契約書の作り方|記載事項や作成の流れ、作成時のポイントは?
目次[非表示]
- 1.【契約書の作り方】①契約書の主な記載内容
- 1.1.契約書の基本構成
- 1.2.契約書に記載する一般条項
- 1.3.契約書に記載しても無効になる事項
- 2.【契約書の作り方】②契約書を作成する流れ
- 2.1.Step1.契約内容を確認
- 2.2.Step2.契約書のドラフトを作成
- 2.3.Step3.契約書の確認・修正とリーガルチェック
- 2.4.Step4.契約書の印刷・製本
- 2.5.Step5.契約書へ署名・捺印
- 3.【契約書の作り方】③契約書を作る際のポイント
- 3.1.契約内容を当事者間で確認する
- 3.2.あいまいな表現は避ける
- 3.3.インターネット上のテンプレートをそのまま使用しない
- 3.4.可能な限り具体的な数値を記載する
- 3.5.書面での契約と電子契約の違いを把握する
- 4.契約書の作成のポイントを押さえて、ビジネスの効率化を進めましょう
契約書は法的に重要な文書であり、ビジネスでの取引において不可欠です。当事者間の取り決めを明確にし、各当事者の権利や義務を保護する役割を果たします。
本記事では、効果的な契約書の作成方法について詳しく解説します。また、契約書に必要な要素や作成手順、注意すべきポイントについても詳しく紹介します。
【契約書の作り方】①契約書の主な記載内容
契約書はビジネス取引や法的関係を明確にする重要な文書です。適切に作成するためには、特定の要素や条項が正確に記載されていることが不可欠です。ここでは、契約書に記載すべき主な内容をご紹介します。
契約書の基本構成
契約書は通常、以下の要素で構成されます。
・タイトル
冒頭には契約書のタイトルを記載します。「売買契約書」「雇用契約書」「業務委託契約書」「代理店契約書」「譲渡契約書」「秘密保持契約書」のように、この契約書がどういう内容の契約書であるかを端的に示す要素です。企業によっては、分類しやすいよう、タイトルに契約書番号を付けることもあります。
・前文
次に、契約の本文に入る前に、誰と誰の間で契約を締結するのかを明示する文章が入ります。一般的に「株式会社△△△△(以下「甲」という)と株式会社××××(以下「乙」という)は、○○に関して、以下のとおり□□契約(以下「本契約」という)を締結する。」のように記載し、契約当事者を定義します。なお、当事者が3名以上いる場合は「甲」「乙」の後は、「丙」「丁」「戊」「己」「庚」「辛」「壬」「癸」の順で使用します。ここで用いる甲や乙はあくまで記号として使っており、上下の意味はありませんが、契約相手を気遣って相手方を「甲」、自社側を「乙」とすることがあります。ここで契約の当事者や、契約の略称を定義しておくことで、本文が読みやすくなります。
・本文
本文では具体的な契約内容を、第1条、第2条…のように、箇条書きの条文形式で記載していきます。必要に応じて、条文の内容をカッコ書きで記載したり、「条」の後に「項」や「号」を設けて記載したりすることがあります。「項」は(1)、(2)…、「号」は①、②…などと表記し、1項については表記を省略することが一般的です。
<記入例>
(委託業務)
第1条 甲は乙に◎◎に関する業務(以下「本件業務」という)を委託し、乙はこれを受託し、誠実に業務を遂行する。
(委託料)
第2条 本件業務に関する報酬額は**万円とする。
(2)交通費やその他諸経費の取り扱いについては、別途甲乙協議のうえ決定する。
(3)甲は、乙に対し、当月の委託料を翌月末日までに支払う。
・後文(後書き)
以下のように、契約書の枚数や保管について記載します。
<記入例>
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印うえ、各1通を保有する。
・契約締結日
契約を締結した日付を記載します。年は和暦(元号)と西暦のどちらでも構いません。
・署名・捺印
当事者が契約に同意した証として署名や捺印を行います。なお、記名押印は印字された氏名に押印する方式で、署名捺印は手書きで署名を行ったうえで捺印する方式を指します。印章は重要度に応じて実印、認印などを使い分けます。電子契約の場合は電子サインを付与します。
契約書に記載する一般条項
一般条項とは、契約の種類にかかわらず、規定されることの多い条項のことです。具体例として、以下のような条項が挙げられます。
・契約期間
契約の有効期間を記載します。
・守秘義務
経営戦略や顧客情報などの秘密情報の流出・漏えいを防止するために規定します。秘密情報にあたるものを定義したうえで、第三者への開示および目的外利用の禁止や、契約後も守秘義務の効力を有すること、違反時のペナルティなどを定めておきます。
・契約の解除・解約
債務不履行などのケースを想定して、契約を途中で解除・解約できるよう、契約解除事由などを定めておきます。双方合意の解約や事前の催告付きの解除のほか、重大な契約違反があった場合には通知せずに即刻解除できる無催告解除についても記載しましょう。
・期限の利益の喪失
破産など資産状況の悪化が明らかになった場合に、金銭支払い義務を期限まで待ってもらえる利益を失うことを規定する条項です。
・反社会的勢力の排除
契約の当事者が反社会的勢力か、それに類する組織であることがわかればすぐに契約を解除できるようにする条項です。現在ではほぼすべての企業の契約で必須となっています。
・損害賠償
債務不履行などによって生じた損害に対し、損害賠償を請求できるようにするため、損害賠償額について規定する条項です。
・危険負担
互いの当事者に責任のないリスクについてどちらが負担するかを定める条項です。例えば、売買契約で納品前に生じた滅失・毀損などのリスクは原則売主の負担とし、納品後は原則買主の負担とする、といった内容になります。
・契約不適合責任
売買契約などで契約内容に適合していない納品があった場合、契約解除権、損害賠償請求権のほかに追完請求権、代金減額請求権が生じることを規定する条項です。
・準拠法・合意管轄
近年はビジネスのグローバル化が進んでいます。そのため、トラブルが生じた場合に準拠する国(「日本法を準拠法とする」など)や、提訴する裁判所について、あらかじめ当事者合意のうえ決めておく条項です。
・協議
契約締結後に想定外の事態が生じた場合などに、対応のため当事者間で協議を行う旨を明記しておく条項です。
契約書に記載しても無効になる事項
法律で禁止されている事項は、契約書に記載しても効力がありません。具体的には公序良俗や法律に違反する条項が該当します。例えば、利息制限法による法定利息を支払う契約は、双方が合意して契約を締結しても、法定利息を超える部分については無効となります。また同様に、殺人など犯罪行為の依頼や愛人契約、相場を大幅に超える過度な違約金といった内容は、公序良俗に反するものとして無効になります。
【契約書の作り方】②契約書を作成する流れ
契約書を効果的に作成するためには、特定の手順を追うことが重要です。適切な準備と以下のステップに則りながら、契約書の作成プロセスを進めていきましょう。
Step1.契約内容を確認
まず、契約書を作成する前に当事者同士で打ち合わせを行い、契約内容を明確にしておきます。当事者間での合意事項や条件などを詳細に整理しておきましょう。
Step2.契約書のドラフトを作成
次に、合意・確認した内容をもとに契約書のドラフト(下書き)を作成します。この時点では契約年月日や記名押印などは行いません。なお、ドラフトの作成は、法律に定めがある場合を除いて当事者のどちらが作成しても構いません。
Step3.契約書の確認・修正とリーガルチェック
作成したドラフトを当事者間で確認し、必要に応じて修正を加えます。相手からの修正依頼があれば、合意内容と相違がないか、自社に不利な内容に変更されていないかなどを確認します。その際は法的な専門知識を持つ者によるリーガルチェックを行うようにすれば、リスクを最小限に抑えることができます。
Step4.契約書の印刷・製本
当事者双方の確認・修正が終わり、契約書の文面が確定したら、契約書を印刷します。複数枚で構成される場合は製本します。製本する際は、契約書を重ねて左側をホッチキス止めした後、製本テープで補強するのが一般的です。なお、電子契約の場合は、印刷・製本だけでなく郵送の手間も不要なため、より迅速に契約を締結できます。
Step5.契約書へ署名・捺印
最後に、契約書に必要な当事者の署名や捺印を行います。電子契約の場合は電子署名サービスを利用することになります。基本的に契約書は2通作成するため、同じ契約書であることを示せるよう、各契約書の一部を重ねて割印を押します。製本した契約書の場合は、製本テープと契約書の境目やページをまたぐように割印を押すことが一般的です。なお、課税文書に分類される契約書の場合は、収入印紙の貼り付けが必要になりますが、電子契約であれば収入印紙は不要です。
【契約書の作り方】③契約書を作る際のポイント
契約書の作成にあたり、注意すべきポイントを押さえることが重要です。正確で明確な契約書を作成するためには、以下のポイントに留意しましょう。
契約内容を当事者間で確認する
契約書に署名・捺印がされていれば、たとえ一方が詳細を理解しないまま締結していたとしても、契約内容に拘束されることになります。その後のトラブルを避けるためにも、あらかじめ争点になりそうな箇所については、事前に問題ないか確認しておくことが重要です。
あいまいな表現は避ける
契約書の本文であいまいな表現や漠然とした条件を記載してしまうと、解釈の違いが生じてきます。そのため複数の解釈ができるような表現は避けましょう。契約書は裁判時に証拠になるため、違う解釈ができる文面のままでは、トラブル発生時に主張が認められなくなるおそれがあります。また同様に、業界用語や省略した言葉なども解釈の違いを生んでトラブルの元となり得るため、使わないようにしましょう。
インターネット上のテンプレートをそのまま使用しない
一般的なテンプレートは参考にはなりますが、そのまま使用してしまうと、細かい契約の条件に合致しなかったり、重要事項が抜けたりしてしまうおそれがあります。必ず自社の業務や状況などに合わせてカスタマイズしましょう。
可能な限り具体的な数値を記載する
金額や期間、数量など、具体的な数値を契約書に記載することで、当事者間の義務や権利の詳細が明確化されます。不利益を被ることが無いように、具体的に記載しておくことが重要です。
書面での契約と電子契約の違いを把握する
従来の紙による契約書と比較して、電子契約にはいくつかの利点があります。例えば、課税文書に当たる契約書であっても収入印紙が不要であり、契約書の印刷・製本・郵送も不要なためコストの削減につながります。また、契約書という物理的な書類ではなく、電子データのやり取りとなるため、契約締結のスピードアップも図れます。電子契約の導入には相手方が対応することや業務フローの変更も必要になりますが、電子帳簿保存法改正などの影響もあって、電子契約自体は増加傾向にあるため、これを機に紙から電子への切り替えを検討しても良いでしょう。
契約書の作成のポイントを押さえて、ビジネスの効率化を進めましょう
本記事では、契約書の重要性とその作成方法について紹介しました。契約書は法的に拘束力のある文書であり、ビジネス取引において不可欠です。近年は、コストや業務負担の軽減やスピーディーな契約締結を行う観点から、電子契約が注目を浴びています。
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