準委任契約書とは?他の契約の違いと記載項目、メリット・デメリット
目次[非表示]
- 1.準委任契約の概要
- 1.1.準委任契約とは?
- 1.2.準委任契約と他の契約の違い
- 1.3.準委任契約の種類
- 2.準委任契約のメリット・デメリット
- 2.1.準委任契約のメリット
- 2.2.準委任契約のデメリット
- 3.準委任契約書の主な記載項目
- 3.1.業務の内容
- 3.2.契約期間
- 3.3.善管注意義務
- 3.4.報告
- 3.5.委託料の支払い
- 3.6.秘密保持
- 3.7.再委託の禁止
- 3.8.権利義務の譲渡の禁止
- 3.9.知的財産権の帰属
- 3.10.不可抗力免責
- 3.11.契約の解除
- 3.12.損害賠償
- 3.13.反社会的勢力の排除
- 3.14.協議
- 4.準委任契約を締結する際の注意点
- 4.1.収入印紙の必要性を確認する
- 4.2.偽装請負を回避する
- 4.3.トラブルを防ぐため、契約書の内容は具体的に記載する
- 5.まとめ

コンサルティングやプロジェクトマネジメントをはじめとした、業務の遂行に対して報酬が発生する契約では「準委任契約書」が用いられます。適切な契約書を作成して契約を締結し、委任者と受任者間でのトラブルを未然に防ぎましょう。
この記事では、準委任契約書に関する基礎知識や、締結するメリット・デメリット、契約書の主な記載項目、締結時の注意点などを解説します。契約業務のご担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
準委任契約の概要
初めに、「準委任契約」の特徴や他の契約との違い、準委任契約の種類について基本から解説します。どのような契約なのか改めて確認してみましょう。
準委任契約とは?
「準委任契約」とは、法律業務以外の事務処理などを外部へ委託するための契約です。主に業務の遂行に対して報酬が発生する、コンサルティングやプロジェクトマネジメントなどの分野で用いられます。準委任契約は報酬の支払条件に応じて「履行割合型」と「成果完成型」に分けられます。
なお、「民法」の第656条において「準委任」は以下のように定められています。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
【出典】「民法(明治二十九年法律第八十九号)」(e-Gov法令検索)
準委任契約と他の契約の違い
委任契約との違い
「委任契約」とは、法律行為の遂行を外部の専門家へ委託するための契約です。法律行為を対象とする点が「準委任契約」との大きな違いとなっています。
請負契約との違い
「請負契約」は成果物の完成に対して報酬を支払うことを約束する契約です。一方、「準委任契約」では業務の遂行に対して報酬が発生し、成果物の完成義務がない点に違いがあります。
業務委託契約との違い
「業務委託契約」とは、受託者に業務を委託する契約全般のことを指し、幅広い契約形態が該当します。「準委任契約」も「業務委託契約」の中に含まれます。
労働者派遣契約との違い
「労働者派遣契約」とは、派遣形態で労働者を雇用するために締結する契約です。指揮命令権のある労働者派遣契約とは異なり、「準委任契約」は受託者が独立した立場で特定の業務を担います。
SES契約との違い
「SES契約」とは、IT業界におけるシステム開発・運用などの業務を委託するために締結する契約です。「準委任契約」の一種であり、業務の遂行に対して報酬が発生します。
準委任契約の種類
履行割合型
履行割合型の準委任契約では、委託された事務処理の遂行に対して、提供された時間や工数に応じた報酬が発生します。そのため、業務遂行の過程で報酬が支払われます。
成果完成型
成果完成型の準委任契約では、委託された事務処理で得られた成果に応じた報酬が発生します。業務が完成した引き渡しの段階で報酬が支払われます。
準委任契約のメリット・デメリット
ここでは、準委任契約のメリット・デメリットを発注者(委託者)・受注者(受託者)それぞれの立場で解説します。契約締結へ向けて押さえておきましょう。
準委任契約のメリット
発注者(委託者)側のメリット
発注側は準委任契約を締結すれば特定の業務内容を外部の専門家へ委託できます。難易度の高い業務を高度な知識やスキルを持つ人材に任せられることがメリットです。
受注者(受託者)側のメリット
準委任契約で受注者となる企業や個人は、自身または自社の専門的な知識やスキルを活かして、業務の遂行に関する一定の裁量を持って仕事を進めることができます。また、業務の進め方や時間の使い方に柔軟性を持たせやすい点もメリットといえます。
準委任契約のデメリット
発注者(委託者)側のデメリット
準委任契約は、雇用契約や派遣契約とは異なり発注者に指揮命令権がありません。そのため、業務を進める際の詳細な作業方法や手順について直接指示できない点に注意が必要です。
受注者(受託者)側のデメリット
準委任契約では委託業務を遂行すると契約が終了します。また、発注者による中途解約が可能です。受注者にとっては、発注者との取引が不安定となりやすい傾向にあります。
準委任契約書の主な記載項目
準委任契約書を締結する際は、以下の記載項目を盛り込むことが一般的です。ここでは各項目の内容をご紹介します。
業務の内容
委託する業務の内容を正確に記載します。相手方と認識に齟齬が発生しないよう、具体的かつ明確に記載しましょう。
契約期間
準委任契約の契約期間の日付を記載します。必要に応じて契約更新の有無や手続きの方法も記載します。
善管注意義務
受任者の職種・地位・能力などにおいて通常要求される注意義務(=善管注意義務)について記載します。「民法」の第644条では以下のように定められています。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
【出典】「民法(明治二十九年法律第八十九号)」(e-Gov法令検索)
報告
準委任契約で委託する業務に関する報告の義務や、報告方法について記載します。
委託料の支払い
準委任契約で発生する報酬の金額や、支払日、支払方法について記載します。
秘密保持
業務を通じて取得した機密情報の定義や、適切な取り扱いについて記載します。
再委託の禁止
再委託の可否を記載します。準委任契約においては、一般的に再委託を禁止するケースが多くなっています。
権利義務の譲渡の禁止
準委任契約上の権利義務を第三者へ譲渡することを禁止する旨を明記します。
知的財産権の帰属
業務上で発生した成果物の知的財産権の帰属先について記載します。
不可抗力免責
災害などの不可抗力によって契約を履行できない場合に、責任が免除される旨を明記します。
契約の解除
準委任契約が解除となる条件や、解除の手続き方法について記載します。
損害賠償
契約違反によって損害を受けた場合、損害賠償を求められる旨を明記します。責任の範囲や、賠償金額の上限などの条件も盛り込みます。
反社会的勢力の排除
契約当事者が反社会的勢力でないことを証明する旨を明記します。違反した場合に契約を解除する条件を盛り込むことが一般的です。
協議
準委任契約に際して発生した問題を契約当事者が協議する旨を明記します。また、協議の手続きについても記載します。
準委任契約を締結する際の注意点
最後に、準委任契約を締結する際の注意点をお伝えします。契約手続きを適切に進めるために、契約書を作成するときは以下のポイントを押さえておきましょう。
収入印紙の必要性を確認する
準委任契約書には原則として収入印紙の貼付が不要です。ただし、例外として契約内容によって課税文書である「第1号文書」や「第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)」に該当するケースも存在します。
システム開発業務などの準委任契約書は、「第1号文書」の中でも無体財産権の譲渡に関する契約書に該当する可能性があります。契約金額1万円以上10万円以下で200円の印紙税が発生し、契約金額に応じて印紙税額が変わります。
【参考】「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」(国税庁)
代理店契約などの準委任契約書は、「第7号文書」に該当する可能性があります。印紙税額は1通につき4,000円となります。
【参考】「No.7104 継続的取引の基本となる契約書」
偽装請負を回避する
偽装請負とは、契約上は準委任契約や請負契約を締結しているにもかかわらず、実態としては指揮命令関係が生じているケースを指します。企業が準委任契約を締結する際、受注者に対して業務の詳細な作業方法や手順を直接指示することは法律で禁じられているため注意しましょう。なお、「職業安定法」の第44条では以下のように定められています。
(労働者供給事業の禁止)
第四十四条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。
【出典】「職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)」(e-Gov法令検索)
トラブルを防ぐため、契約書の内容は具体的に記載する
委任者・受任者間のトラブルを防止する観点から、準委任契約書には契約内容を明確に記載しましょう。契約書によって具体的かつわかりやすく合意を形成すると、両者の認識の齟齬を未然に避けることにつながります。
まとめ
ここまで、準委任契約書に関する基礎知識、締結するメリット・デメリット、契約書の主な記載項目、締結時の注意点などをお伝えしました。準委任契約をはじめとした契約締結は電子化することが可能です。NXワンビシアーカイブズの電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」は電子署名法や電子帳簿保存法に準拠し、安心・安全な電子契約を実現します。初期費用0円から始めていただけるのも魅力です。契約業務の効率化へ向けて取り組むご担当者様は、ぜひお問い合わせや資料ダウンロードをご検討ください。







