契約不履行が起こったときはどうすれば良い?防ぐ方法と注意点


目次[非表示]

  1. 1.契約不履行とは?
  2. 2.契約不履行の種類
    1. 2.1.履行不能
    2. 2.2.履行遅滞
    3. 2.3.不完全履行
    4. 2.4.履行拒絶
  3. 3.契約不履行が起こったときの対処法
    1. 3.1.履行の請求
    2. 3.2.損害賠償の請求
    3. 3.3.契約の解除
    4. 3.4.不完全履行の場合
  4. 4.契約不履行を防ぐ方法
    1. 4.1.契約不履行時のリスクを明文化する
    2. 4.2.契約締結前に契約内容を確認する
  5. 5.契約不履行について押さえておくべき注意点
    1. 5.1.時効がある
    2. 5.2.損害賠償できるパターンを押さえておく
    3. 5.3.債務不履行責任の追及時には適切な請求の種類や手続きを選択する
  6. 6.まとめ


契約不履行が起こったときはどうすれば良い?防ぐ方法と注意点


契約不履行は、会社に大きな損害を与える可能性があり、解決までに数年かかるというケースもあります。できれば経験したくないトラブルですが、万が一、契約不履行が起こってしまった時には、適切に対処し、会社への影響を最小限に食い止めたいところです。そのためには、事前のシミュレーションが有効です。

この記事では、契約不履行が起こった時の対処法から、注意すべきポイント、事前に防ぐ方法まで、詳しく解説します。


契約不履行とは?

まずは、契約不履行の基本的な定義を確認しましょう。「契約不履行」とは、契約によって約束した内容を、当事者の一方が守らないことです。民法415条においては「債務不履行」と規定されています。

ちなみに「契約」とは、当事者双方が法的な責任を負う約束のことです。そのため、契約をすると、当事者にはそれぞれ「債権」と「債務」という責任が発生します。

具体例を挙げます。

たとえば、A電気店でBさんがパソコンを20万円で購入した場合、売主であるA電気店と、買主のBさんの間には「売買契約」が成立し、それぞれ次のような法的な責任を負うことになります。


A電気店

Bさんにパソコンを引き渡す債務

Bさんからパソコン代金20万円を受け取る債権

Bさん

A電気店に代金20万円を支払う債務

A電気店からパソコンを引き渡してもらう債権


この例では、A電気店がパソコンを引き渡さない場合、A電気店は契約不履行となります。また、BさんがA電気店にパソコン代金20万円を支払わない時は、Bさんが契約不履行となります。


出典:e-Gov法令検索「民法」

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

出典:茨城県「契約の基礎」

https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/syose/navi/learn/agreement.html



契約不履行の種類

では、どんな状態であれば、契約不履行となるのでしょうか。ここからは、契約不履行の種類を紹介します。

主に次の4種類です。


履行不能

「履行不能」とは、契約の履行が不可能な場合を指します。例えば前出の見出しの例であれば、パソコンを引き渡す前に壊れてしまった場合や、代金を支払うべきBさんが死亡した場合など、物理的に履行ができない状態です。


履行遅滞

対して「履行遅滞」とは、履行ができる状態であるにも関わらず、契約で規定した期限までに債務の履行をしない場合をいいます。ちなみに期限の定め方は民法412条で次の3種類が定められており、種類によって履行遅滞になる時期が異なります。


種類
内容
履行遅滞になる時期
①確定期限
履行時期を具体的に決めている
例:9月30日、12月中など
期限を経過した時
例:9月30日が期限の場合は、10月1日
②不確定期限
履行の期限は確実に到来するが、具体的な時期が決まっていない
例:梅雨が明けたら、A電気店はBさんにパソコンを引き渡す。
a、bいずれか早い時
a 期限の到来した後に、債務者が債権者から履行の請求を受けた時
例:梅雨明け後、Bさんからパソコンの引き渡しを請求されたなら、その時点
b 債務者が期限の到来を知った時
例:A電気店がBさんから請求される前に、梅雨明けを知ったなら、知った時
③期限を定めなかった時
履行期限を決めていない
例:A電気店からBさんに、いつパソコンを引き渡すか決めていない
債務者が債権者に履行の請求を受けた時
例:Bさんからパソコンを引き渡すよう請求された時


不完全履行

「不完全履行」とは、契約の履行はされているが、一部不完全な履行内容だった場合です。先ほどの例では、A電気店が引き渡したパソコンの液晶パネルが割れていた場合などが不完全履行にあたります。


履行拒絶

「履行拒絶」は、債務者が明確に履行を拒絶する意思表示をしている状態です。履行自体はできるのに、債務者側に履行する意思が全くなく、さらにその意思が覆る見込みもない場合、たとえば履行拒絶を書面で伝えた場合などです。

上の例では、A電気店がパソコンを引き渡す意思はない旨、書面を送ってきた場合が履行拒絶の状態にあたります。


出典:e-Gov法令検索「民法」

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089


契約不履行が起こったときの対処法

契約不履行は正しく対処することで、スピーディーに解決できる可能性も高くなります。ここからは、契約不履行が起こったときの対処法を解説します。

契約の不履行の発覚後、初動として考えられるのが、相手方への「履行の請求」です。


履行の請求

まずは契約の当事者間の協議等で相手に履行を促しますが、それでも履行しない場合は、「強制執行」の手続をとることになります。強制執行とは、債権者の申し立てにより、裁判所が契約の履行を強制的に実現させる手続きのことです。強制執行には、直接強制、代替執行、間接強制の3種類があります。


直接強制

直接強制とは、裁判所が債務者の財産を差し押さえ換金して債権者に引き渡すなど、債務者の意思に関わらず、強制的に債務を履行させる方法です。


代替執行

代替執行とは、裁判所が指定した第三者に債務者に変わって契約を履行させ、履行にかかった費用を債務者に請求する方法です。たとえば、自社工場の機械の修理をする債務を、裁判所が指定した他の業者が行い、修理費用について本来修理を履行する義務のある債務者から取り立てるといった方法です。


間接強制

間接強制とは、「履行するまで1日〇円支払うこと」というように、債務者にプレッシャーをかけ、間接的に契約の履行を強制する方法です。


その他

債権者が債務者の財産について、抵当権などの担保権を持っている場合は、「担保権実行手続」という方法もあります。よくあるのは、住宅ローンを長期に渡って滞納している債務者の抵当不動産を、住宅ローンの債権者である保証会社が強制的に売却し、売買代金を返済に充てるといったケースです。

なお、上記のような強制的な履行の請求をしても、債権者にまだ損害が残っていれば、重ねて損害賠償請求をすることも可能です。



損害賠償の請求

「損害賠償の請求」は、相手が契約を履行しなかったために生じた損害を、金銭で支払わせようとすることです。損害賠償として請求できる範囲は、契約不履行によって生じた損害、または、特別な事情がある損害であっても、債務者が発生を予期すべきだったときです(民法416条)。

なお、いつでも請求できるというわけではなく、時効もあります。


損害賠償請求権の時効

以下の2点が民法に定められており、いずれか早い方が経過した際に時効が成立します。

  1. 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき。
  2. 債権者が権利を行使できる時から10年間(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の場合は20年間)行使しないとき。


数年にわたる事案の場合、担当者の異動等で時効の情報が抜け落ちてしまい、気がつけば損害賠償請求できる権利を失ってしまうというケースもあるかもしれません。部署内の情報共有を密にし、十分気をつけましょう。



契約の解除

また、債権者は債務者の同意なしで契約の解除を行うこともできます。

目的は、いつまでも履行されない契約に縛り付けられる不利益からの債権者の救済です。

ただし、債権者に責められるような落ち度があった場合は、原則、契約の解除はできません。

たとえば、BさんはA電気店とのパソコンの売買契約を解除したいが、店舗でパソコンを試しに使用した時に誤って落として破損させてしまった場合、Bさんは契約を解除できず、代金を支払う義務は免れません。


不完全履行の場合

次に、履行はされたものの、一部不完全だった場合の対処法を紹介します。


履行の追完請求

債権者は、すでに履行された不完全な部分に対して、債務者に補修や代わりの物、不足分の引き渡しなどを請求することができます。


代金の減額請求

なお、追完請求をした結果、債務者が期限内に対応しなかった場合、補修や代替物の提供が不可能な場合、債務者に追完請求を拒絶された時などは、債権者は代金の減額請求もすることができます。


出典:e-Gov法令検索「民法」

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089


契約不履行を防ぐ方法

契約不履行が起こっても、債権者ができる対処法は複数あります。しかし、できることなら、遭わずに済ませたいものです。ここからは、事前に対策できる防止法をお伝えします。

契約を進める際は、契約不履行があった場合を想定したうえで臨みましょう。契約相手の経営状態や債務状況などの情報をあらかじめ収集・分析する「与信管理」も必須です。そのうえで、準備段階でできる防止法は下記の通りです。


契約不履行時のリスクを明文化する

契約書には、契約不履行時の損害賠償額など、具体的なリスクを盛り込むのもおすすめです。相手側に契約を履行しなかった場合のリスクの大きさを実感させることができ、無責任な不履行の抑止につながります。ただし、賠償額が不当に高く設定されていた場合などは、民法上「公序良俗に反する」として無効になってしまうので、注意が必要です。

また「どのような状態を不履行だとするのか」といった契約不履行の定義や契約解除の条件などを記載しておくのも有効です。その他、契約書作成時のポイントはどんな細かい内容でも文字化しておくという点です。「口約束」は、言った言わないの不毛な争いを誘発するだけで、トラブルを大きくする可能性があるからです。


契約締結前に契約内容を確認する

契約書の内容が固まったら、あらためて記載内容の確認をしましょう。契約金額や納期などで認識のズレがあった場合は、相手側と十分すり合わせしておき、双方納得のいく内容に適宜訂正することも必要です。



契約不履行について押さえておくべき注意点

ここまで契約不履行が起こったときの対処法、事前に防ぐ方法を確認してきましたが、その他にも、ぜひ押さえておきたい注意点があります。

次の3つの点を押さえておくと、実際に契約不履行に遭ったときも落ち着いて対処でき、自社にとって最善の解決法を導き出せる可能性も高まります。1つ目の注意点から見ていきましょう。


時効がある

契約不履行に基づく損害賠償請求権の時効は、前述した通り以下2つのパターンがあり、①、②いずれか早い方の経過により、損害賠償請求権は時効により消滅します。


①権利を行使できることを知った時から5年

②権利を行使できる時から10年(人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権は20年)


つまり、最短5年で、相手側に損害賠償請求ができなくなるのです。ちなみに、①の5年の時効期間は、2020年の民法改正で新設されました。


損害賠償できるパターンを押さえておく

次に損害賠償についてです。

損害賠償請求をするには、次の条件を満たす必要があります。


①債務者が契約上の履行の義務を果たしていない

②債務者に責任のある契約不履行であり、なおかつ債務者が自身に責任がないことを立証できない場合

③発生した損害と契約不履行に明確な因果関係が認められること


つまり、契約で取り決めた範囲内の事柄につき不履行があり(①)、不履行の責任は債務者にあり、さらに債務者側が自分の責任ではないことを立証できず(②)、発生した損害は、明らかに契約不履行が原因である(③)。この3点を満たすことで、初めて相手に損害賠償請求ができます。


債務不履行責任の追及時には適切な請求の種類や手続きを選択する

契約不履行の相手方への責任追及の方法も、1つではありません。それぞれ特徴がありますので、不履行の状況に応じて、適切な方法を選ぶようにしましょう。


協議(示談)

「協議(示談)」は、裁判所を通さず、当事者間で協議して、損害賠償額などを決めることです。一般的には、まずは示談で解決を目指すケースが多いです。

解決のための条件面など、事前に弁護士などの専門家に相談したうえで協議に臨むと、スムーズに進む可能性が高くなります。ただし、一度示談が成立すると、原則、変更や取り消しができないため、注意が必要です。


ADR(裁判外紛争解決手続)

「ADR」とは、公正で中立な第三者が間に入り、話し合いを通じて解決を図る手続きをいいます。こちらも裁判によらない形式なので、内密にしておきたい個人情報などを法廷で公開したくない場合などはおすすめです。

ADRには、「民事調停」「裁判上の和解」など裁判所が行う司法型ADRと、国民生活センターの紛争解決委員会など行政機関等が行う行政型ADR、地域の弁護士会などが行う民間型ADRがあります。

手続きの大まかな流れは、債務不履行の内容に応じて、適宜選択してADR事業者に申し立てを行います。その後、ADR事業者に選任された「調停人」や「あっせん人」が間に入り、申立者と相手方と三者で話し合いを行います。結果、合意に至れば手続きは終了、合意できなければ、次の段階に進みます。


調停

「調停」は、裁判所の調停機関が間に入り、勝ち負けではなく、双方の話し合いでトラブルの解決を図る手続きです。裁判官の他に、一般市民から選ばれた2人以上の調停委員が間に入ります。話し合いの場には裁判官が入りますが、裁判と違って、手続きが簡単かつ費用も低額で、非公開のためプライバシーも守られるというメリットがあります。さらに、2~3回の調停を経て、調停成立まで約3か月以内と、短期間での解決を目指せるため、当事者にかかる負担が少ないのも良い点です。


訴訟

ここまでは、基本的に当事者同士の話し合いがベースでしたが、それでも解決しない場合は、裁判に訴えることになります。つまり「訴訟」です。

「訴訟」とは、裁判を起こす「原告」と、その相手方の「被告」双方の言い分を裁判官が聞き、また証拠を調べ、判決によって解決を目指す手続きです。通常は弁護士に依頼して進めていきますが、基本的に解決するまでに日数がかかります。さらに、相手側が判決を不服として控訴すれば、何年もかかることもあります。手数料や弁護士費用など、裁判にかかる費用も、高額になるケースが多いです。

このため、できることなら訴訟によらず、前段階の手続きで解決したいところです。

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出典:法務省「消滅時効に関する見直し」

https://www.moj.go.jp/content/001255623.pdf

出典:政府広報オンライン「法的トラブル解決には「ADR裁判外紛争解決手続き」

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201507/2.html

出典:裁判所「民事調停」

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_04_02_10/index.html

出典:裁判所「裁判手続 簡易裁判所の民事手続Q&A」

https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_kansai/index.html


まとめ

契約不履行とは、契約で約束した内容を当事者の一方が守らないことをいい、対処法、防止法も複数あります。それぞれの状況に応じて、最適の方法を選択することが、解決への早道です。時効や損害賠償請求のできる場合、できない場合も把握したうえで、まずは、契約不履行の起こりにくい契約締結を目指しましょう。

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