不動産売買時に収入印紙は必要?契約書に貼る印紙代の一覧と節約方法

課税文書に該当する「不動産売買契約書」などの書類を作成する場合、作成者には収入印紙の貼付によって印紙税を納める義務があります。不動産売買で発行される各種契約書の中には、課税文書に該当する書類があるため、法的なルールを守って納付の手続きを進めましょう。
(納税義務者)
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
2 一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。
【出典】「印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)」(e-Gov 法令検索)
この記事では、不動産売買で締結する各種契約書に貼付する収入印紙について解説します。印紙代の一覧表から節約方法までご紹介するため、契約業務のご担当者様はぜひ参考にご覧ください。
不動産売買の際に収入印紙は必要?
不動産売買で締結する契約書には、どのような場合に収入印紙の貼付が必要なのでしょうか。初めに、収入印紙が必要なケースと不要なケースについて解説します。
不動産売買では、原則契約書には収入印紙が必要
不動産売買では、「不動産売買契約書」「工事請負契約書」「金銭消費貸借契約書」などの契約書を作成します。紙の書面で契約書を発行する場合、これらの3つの契約書には原則として収入印紙を貼付する必要があります。
貼付する収入印紙の金額は、契約書の記載金額に応じて変わります。また、契約書の原本を1通ずつ2部作成して売主・買主の双方が保管する場合は、契約書の原本1通ごとに、それぞれ収入印紙が必要となることを押さえておきましょう。
不動産売買で収入印紙が不要なケースもある
不動産売買において、「契約金額が1万円未満の場合」や「電子契約で締結する場合」は収入印紙が不要となります。一般的に不動産売買で契約金額が1万円未満となるケースは非常にまれですが、非課税となることを押さえておきましょう。また、電子文書には印紙税が課税されないため、印紙代の削減につながります。
不動産売買時に必要な収入印紙代一覧表
続いて、不動産売買で締結する契約書の種類ごとに、収入印紙代の一覧表をご紹介します。契約手続きで税金がいくら発生するのか確認してみましょう。
不動産売買契約書にかかる収入印紙代
「不動産売買契約書」の収入印紙代は以下の通りです。
記載された契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
1万円未満のもの | 非課税 | 非課税 |
1万円以上10万円以下のもの | 200円 | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 100,000円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 200,000円 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 400,000円 | 320,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 | 480,000円 |
不動産売買契約書は、課税文書の中でも「第1号文書(不動産、鉱業権、試掘権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書)」に該当します。1通または1冊につき、必要な印紙税額を納めましょう。
なお、記載金額が10万円を超える不動産売買契約書は、2014年4月1日~2027年3月31日までの間に作成した場合、印紙税の軽減措置が講じられています。期間中は軽減税率の対象となることを押さえておきましょう。
※こちらの一覧表に記載の金額は、2025年8月時点の情報です。最新の収入印紙代については、国税庁のWebサイトでご確認ください。
【出典】「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」(国税庁)
【出典】「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」(国税庁)
不動産売買契約書以外の契約書にかかる収入印紙代
「工事請負契約書」や「金銭消費貸借契約書」の収入印紙代は以下の通りです。
記載された契約金額 | 工事請負契約書など (第2号文書) | 金銭消費貸借契約書など (第1号文書) |
1万円未満のもの | 非課税 | 非課税 |
1万円以上10万円以下のもの | 200円 | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 200円 | 400円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 200円 | 1,000円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 200円 | 2,000円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 500円 | 2,000円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 | 2,000円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 5,000円 | 10,000円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 10,000円 | 20,000円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 30,000円 | 60,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 60,000円 | 100,000円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 160,000円 | 200,000円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 320,000円 | 400,000円 |
50億円を超えるもの | 480,000円 | 600,000円 |
記載金額がないもの | 200円 | 200円 |
不動産売買に伴い締結する契約書のうち、「工事請負契約書」は課税文書の「第2号文書(請負に関する契約書)」、「金銭消費貸借契約書」は「第1号文書(消費貸借に関する契約書)」に該当します。1通または1冊につき、必要な印紙税額を納めましょう。
※こちらの一覧表に記載の金額は、2025年8月時点の情報です。最新の収入印紙代については、国税庁のWebサイトでご確認ください。
【出典】「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」(国税庁)
不動産売買時の収入印紙代を節約する方法
不動産売買で発生する印紙税は、以下の方法によって負担を抑えられる可能性があります。契約手続きの際はぜひ参考にしてみてください。
契約金額を税抜価格で記載する
契約書に記載する契約金額を税抜価格にすると、消費税を除いた金額で印紙税額を判断することができます。場合によっては税込価格よりも印紙税額を抑えられる可能性があります。
軽減措置の期間内に契約する
不動産売買契約書のうち記載金額が10万円を超えるものは、2014年4月1日~2027年3月31日までの間に作成すれば、印紙税の軽減措置の対象となります。期間内に契約を締結すれば、印紙税の負担を抑えることが可能です。
【出典】「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」(国税庁)
契約書の原本を1通のみ作成し、当事者のもう一方は写しのみを作成・保管する
契約書の写し(コピー)は課税文書に該当しないため、原本を1通のみ作成して当事者の片方が写しを保管すれば、印紙税の負担を抑えられます。ただし、たとえコピーであっても書類に当事者の署名または記名押印を行うと、契約成立を証明する原本と見なされて課税対象となる可能性があるためご注意ください。
電子契約で締結する
電子契約で締結した場合、契約書の電子データは課税文書に該当しないため、印紙代の削減が可能です。近年は業務効率化やコスト削減の目的で契約業務を電子化する企業が増えています。電子署名の機能を搭載した専門の電子契約サービスを導入し、不動産売買に伴う契約締結の電子化を検討すると良いでしょう。
不動産売買時の収入印紙に関するよくある質問
不動産売買時の収入印紙に関するよくある質問と回答をご紹介します。不動産取引に向けて疑問を解消しておきましょう。
不動産売買契約書の収入印紙代はどちらが負担する?
不動産売買契約書の収入印紙の負担者について明確な決まりはありません。実務においては、契約書の原本を1通ずつ2部作成して売主・買主の双方が保管する場合、各自が自身の保管分の収入印紙を負担することが一般的です。
不動産売買契約書に収入印紙を貼らない場合のリスクは?
不動産売買契約書などの課税文書に収入印紙を貼らない場合、ペナルティの対象となるリスクがあります。本税の納付に加えて過怠税が課される可能性や、悪質な違反により刑事罰の対象となる可能性があるため注意しましょう。
不動産売買契約書のどこに収入印紙を貼ればよい?
不動産売買契約書に収入印紙を貼る場所の明確な決まりはありません。ただし、実務においては書類の左上の空白部分に貼ることが一般的です。収入印紙を貼付した後は、収入印紙と契約書にまたがるように、はっきりと割印(消印)を押しましょう。
まとめ
ここまで、不動産売買で締結する各種契約書に貼付する収入印紙についてお伝えしました。不動産売買に伴う契約を電子的に締結する場合は、収入印紙の貼付が不要となります。契約業務の電子化によって、業務効率化や印紙代の削減が可能です。NXワンビシアーカイブズの電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」は、業界最高水準のセキュリティを標準搭載し、初期費用0円で始めやすい点が魅力です。電子契約の導入をご検討の際は、お気軽にお問い合わせや資料ダウンロードをご利用ください。







