作成する
当事者に加えて、法務・経理・監査担当者、弁護士などが読むこともあります。誰が、何を、いつまでに行うのかを明確にし、金額や期限も第三者が読み取れる形で記載します。
数値や表現は具体的に記載する
「速やかに」「適切に」「必要に応じて」などの表現は、対応期限や実施範囲が読み取りにくくなります。支払期限、納期、通知期限は日付や日数で示し、契約金額、違約金、契約期間は金額・期間・算定方法まで契約書上で明確にします。
締結前にリーガルチェックを行う
契約締結後は、一方の判断だけで内容を変えられず、通常は相手方との合意や変更契約が必要です。署名・押印や電子署名に進む前に、責任範囲や解除条件、損害賠償、秘密保持、権利帰属を見直しましょう。
契約書が複数になる場合は割印を押す
紙の契約書が複数ページになるときは契印を使い、同じ契約書を複数部作成するときは割印を押すことがあります。どちらも、ページの差し替えや文書の取り違えを防ぐための実務上の処理です。
電子契約では、電子署名・タイムスタンプ・締結証明書・操作ログなどを通じて証跡を残します。署名者や締結日時、締結プロセス、改ざんの有無を追えるようにしておくことが重要です。締結前に、サービス上でどの証跡を確認できるかを見ておきましょう。
権利と義務を明確に定義する
契約書では、双方の権利と義務を分けて記載するのが原則です。発注側の資料提供義務・受託者の納品義務・相手方の支払義務を整理し、秘密保持義務などもそれぞれ分けて書いておけば、履行すべき内容が当事者間で明確になります。
契約書のひな形をそのまま流用せず、記載漏れのチェックなどに利用する
ひな形やテンプレートは、記載漏れを防ぐチェック資料として役立ちます。ただし、ダウンロードしたひな形をそのまま使うと、自社の取引内容と合わない条項・不要な条件が残ったまま締結するおそれがあります。記載例は参考にとどめ、取引ごとに条項を見直してから作成してください。
個人が作成する契約書に関するよくある質問
個人事業主が契約書を作成する際のポイントは?
個人事業主が契約書を作成・締結するときは、屋号に加えて契約当事者となる個人の氏名・住所を明記します。業務範囲や報酬、納期、成果物の権利、源泉徴収、消費税、インボイス登録状況などは、請求・支払処理や権利関係に関わるため、契約前に整理します。
個人間の契約書・誓約書に法的効力はある?
個人間の契約書や誓約書でも、当事者の合意内容を示す文書として機能します。ただし、強行規定や公序良俗に反する内容は、効力が否定されることがあります。
契約書があれば請求書は不要?
契約書は取引条件を定める文書で、請求書は支払いを求める文書です。契約書に報酬額や支払日が記載されていても、経理処理や支払手続きで請求書が必要になることがあります。
契約書はどちらが作成する?
当事者のどちらが作成しても構いません。相手方から提示された契約書案は、業務範囲・報酬・解除条件・損害賠償などに偏りがないかを見直しましょう。
契約書に収入印紙が必要になる場合は?
紙で作成する契約書が印紙税の課税文書にあたる場合は、収入印紙が必要です。金銭消費貸借契約書、不動産売買契約書、請負に関する契約書などは課税文書にあたることがあります。
印紙税は、原則として課税文書の作成者が納めます。ただ、契約書を当事者双方で作成する場合は、双方が連帯して印紙税を納める義務を負うため、収入印紙代をどちらが負担するか、または折半するかを締結前に決めておきましょう。
法律に抵触する内容の契約書は有効?
法律に抵触する条項がある契約書は、規定の種類によって効力の扱いが変わります。
強行規定の場合
強行規定や公序良俗に反する条項は、その全部または一部が無効になることがあります。これには労働基準法の基準を下回る労働条件、消費者契約法で無効とされる条項、利息制限法の上限を超える利息の超過部分などが該当します。
任意規定の場合
当事者が別の内容で合意したとき、その合意が優先されます。契約書で特別な定めを置くときは、どの条項をどの範囲で変更するのかを明確にします。
取締規定の場合
行政上の許認可や業法上のルールなど、取締規定に違反しても、直ちに契約が無効になるとは限りません。規定の趣旨や保護される利益によって扱いが変わるため、判断に迷う条項は締結前に法務担当者や弁護士へ確認しましょう。
まとめ
個人が関わる契約書は、金銭消費貸借・不動産賃貸借・売買・贈与・業務委託・雇用など種類が幅広く、取引ごとに見るべき条項が変わります。作成時は当事者・契約目的・金額・支払条件・権利義務・解除・損害賠償を取引内容に合わせて整理し、紙で締結する際は、収入印紙の要否も確認しておきます。
また、法人が個人事業主やフリーランスと契約する場合、契約書は締結後の保管・検索・期限管理まで含めて扱う必要があります。紙の契約書や電子契約のPDFファイルが分散すると、契約条件や更新期限を後から追いにくくなります。
NXワンビシアーカイブズの「WAN-Sign」は法人・個人事業主向けのサービスですが、個人への署名依頼にも対応しています。法人がフリーランスや個人事業主と契約する際も、締結から管理まで進めやすくなります。
契約書を作成して終わらせず、締結後の保管・検索・期限管理まで整えておくと、契約内容を追うときに便利です。紙の契約書や他社の電子契約のPDFファイルも含めて管理体制を見直すなら、ぜひ一度お問い合わせください。








