工事見積書とは?役割や構成、工事費の内訳、作成時のポイントは?
目次[非表示]
- 1.工事見積書(建築見積書)に関する基礎知識
- 1.1.工事見積書とは?
- 1.2.工事見積書の役割
- 1.3.工事見積書を作成する流れ
- 1.4.工事見積書の構成・記載項目
- 2.工事見積書の工事費の主な内訳
- 3.工事見積書を作成する際のポイント
- 3.1.内訳を階層に分けて記載する
- 3.2.条件の詳細をしっかり記載する
- 3.3.見積書の作成日と有効期限を記載する
- 3.4.工事完了後の保証内容を明記する
- 3.5.免責事項を明記する
- 3.6.追加工事の取り扱いについて明記する
- 3.7.国土交通省のひな形(テンプレート)を参考にする
- 3.8.見積書作成ソフトを活用する
- 4.まとめ

建設工事の取引では、契約前に発注者が提示した条件をもとに工事業者が「工事見積書(建築見積書)」を提出します。両者が工事見積書で内訳と金額を確認し、認識を統一させることがスムーズな契約締結やトラブル防止につながります。
この記事では、工事見積書に関する基礎知識や、工事見積書に記載する工事費の内訳、書類作成のポイントなどを解説します。建設業界で契約業務を取り扱うご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
工事見積書(建築見積書)に関する基礎知識
初めに、「工事見積書」に関する基礎知識を解説します。契約書の役割や、書類の構成・記載項目を把握しておきましょう。
工事見積書とは?
「工事見積書」とは、建設工事の総額や工事費用の内訳を記載した書類です。発注者が提示した工事の条件に基づいて、工事業者が必要な金額を算出して見積書を作成します。工事請負契約を締結する前に工事費用の詳細を確認するための重要な書類です。
工事見積書の役割
工事見積書には、発注者と工事業者が工事の条件や費用を明確にして認識を統一し、信頼関係を構築する役割があります。適切に書類を作成することで建設工事のトラブル防止につながります。また、社内外へ情報を共有する役割や、価格交渉の材料としての役割なども挙げられます。
工事見積書を作成する流れ
工事見積書を作成する際は、まず発注者が見積条件書や設計図面などの資料を工事業者に提示します。工事業者は提示された条件に基づいて建設工事の総額を算出し、発注者へ工事見積書を提出します。その後、発注者が工事見積書を確認し、両者が内容に合意した場合は工事請負契約の締結へ進む流れが一般的です。書類の内容に問題がある場合は、必要に応じて両者で調整や修正対応を行い合意形成を目指します。
工事見積書の構成・記載項目
工事見積書は、「見積書表紙」「見積内訳書」「見積条件書」から構成されます。ここでは、公共建築工事見積標準書式に基づいてそれぞれの記載項目をご紹介します。
見積書表紙
見積書表紙には、「見積金額」「現場労働者に関する法定福利費」「対象工事に係る項目」「作成者に係る項目」を記載する必要があります。各項目の詳細は以下の通りです。
記載項目 | 備考 |
見積金額 | 合計金額を記載する |
現場労働者に関する 法定福利費 | 雇用保険・健康保険・介護保険・厚生年金保険の法定の事業主負担額を記載する |
対象工事に係る項目 | 工事名または施設名・工事場所・見積発行年月日・見積有効期限・受渡方法・支払条件を記載する |
作成者に係る項目 | 製造業者または専門工事業者等名・所在地・見積作成者名・見積作成者連絡先を記載する |
【出典】「公共建築工事見積標準書式(建築工事編)(令和7年改定)」(国土交通省)
見積内訳書
見積内訳書は、各項目の金額の内訳を記載した書類です。以下の記載項目について、金額の内訳を明記する必要があります。
【記載項目】
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【出典】「公共建築工事見積標準書式(建築工事編)(令和7年改定)」(国土交通省)
見積条件書
見積条件書は、工事の発注者が見積前に作成する書類です。発注者の意図や希望条件を正確に工事業者へ伝えるために作成します。以下の項目を記載する必要があります。
【記載項目】
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【出典】「公共建築工事見積標準書式(建築工事編)(令和7年改定)」(国土交通省)
工事見積書の工事費の主な内訳
工事見積書には、具体的にどのような工事費を記載すれば良いのでしょうか。ここでは、工事見積書に記載すべき工事費の主な内訳をご紹介します。
工事見積書における工事費の内訳の分類
材料費
工事に必要な材料の購入費用です。具体的には、材木・鉄骨・コンクリート・ガラス・塗料などの費用が該当します。材料の単価と数量に基づいて算出します。
労務費
工事現場で働く作業員の給与や手当などの人件費です。作業員の人数と作業工数に基づいて算出します。
経費
材料費や労務費以外で工事に必要な費用です。具体的には、工事で使う重機の費用、工事中に使用する水道光熱費などが該当します。
工事見積書における工事費の主な工種
仮設工事
安全な工事現場を整備する「仮設工事」の費用です。例えば、仮設トイレ・現場事務所・仮設足場などの設置費用が該当します。
躯体工事・土工事
建物の構造部分を作る「躯体工事」や、地面を整える「土工事」の費用です。躯体工事の一例としてコンクリート打設工事、土工事の一例として地盤改良工事が挙げられます。
仕上工事(内装工事)
建物の内装を仕上げる「仕上工事(内装工事)」の費用です。具体的には、建物内部の壁・天井・床・ドア・窓などの工事費用が該当します。
設備工事
建物に設備を導入する「設備工事」の費用です。電気設備工事・空調設備工事・給排水衛生設備工事などの費用が挙げられます。
外構工事
建物周辺の外構を仕上げる「外構工事」の費用です。工事内容の例として、玄関アプローチの舗装工事、駐車場やフェンスの設置工事などが挙げられます。
諸経費
「諸経費」とは、間接的に工事に関わる費用です。具体的には、作業車両のガソリン代、事務所の家賃、通信費などが該当します。
工事見積書を作成する際のポイント
最後に、工事見積書の書き方のポイントを解説します。工事見積書を作成する際は、トラブル防止の観点から以下のポイントに注意しておきましょう。
内訳を階層に分けて記載する
工事見積書の内訳は項目数が膨大になるため、内容を整理するために階層に分けて記載することが一般的です。まずは「電気設備工事」「空調設備工事」「給排水衛生設備工事」といった工事区分に分けた上で、さらに詳細な作業に分けて整理します。
条件の詳細をしっかり記載する
工事見積書では発注者・工事業者間の認識の齟齬をなくすために、工事条件を具体的かつ詳細に記載しましょう。トラブル防止の観点から、以下の項目を明確に示して合意形成を目指すことが大切です。
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見積書の作成日と有効期限を記載する
工事見積書には作成日を明記するとともに、見積内容の有効期限を設定して記載しておくことが大切です。見積書の有効期限には法的な決まりはないものの、工事見積書の場合は一般的に1カ月程度に設定されるケースが多いです。
工事完了後の保証内容を明記する
工事完了後の責任範囲を明確化して発注者との信頼関係を構築する観点から、工事見積書には保証内容を明記すると良いでしょう。具体的には、施工後の保証期間や保証対象となる工事などを記載しておきます。
免責事項を明記する
工事見積書には、リスク防止の観点から免責事項を明記するのが望ましいといえます。例えば、自然災害による工事の中断・遅延のほか、法令改正にともなう工事内容の変更などに備えて、あらかじめ免責事項を盛り込んでおきましょう。
追加工事の取り扱いについて明記する
建設工事においては、発注者の要望や予期せぬトラブルなどの事情から追加工事が発生するケースが珍しくありません。そのため、工事見積書には追加工事が発生した場合の対応方法を明記しておきましょう。
国土交通省のひな形(テンプレート)を参考にする
国土交通省のサイトでは「公共建築工事見積標準書式」が公開されています。工事見積書のひな形(テンプレート)の作成にあたり、参考にすると良いでしょう。なお、完成したひな形は弁護士など法律の専門家によるチェックを受けることをおすすめします。
【参考】「公共建築工事見積標準書式」(国土交通省)
見積書作成ソフトを活用する
建設業向けの見積書作成ソフトには、建設プロジェクトに特化した機能が搭載されています。積算や入力補助の機能によって見積書を効率的かつ正確に作成できるため、活用すると良いでしょう。
まとめ
ここまで、工事見積書に関する基礎知識、工事見積書に記載する工事費の内訳、書類作成のポイントなどをお伝えしました。工事見積書には、工事請負契約の締結前に詳細な工事費用を確認し、発注者と工事業者の認識を統一する重要な役割があります。スムーズな契約締結へ向けて、適切に書類を作成しましょう。NXワンビシアーカイブズの電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」は、建設工事に関わる各種契約締結に対応できます。契約業務の効率化へ向けて電子契約の導入を検討しているご担当者様は、どうぞお気軽にお問い合わせください。







