請負契約をわかりやすく解説!委任・準委任契約との違いや主な契約事項
目次[非表示]
- 1.請負契約の概要
- 1.1.請負契約とは?
- 1.2.請負契約と委任契約・準委任契約の違い
- 1.3.請負契約と雇用契約・派遣契約の違い
- 2.請負契約のメリット
- 3.請負契約のデメリット
- 4.請負契約で明確にすべき主な契約事項
- 4.1.成果物の仕様と品質基準
- 4.2.納期(工期)と納品方法
- 4.3.請負人の禁止事項(秘密保持を含む)
- 4.4.報酬と支払方法
- 4.5.知的財産権の取り扱い
- 4.6.再委託(下請)の可否
- 4.7.契約不適合責任
- 4.8.原材料・費用の負担
- 5.請負契約に関するよくある質問
- 5.1.請負契約の代表的な具体例は?
- 5.2.請負契約書は誰が作成する?
- 5.3.請負契約を締結する際の主な注意点は?
- 6.まとめ

請負契約は、注文者(発注側)が仕事の完成を依頼し、完成した結果に対して報酬を支払う契約です。Webサイト制作や建設工事、システム開発など、成果物の引き渡しを前提とする取引で使われます。
ただし、契約書の表題が「業務委託契約書」であっても、「仕事の完成を約束する内容」であれば、請負契約として整理されます。契約書では、何を完成とするか、完成後にどの手続きで報酬を支払うかまで定めておくと、発注側と受託側の認識のずれを抑えやすくなります。
本記事では、請負契約の概要や委任・準委任契約との違い、契約書に明記したい項目を解説します。
請負契約の概要
請負契約は、成果物の完成と報酬の支払いが結びつく契約です。他の契約形態と比べる前に、まず基本的な仕組みを押さえておきます。
請負契約とは?
請負契約は、完成した仕事の結果に対して報酬を支払う契約です。民法第632条では「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約すること」によって、効力が生じると定められています。
実務で確認するべきなのは、契約書の名称よりも契約内容です。契約担当者は、成果物の内容や納期、検収方法、報酬の支払条件を照らし合わせ、完成した成果に対して報酬を支払う契約であるかを確認します。
契約書名と契約内容がずれやすい例が、「業務委託契約」という名称です。業務委託契約は、請負契約・委任契約・準委任契約などの総称として使われることがあります。契約類型を整理しておくと、責任範囲や報酬条件を契約書に反映しやすくなります。
業務委託契約 | 雇用契約 | 派遣契約 | |||
請負契約 | 委任契約 | 準委任契約 | |||
業務の目的 | 成果物・仕事の完成 | 法律行為となる事務処理 | 法律行為以外の事務処理 | 労務の提供 | 派遣先での労務提供 |
業務の具体例 | Webサイトなどの制作、建設工事など | 契約締結の代理、法律行為の委任など | システム保守運用、コンサル、事務代行など | 自社従業員としての業務 | 派遣先の指示による事務、製造、受付など |
報酬の対象 | 完成した成果物 | 委任された事務処理 | 業務遂行・事務処理 | 労働時間・労務提供 | 派遣労働者の労務提供 |
契約不適合責任 | 負う(民法第559条で第562条以下を準用) | 原則として成果物の完成義務は負わない(ただし成果完成型の場合は成果に対して報酬が発生する/民法第648条の2) | 原則として成果物の完成義務は負わない(ただし成果完成型の場合は成果に対して報酬が発生する/民法第648条の2) | 通常は比較軸となりにくい | 通常は比較軸となりにくい |
指揮命令権 | 発注側は原則として具体的な指揮命令をしない | 委任範囲を示す | 業務範囲を示す | 使用者が労働者に指揮命令する | 派遣先が派遣労働者に指揮命令する |
表で比べると、請負契約は成果物の完成を前提に、仕様・納期・検収条件を設計する契約であるとわかります。契約書を作る段階では、発注側の求める内容が「完成した成果物」なのか「一定の業務遂行」なのかを分け、報酬条件や責任範囲に反映させてください。
出典:e-Gov「法令検索・民法第632条原文」
請負契約と委任契約・準委任契約の違い
請負契約と委任契約・準委任契約は、成果物の引き渡しを約束するか、一定の行為や事務処理を任せるかに違いがあります。請負契約は仕事の完成を目的とし、委任契約・準委任契約は委託された行為や事務処理の遂行を目的とする契約です。
委任契約は法律行為の委託、準委任契約は法律行為にあたらない事務処理の委託を指します。たとえば、保守運用やコンサルティングなどは、契約内容によって準委任契約として整理されることがあります。
請負契約と雇用契約・派遣契約の違い
請負契約と雇用契約・派遣契約の違いは、誰が労働者に指揮命令をするかです。請負契約では、発注側が指定するのは成果物、納期、品質基準などであり、請負人側(受託側)の労働者に作業時間や作業手順を直接指示することは原則として想定されません。
雇用契約では、使用者が労働者に指揮命令を行って労務の提供を受けます。そして派遣契約は、派遣元が雇用する労働者を派遣先に送り、派遣先がその労働者に指揮命令を行います。厚生労働省も、労働者派遣事業について、派遣元が雇用する労働者を「派遣先に派遣して働かせる」ものとしています。
出典:厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」
請負契約のメリット
請負契約には、発注側・受託側の双方にメリットがあります。ここでは、成果物単位で契約する利点を解説します。
委託側のメリット
委託側のメリットは、社内だけでは対応が難しい業務を成果物単位で外部に依頼できる点です。Webサイト制作、ITシステム開発、工事など、専門知識や経験が求められる業務を、請負会社や外部の専門人材に任せられます。
また、成果物に対して報酬を支払う契約にすることで、特定の業務のために人員を常時抱える必要がなくなります。発注側は、作業時間や手順を細かく管理するよりも、成果物の品質・納期・検収条件を基準に取引を進めます。
ただし、このメリットを活かすには、契約前に成果物の仕様、納期、検収条件を明確にしておくことが前提です。どの状態を完成とするかを決めておけば、繁忙期や特定のプロジェクトで外部委託を活用するときも、社内リソースを余計に増やさず対応できます。
受託側のメリット
受託側のメリットは、業務の進め方やスケジュールを自社の裁量で設計しやすいことです。完成までの工程を自社で組み立てられるため、蓄積したノウハウを活かしながら、複数企業の案件で実績を重ねやすくなります。
一方で裁量を持てる分、契約で約束した成果物を完成させる責任は受託側に残ります。工程を自由に組めても成果物の仕様や納期を満たせなければ、報酬請求や契約上の責任をめぐって発注側と認識違いが生じるおそれがあります。
請負契約のデメリット
請負契約は成果物を基準にしやすい一方、進行管理や追加工数で認識がずれやすい契約です。以下、委託側・受託側の注意点を整理します。
委託側のデメリット
請負契約では、発注後に作業時間や手順まで細かく指示しにくいため、発注側は契約前に成果物の仕様、納期、検収基準をそろえておく必要があります。現場の労働者へ直接指示を出す運用が続くと、労働者派遣との区分が問題になりかねません。
進行状況を把握したいときは、週次レポートや定例会議の頻度、進捗報告の方法を契約書に定めておくとトラブル防止につながります。発注側が作業を直接動かす形ではなく、報告ルールを通じて進捗・品質を可視化できる状態にしておきましょう。
また、納期に遅れが出ると自社のプロジェクトや取引先への納品に影響が及びます。外部委託する業務が増えるほど、社内に経験やノウハウが残りにくくなるため、どの業務を社内に残すかもあわせて検討しておきたいところです。
受託側のデメリット
納品・検収を報酬請求の条件にする契約では、完成までに作業量が増えても、その分の費用を当然に請求できるとは限りません。契約時には、次の事項を整理しておくと認識違いを防ぎやすくなります。
追加作業を別費用にする条件
修正回数と無償対応の上限
原材料費や外注費が増えたときの負担者
納品後に請求できる費用と請求できない費用
このように費用に含まれる範囲など、費用に関する事項を先に整理しておくと、納品後に「契約金額に含まれる作業かどうか」を照合しやすくなります。見積書・契約書・変更合意の内容をそろえ、追加作業が発生したときに説明できる状態にしておくと安心です。
請負契約で明確にすべき主な契約事項
請負契約では、成果物や検収、報酬、権利関係を契約時にそろえます。納品後の請求や修正で迷わないよう、主な契約事項を把握しておきましょう。
成果物の仕様と品質基準
成果物の内容、対象範囲、納品形式、品質基準は、請負契約の中心です。契約書や仕様書で「どの状態なら完成といえるか」を示しておくと、検収時の認識違いを抑えられます。
納期(工期)と納品方法
納期や工期は、成果物をいつ、どの方法で引き渡すかを定める項目です。納品日だけでなく、中間確認の時期、検収期間、修正対応の期限も決めておくと、遅延時に責任範囲を確認できます。
請負人の禁止事項(秘密保持を含む)
請負人側(受託側)の禁止事項として、秘密情報の漏えい、無断再委託、目的外利用などを明記します。秘密保持義務は契約期間中だけでなく、契約終了後の存続期間まで決めておくと、取引終了後の情報管理も整理しやすくなります。
報酬と支払方法
報酬関連では、請負代金、支払時期、支払方法、消費税の扱いをそろえて記載します。検収後に一括で支払うのか、着手金・中間金・残金に分けるのかで、双方の資金繰りへの影響も変わります。
知的財産権の取り扱い
デザイン、プログラム、資料などを納品する契約では、著作権や利用権の帰属を明確にします。納品後に改変できる範囲、二次利用の可否、既存素材やノウハウの扱いを分けておくと、権利関係の確認がしやすくなります。
再委託(下請)の可否
請負人側(受託側)が業務の一部を第三者へ再委託できるかを定めます。再委託を認めるときは、事前承諾の方法、再委託先の管理責任、秘密保持義務まで契約書に残しておきます。
契約不適合責任
納品された成果物が契約内容に合わないときは、修補や代替納品・代金減額・損害賠償・契約解除などが問題になることがあります。契約書では、通知期限や修補・代替納品の範囲、無償対応の上限、損害賠償や解除につながる条件を整理しておけば、納品後の対応範囲を契約書から確認できます。
原材料・費用の負担
建設工事や製造委託では、原材料費・外注費・交通費・設備費を誰が負担するか確認します。契約金額に含まれる費用と別途請求できる費用を分けておくと、費用が増えたときの協議に使える根拠として活用できます。
請負契約に関するよくある質問
請負契約の代表的な具体例は?
建設工事・Webサイト制作・システム開発などが挙げられます。ただし、デザイン制作や機械の製造、原稿制作も、「成果物を納品する約束」であれば請負契約として扱われることがあります。作業時間ではなく「何を完成させ、どの状態で引き渡すのか」が契約内容の中心になっているかがポイントです。
請負契約書は誰が作成する?
発注側・受託側のどちらが作成しても差し支えありません。ただし、作成した側に有利な条項が入りやすいため、相手方のひな形を使うときほど条項の偏りを確認しておきましょう。
請負契約を締結する際の主な注意点は?
請負契約では、契約書の名称と実際の運用にずれがないかを確認しておくことが大切です。
偽装請負ではないかを確認する
発注側が現場の労働者へ直接指示していないかを確認します。作業時間や手順まで発注側が細かく管理していると、契約書の名称が請負契約でも、実態とのずれが問題になるおそれがあります。
建設工事の請負の際は、建設業法の記載事項を確認する
工事内容・請負代金・工期・検査方法など、契約書に記載すべき事項を確認します。建設業法上の確認が必要になるため、国土交通省などの公的資料を参照しながら契約内容に抜けがないかをチェックしておきましょう。
【参考】請負契約書に記載すべき内容(国土交通省近畿地方整備局)
紙で契約書を締結する場合は収入印紙の要否を確認する
紙で請負契約書を作成するときは、契約内容や記載金額に応じて、収入印紙が必要になるかを確認します。電子契約を検討している場合は、紙の契約書との印紙税の扱いの違いも押さえておきましょう。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
>>電子契約に印紙税はかかる?印紙税が不要とされる根拠とQ&A
まとめ
請負契約では、契約書本体に加えて見積書、仕様書、検収関連資料、変更合意の履歴まで後から追える状態にしておくのがポイントです。紙の契約書、他社電子契約サービスで締結したPDF、電子契約で締結した文書が分散していると、最新版の契約条件や更新期限、検収時の確認事項を探す手間が増えます。
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