電子契約に印紙税はかかる?印紙税が不要とされる根拠とQ&A


目次[非表示]

  1. 1.電子契約に印紙は不要?
    1. 1.1.課税文書の作成にあたらないため不要
    2. 1.2.電子契約を印刷した場合でも印紙は不要
  2. 2.電子契約に印紙が不要である主な根拠
    1. 2.1.印紙税基本通達
    2. 2.2.国税庁の見解
    3. 2.3.国会質問における政府答弁
  3. 3.電子契約と印紙についてのQ&A
    1. 3.1.収入印紙と印紙税の違いは?
    2. 3.2.紙の契約書を電子化した電子契約書も印紙は不要?
    3. 3.3.電子契約以外にも印紙税の納付が不要なケースはある?
  4. 4.印紙が不要となる電子契約の保存要件
    1. 4.1.①真実性が確保されていること
    2. 4.2.②見読性が確保されていること
    3. 4.3.③マニュアルが設置されていること
    4. 4.4.④検索機能が確保されていること
  5. 5.まとめ


電子契約に印紙税はかかる?印紙税が不要とされる根拠とQ&A


契約書の作成時は印紙税が必要になることがあります。ただし、電子契約の場合は印紙税が非課税とされており、コスト削減が可能です。なぜ電子契約には印紙税が不要とされているのでしょうか。主な理由について確かめておきましょう。今回は、印紙税が必要とされる文書の種類や、電子契約に印紙税が不要とされる主な根拠、よくある疑問、電子契約の保存要件などについてご紹介します。


電子契約に印紙は不要?

電子契約における印紙税の扱いはどのようになっているのでしょうか。まずは、電子契約の印紙に関する基礎知識や印紙税の課税文書一覧、電子契約を印刷した場合の印紙について解説します。


課税文書の作成にあたらないため不要

電子契約の場合、印紙は不要です。印紙税法により、契約書をはじめとする課税文書を作成する場合は、収入印紙の貼付で納税する必要があります。課税文書は書面のみを対象としており、電子データは対象外です。

印紙代の必要な課税文書は以下の通りです。どのような文書に印紙税が必要か確かめておきましょう。

【課税文書の一覧表】

文書の種類

1
  • 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書(不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書など)
  • 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書(土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書など)
  • 消費貸借に関する契約書(金銭借用証書、金銭消費貸借契約書など)
  • 運送に関する契約書(傭船契約書を含む。)(運送契約書、貨物運送引受書など)
2

請負に関する契約書(工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など)

3

約束手形又は為替手形

4

株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券

5

合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書

6

定款

7

継続的取引の基本となる契約書

8

預金証書、貯金証書

9

倉荷証券、船荷証券、複合運送証券

10

保険証券

11

信用状

12

信託行為に関する契約書

13

債務の保証に関する契約書

14

金銭又は有価証券の寄託に関する契約書

15

債権譲渡又は債務引受けに関する契約書

16

配当金領収証、配当金振込通知書

17
  • 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
  • 売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書
18

預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳

19

消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳

20

判取帳


電子契約を印刷した場合でも印紙は不要

電子契約を紙に印刷した場合も、印紙税は非課税とされます。電子契約の原本はデータであり、印刷したものは写しとみなされるため、収入印紙を貼る必要はありません。ただし、電子データで作成した契約書を印刷し、書面契約として捺印・締結した場合は印紙税の課税対象となるため注意が必要です。

民事訴訟法上、電子契約書のデータはそのまま原本として扱うことが可能であるため、基本的に印刷する必要はありません。しかし、電子帳簿保存法の要件を満たすことが前提条件であり、7年間(欠損金がある場合には10年間)の保存義務を守る必要があります。電子帳簿保存法とは、国税関連の帳簿や書類の電子化および保存を認めた法律です。保存義務についても電子帳簿保存法で定められており、契約書・領収書・請求書・見積書などを電子的に作成し保存する際は遵守する必要があります。



電子契約に印紙が不要である主な根拠

契約内容が同じであっても紙の契約書は印紙税が必要で、電子契約は不要です。なぜ電子データになるだけで税金がかからなくなるのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。以下では、電子契約において印紙が不要とされる主な根拠をご紹介します。


印紙税基本通達

課税文書について、「印紙税基本通達」に以下のような記述があります。

第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

【出典】印紙税基本通達44条


これにより、紙に内容を記載して交付することが課税文書の作成とみなされています。電子データの場合は紙を使わず、送信して相手方へ送ります。そのため、電子契約は非課税であると考えられているようです。


国税庁の見解

国税庁は、以下の3つの条件すべてに該当する文書を課税文書とする旨を発表しています。

(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。

(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。

(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

【出典】国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断


上記の通り、「電子契約は印紙税非課税である」と明確に書かれているわけではありません。ただし、「PDFファイル等の電磁的記録に変換した媒体を電子メールを利用して送信した」場合は課税文書とみなされるか否かの質問について、次のように回答しています。

しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

 ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。

【出典】国税庁「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について


この通り、PDF形式の契約書を電子メールで送信した場合や、FAXで送信した場合などは、課税文書を作成したとみなされず、印紙税は不要になると考えられています。電子契約は電子ファイルを利用するため、印紙は必要ないとされます。


国会質問における政府答弁

参議院の答弁書においても、印紙税について以下のように記されています。

五について


 事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。

【出典】参議院「質問主意書


上記の通り、電磁的記録によって作成される文書は印紙税がかからないとの回答があります。国会の答弁を見ても、電子契約は印紙税が不要と判断できるでしょう。



電子契約と印紙についてのQ&A

電子契約と印紙に関して、よくわからない部分が多いという方も少なくありません。こちらでは、電子契約と印紙についてのよくある疑問をご紹介します。疑問点を解消して電子契約導入に活かしましょう。


収入印紙と印紙税の違いは?

収入印紙とは、税金や手数料などを支払うために必要な証票のことです。印紙税は税金であり、印紙税法に基づいて課税されます。

収入印紙は印紙税のほか、国家試験受験手数料や不動産登記の登録免許税などを納める際に使われます。見た目は郵便の切手にも似ているため、よく知らない場合は間違ってしまうことがあるかもしれません。

印紙税を支払う場合は、課税文書に貼付することで納入します。収入印紙の金額は1枚につき1円~100,000円までさまざまです。文書によって印紙税額は異なり、必要な収入印紙の金額も変わってきます。

収入印紙は郵便局や法務局などで買うことができます。ほかにも、コンビニやたばこ屋などで購入可能な場合があります。ただし、場所によっては取り扱う印紙の種類が少ないことがあるため気をつけましょう。大きな郵便局であれば基本的に全種類の収入印紙が用意されています。小さな郵便局の場合は高額な収入印紙を扱っていない場合もあるため注意が必要です。


紙の契約書を電子化した電子契約書も印紙は不要?

最初から電子ファイルを使って契約を交わした場合、印紙税がかかりません。それでは、紙の契約書をスキャナーで取り込んで電子化した場合、税金の扱いがどうなるのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

過去に契約締結した紙の契約書を電子契約に切り替えることは可能です。ただ、課税文書は作成した時点で印紙税の納税義務が成立するとされています。契約書を書面で作成して契約を交わした場合は、その時点では収入印紙を貼付する必要があります。

また、スキャナーの読み取り後に紙の契約書を破棄しても問題はありませんが、印紙税の過誤納があった場合の還付申請が行えないことがあります。過誤納があった事実を証明するためには、該当する紙の契約書の提示が必要です。


電子契約以外にも印紙税の納付が不要なケースはある?

契約書のすべてに印紙税が必要というわけではありません。納付が不要なケースもあるため、事前にチェックしておきましょう。

例えば、取引金額が1万円未満となる契約書であれば印紙税は課税されません。1万円以上の金額になれば収入印紙が必要になります。

また、5万円未満の領収書や雇用契約に関する契約書、リース契約の契約書なども印紙税はかかりません。課税文書であっても例外的に非課税になるパターンもあるため、しっかりと調べておくことがおすすめです。



印紙が不要となる電子契約の保存要件

これまでご紹介した通り、電子契約に印紙は必要ありません。コスト削減のため、電子契約を取り入れたいという方も多いでしょう。

ただし、電子帳簿保存法によって電子契約(電子取引に該当します)の保存要件が定められています。電子契約を導入するなら、要件を守って保存できるかどうかも確認することが重要です。ここでは、電子契約の主な保存要件を紹介します。


①真実性が確保されていること

真実性の確保とは、保存したデータに改ざんが加えられていないことを証明するための要件です。そのため、タイムスタンプを付与し、電子契約がいつ作成されたか、改ざんされていないかといったことを証明しなければなりません。

しかし、訂正・削除履歴が確認できるシステム又は訂正・削除ができないシステムを導入している場合、タイムスタンプの付与は必要ありません。訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、備付け、運用する場合も同様です。


②見読性が確保されていること

見読性とは、電子的に保存されたデータが容易にアクセスできる状態のことです。見読性を確保するためには、任意のタイミングで必要なデータにアクセスできるようにパソコンやディスプレイを設置しておく必要があります。ディスプレイの大きさやパソコンの設置台数の指定はありませんが、最低限文字が解読できる品質を保つことが求められます。


③マニュアルが設置されていること

電子契約を管理するシステムや、機器の使い方を記載したマニュアルを設置する必要があります。システムに限らず、電子データを閲覧するためのパソコンやディスプレイ、印刷するためのプリンターなど、データ閲覧に関わるものすべてにマニュアルを設置しなければなりません。

マニュアルは紙でもオンライン上のデータでも問題はなく、任意のタイミングで閲覧できることが大切です。しかし、自社で開発したシステムの場合は概要書を用意する必要があります。


④検索機能が確保されていること

電子契約を保存する場合、データを検索できる機能を確保しておく必要があります。電子契約システムおよびサービスにおいて、電子取引の履歴から項目を絞り込んで検索できるようにすることが求められます。具体的には、取引年月日及び取引金額については範囲を指定した検索ができる必要があり、かつ、取引年月日、取引相手、取引金額などの項目から2つ以上を組み合わせて検索できなければなりません。

ただし、税務調査等の際に電子取引のデータの提供が可能になっている(ダウンロード可能な)場合には、範囲指定や組合せによる検索機能は不要です。また、提供可能にしている事業者の売上高が5000万円以下の場合には検索機能自体が不要になります。



まとめ

電子契約における印紙の必要性や、不要とされる根拠、印紙に関するQ&A、電子契約の保存要件などをご紹介しました。電子契約は基本的に印紙税が不要です。業務の効率化やコスト削減など、企業にとってさまざまなメリットをもたらす可能性があります。

また、電子契約を改めて紙に出力して書面の形で保存する必要はありませんが、電子帳簿保存法に沿った保存・保管が求められます。要件に沿った保存ができていない場合は、法的罰則を受ける可能性もあるため注意が必要です。

法律を守りながら正しく電子契約を導入するためには、信頼できる電子契約サービスを利用することがおすすめです。サービスをお探しの場合は、ぜひ「WAN-Sign」をご検討ください。

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監修:弁護士 宮内宏
監修:弁護士 宮内宏
所属 宮内・水町IT法律事務所 経歴 東京大学工学部電子工学科及び同修士課程卒業。 日本電気株式会社(NEC)にて、情報セキュリティ等の研究活動に従事。 東京大学法科大学院を経て法曹資格取得。第二東京弁護士会所属。

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