ALSP(代替法務サービスプロバイダー)とは?従来の法務サービスとの違いやメリット・デメリット
目次[非表示]
- 1.ALSPの概要
- 1.1.ALSPとは?
- 1.2.ALSPの主なサービス
- 1.3.ALSPの普及状況
- 2.ALSPと従来の法務サービスとの違い
- 3.ALSPを利用するメリット・デメリット
- 3.1.ALSPを利用するメリット
- 3.2.ALSPを利用するデメリット
- 4.ALSPを導入する流れ
- 4.1.Step1. 適切なALSPを選ぶ
- 4.2.Step2. ALSPと契約する
- 4.3.Step3. 導入後のフォローと評価を行う
- 5.ALSPを導入した企業の成功事例
- 5.1.コスト削減に成功した事例①
- 5.2.法務業務の効率性を向上させた事例②
- 5.3.法務業務の部分的な最適化の事例③
- 5.4.新たな法律問題に対応した事例④
- 6.まとめ
近年のビジネスシーンでは、企業法務において「ALSP(オルタナティブ・リーガル・サービス・プロバイダー)」の活用が進んでいます。法務の一部を外部の専門サービスへ委託することで、業務効率化やコスト削減の効果が期待されています。
本記事では、そんなALSPに関する基礎知識を解説します。また、企業がALSPを利用するメリット・デメリットもご紹介するため、法務のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。
ALSPの概要
初めに、ALSPに関する基礎知識を解説します。ALSPの特徴や、主なサービス内容、普及状況などをご紹介します。
ALSPとは?
ALSPとは、企業に法務サポートを提供する新たな形態のサービスです。専門知識と先端技術を組み合わせることで、柔軟かつ多彩な法務支援が期待できます。例えば、オンラインで弁護士をはじめさまざまな分野の専門家・士業と連携するALSPでは、地理的な制約を受けずに幅広い高度な法務支援を受けることが可能です。なお、ALSPという言葉は「Alternative Legal Service Provider」の頭文字を取ったもので、日本語では「代替法務サービスプロバイダー」を意味します。
ALSPの主なサービス
法律文書のレビュー
「法律文書のレビュー」のサービスでは、取引先から提示された契約書のレビューを行います。ALSPが企業の取引状況や事業特有を踏まえた専門的なアドバイスや判断を行うほか、必要に応じて修正案を提案することもあります。ALSPでは各専門分野の体制を完備しているため迅速で的確なレビューによって、ビジネスのスピードアップも期待できるでしょう。また企業規模や事業内容によっては日々発生する定型業務として大量の法律文書のレビューが実施されているケースもありますが、ALSPのスケール体制によってピーク時などに関係なく容易にスピーディーに対応することもできます。法律文書レビューが多い企業にとってはALSPにこの部分だけでも法務アウトソースするのは十分に効果があるといえます。
法務や労務相談
「法務や労務相談」のサービスでは、Webやチャットシステムを用いて制限なくALSPの専門家・士業に素早く相談やアクセスすることが可能となります。最適化されたチーム体制で的確で幅広い法務サポートを受けることができます。
契約の管理
「契約の管理」のサービスでは、管理システムのデータベース上に契約情報を登録します。これにより、紙の契約書や電子契約書などから必要な契約情報を紐づけ迅速に検索し、必要な情報にアクセスすることが可能となります。クラウドベースの管理システムの場合、インターネット環境さえあれば場所を問わずに契約情報にアクセスできるため、業務効率化に有効です。
法務関連のリサーチ(法令調査)
「法務関連のリサーチ(法令調査)」のサービスでは、専門のリサーチチームが法令関連(法律・条例・規則・命令・業法ガイドラインなど)の情報を迅速かつ正確に収集し、整理した情報をクライアントに分かりやすい形で提供します。最新の法律テクノロジー(リーガルテック)や生成AIも活用することで、検索時間を大幅に短縮できます。これにより、効率的な業務遂行とクライアントの満足度向上に寄与します。法的リスクを抱える案件や新しい法令規制への対応に役立ちます。
法務翻訳
「法務翻訳」のサービスでは、法律の専門知識を必要とする外国語文書の翻訳を行います。例えば契約書や訴訟文書といった文書の翻訳では、一般的な文書の翻訳で求められる語学スキルに加えて、法律の専門知識が不可欠です。ALSPに法務翻訳を委託することで、法務部員の人手不足を解消できます。
関連業務の自動化
「関連業務の自動化」のサービスでは、最新のAI技術を駆使して、繰り返し行われるタスクを自動化します。行政手続きや裁判に関連するタスクが効率化され、弁護士やスタッフの作業時間を大幅に削減できます。規制や法改正に迅速かつ柔軟に対応することも可能です。結果として、業務の精度と効率が向上し、クライアントへのサービス品質が向上します。
ALSPで提供しているその他サービス例
独自のカスタム契約書のドラフト作成・編集、広告審査、会社設立支援、商標登録、株主総会や取締役会の運営サポート、資本政策(ファイナンス)サポート、内部通報窓口、社内規程の整備、契約交渉、デューデリジェンス(DD)、IPO支援など
ALSPの普及状況
近年、ALSPの市場は急成長を遂げ、世界的なトレンドとなっています。国内では大手企業を中心に、内製化していた企業法務をALSPへ外注する動きが見られます。その背景として挙げられるのは、社会的な個人情報保護やコンプライアンス強化のほか、法務プロセスの複雑化などです。さらに国内でみると少子高齢化による人材不足は専門分野である法務も色濃く影響を受けておりALSPによって最小限の社内リソースで法務業務を遂行することも可能となります。また、国際的にも北米や欧州をはじめとしてALSPの採用が進み、法務業界全体が大きな変化を遂げている状況です。今後、ALSPの市場はさらに成長すると期待されています。
ALSPと従来の法務サービスとの違い
ALSPは「LPO」「BPO」「顧問契約」とはどのように異なるのでしょうか。それぞれの違いを押さえて、自社のニーズに適したサービスを選びましょう。
LPOとの違い
「LPO(リーガル・プロセス・アウトソーシング)」とは、企業法務を弁護士に外部委託するサービスのことです。LPOのサービス提供者は法律事務所または弁護士法人となり、特定の個別業務への対応になります。それに対して、ALSPはさまざまな専門家・士業によって構成され、幅広い専門分野とスケール体制による総合的なサポートを提供しています。
BPOとの違い
「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」とは、企業のさまざまな業務単位を専門業者へ外部委託するサービスのことです。ALSPがリーガルプロセスを中心としたアウトソーシングであることに対し、BPOは法務だけでなく、サービスによって経理・人材採用・電話応対などの幅広い業務をアウトソーシングの対象としています。ALSPや前述したLPOは、BPOの一種だといえるでしょう。
顧問契約との違い
顧問契約とは、弁護士など特定の専門家と契約を締結し、顧問料を支払って契約期間中に法律相談ができる状態を整えることです。依頼内容によっては、顧問料に加えて費用が発生する可能性があります。それに対して、ALSPや前述したLPO、BPOでは、料金プランに法律相談から各種業務まで含まれている点が異なります。
ALSPを利用するメリット・デメリット
ここでは、ALSPを利用するメリット・デメリットを解説します。ALSPが自社のビジネスにもたらす影響を確認してみましょう。
ALSPを利用するメリット
法務業務の効率化につながる
法務業務をALSPサービスで利用することで、業務効率化の効果が期待できます。特にスタートアップ企業や小規模な企業では、顧問弁護士を設けておらず経営者自身が法務を兼任しているケースも多く、十分なリソースの確保が難しいことがあるでしょう。こうした場面でALSPを活用すると、業務効率化によって無理のない運用を実現できます。ALSPがスタートアップや小規模企業の顧問弁護士の役割から社内法務担当の役割を果たします。
法務コストの削減につながる
ALSPを活用することで、法務コストを削減できる可能性があります。特にスタートアップ企業では、顧問弁護士を探し依頼相談から個別契約を締結する費用と手間が大きな負担となるケースが少なくありません。ALSPを利用すると、自社のニーズに合った料金プランをサービスとして選択するだけで、低コストで法的なリスクに備えることが可能です。また、専門分野や対応領域によって複数の顧問弁護士と契約をしているケースに対して、ALSPでは様々な専門分野の専門家・士業の体制が完備されていることもコスト削減に繋がります。
法務業務のスピードが向上する
ALSPのサービスでは、専門家・士業のスケール体制を構築していますが、先端技術や生成AIを活用した効率化も図られているため、繁忙期などピークに関係なく大量の法務業務を迅速に処理することができます。自社内でピーク時に合わせた法務体制を構築・維持することなくALSPに法務アウトソースすることで法務業務のスピードを各段に向上させることが可能です。既存の顧問弁護士契約と併せてALSPを使い分けることで、気軽に法律文書のレビューや法務関連のリサーチ(法令調査)が可能なフレキシブルな運用体制を構築し、業務をスピードアップするのも一つの手です。既存の顧問弁護士や法律事務所の切替ではなく、併用や連携ができるのもALSPの特長でもあります。
経営戦略やビジネス戦略などコア業務に注力しやすくなる
ALSPを利用して、日々の定型業務のような法律文書のレビューや契約管理などをアウトソーシングすると、契約関連の業務負担が軽減され、法務担当者がコア業務に注力しやすくなります。企業の法務部門は、ガバナンス・訴訟対応・コンプライアンス・新規事業・経営戦略などのより重要性の高い業務にリソースを投じることが可能です。
世界中の専門家・士業と連携できる
ALSPはグローバルな視点を持ち、世界中の専門家・士業と連携することが可能です。地理的な制約を超えたサービスを、全国一律またはグローバルに提供できます。多様なケースに対応できる体制を整えているため、クライアントは高品質なサポートを受けられます。
ALSPを利用するデメリット
弁護士ではない者が訴訟・紛争等の事件性のある法律相談に乗ったり、訴訟・紛争等の事件の代理をしたりできません。
日本国内では「弁護士法」の規定によって、弁護士以外が、報酬を得る目的で、訴訟・紛争等の事件性のある法律相談に乗ったり、訴訟・紛争等の事件性のある法律事件の代理を行ったりすることはできません。こうした内容が業務に含まれる場合は、スムーズに弁護士に直接相談できる仕組みや仕様を実装しているALSPサービスを選ぶなど、使い分けの必要があります。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
【出典】「弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)」(e-Gov 法令検索)
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
セキュリティ対策が必要になる
ALSPを利用する場合、企業の重要な契約書や機密情報・個人情報などのデータが外部に漏れるリスクが高まります。情報が不正に利用されると、企業の信用が失墜する恐れがあるため、データの保存方法や取り扱いに関して厳格な対策が必要になります。適切な対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑えることが可能です。
また、多くのALSP業者は高度なセキュリティ対策や各種セキュリティ認証の取得を講じていますが、契約時にセキュリティ認証やセキュリティ対策が明確に示されているか確認することが重要です。さらに、定期的にセキュリティ監査を実施し、問題がないか確認すると良いでしょう。
一定のコストがかかる
ALSPの導入によってコスト削減の効果が期待されるものの、サービス利用により導入コストや維持費用が発生します。効果を最大化するためには、適切な業者を選び、効率的な運用が求められます。また、詳細なコスト分析と、効果の検証が不可欠です。
その際は、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な効果も考慮する必要があります。ALSPの運用は企業のリスクヘッジから競争力を向上させる一方で、不適切な運用によりコストが増加する可能性もあります。効果的な運用を目指すには、導入前にしっかりとした計画と見通しを立てて、継続的な評価と改善に取り組む必要があります。
ALSPを導入する流れ
ここでは、ALSPを導入する流れをご紹介します。導入を成功へ導くために必要な、3つのステップをチェックしてみてください。
Step1. 適切なALSPを選ぶ
ALSPの実績や他社事例をしっかりと調査し、自社に最適なALSPを選定しましょう。適切なALSPを選ぶためには、まず自社のニーズを明確にすることが重要です。必要な法律サービスを具体的に洗い出し、ALSPで提供可能かを評価します。また、複数のALSPの強みや実績を比較検討しましょう。コストパフォーマンスだけでなく、Webサービスなのかチャット・メールなのかサービスの利用方法の確認や、過去のクライアントからのフィードバックや評判も参考にします。さらに、適宜ミーティングの実施や迅速な対応が求められるため、サポート体制やコミュニケーション能力も評価基準として重要です。
Step2. ALSPと契約する
自社とALSP双方のニーズを明確にして、契約交渉によって合意形成を図ります。まず、提供されるサービスの範囲や品質について具体的に記載された契約書を作成します。提供されるサービスと期待されるパフォーマンスのレベルを合意(SLA)すると、後々のトラブル防止につながります。また、料金体系や支払条件について詳細に取り決めておくことも重要です。契約期間や解約条件を明確にし、一方的な条件変更を防ぐ規定を設けることが推奨されます。法務部門や経理部門とも連携し、適切な契約内容を確保しましょう。ALSPによってはパッケージ化されているため個別契約や交渉が不要で、サービスの約款として即利用できる便利なインターネットWebサービス(SaaS)もあります。
Step3. 導入後のフォローと評価を行う
ALSPの導入後は、定期的なフォローと社内評価が必要です。導入効果を把握するために、KPIや評価基準を設定しましょう。定期的なレビューによってサービス品質や適合性を評価するとともに、必要に応じて改善を求めます。また、コミュニケーションを取り、進捗状況や課題を共有し、問題が発生した際には迅速に対処することが大切です。導入後のフィードバックを積極的に収集し、今後の契約更新や運用改善に役立てましょう。
ALSPを導入した企業の成功事例
ALSPを利用することで、企業規模や業種・業界を問わず多くの企業がリスクヘッジ・コスト削減・業務効率化・新たな法律問題への対応などの成功を収めています。具体的な事例をいくつかご紹介します。
コスト削減に成功した事例①
ある企業は、法務部門のコスト削減を目的にALSPを導入しました。従来は高額な弁護士費用が予算を圧迫していました。導入後は、契約書のレビューやリスク分析といった日常的な業務をALSPにアウトソースすることで、法務関連の支出を大幅に削減しました。その結果として、この企業は年間コストの30%を削減し、他の重要な業務にリソースを集中できました。さらに、ALSPの広範囲な専門家・士業に依頼できることで法務業務の質も向上しました。
法務業務の効率性を向上させた事例②
ある企業では、日常的な法務業務の効率化を図るためにALSPを採用しました。従来は、業務が複雑かつ多岐にわたるため、内部の法務チーム増強だけでは対応が難しく、専門分野である法務人材を採用するのにも苦戦していました。導入後は、ALSPを利用してスピーディーな契約書の作成やレビューを実現しました。さらに、リーガルテックの電子契約・契約管理サービスやデジタルツールを組み合わせたワークフローの最適化により、業務プロセス全体が迅速かつ円滑に進むようになりました。その結果、法務チームの負担が軽減され、他の重要なプロジェクトへ時間と労力を割けるようになりました。また、紙の契約書の書類保管・契約管理も併せて行い、法務業務の効率化につながりました。
法務業務の部分的な最適化の事例③
ある企業は、多岐にわたるビジネス・事業を展開しており毎日のように各事業部から大量の契約書レビュー依頼が入ってきており、この定型業務だけで多大な時間とコストを掛けていました。法務要員も不足しており返答スピードも遅延が多く社内および取引相手を待たせてしまっている状態でした。部分最適として定型業務である契約書レビューをALSPに部分的にアウトソースすることで返答スピードと契約書レビューの品質が各段に向上し、結果として競争力をつけることにも成功しました。
新たな法律問題に対応した事例④
ある企業は、法人設立前から新規市場への参入に伴う規制や法務リスクの管理など、新たな法律問題に対応するためにALSPの専門知識を活用しました。導入後は、法人設立の支援から最新の法令に精通したALSPによって、具体的なアドバイスを受けられる体制を構築しました。新たな規制への対応策や、リスク回避策の提案を受け、実行に移すことで無事に新規市場への参入を果たしたのです。ALSPのサポートにより、市場参入に必要な競争力を維持しながら、法的なリスクを最小限に抑えることができました。
まとめ
ここまで、ALSPに関する基礎知識や、導入のメリット・デメリット、導入事例を解説しました。法務人材不足の課題から法務業務の効率化やコスト削減の目的で、現状の企業法務・ガバナンス・コンプライアンスの強化や見直しを検討している法務担当者の方には、企業法務アウトソース・サービス(ALSP)である「クラウドリーガル」をおすすめします。「クラウドリーガル」では、弁護士監修の契約書ひな形の提供や契約書自動作成・契約書レビュー・法務や労務相談・法令調査・社内規程整備などの専門士業サービスをWebオンラインでご提供いたします。生成AIと弁護士・専門士業を融合させることで高度で専門的な法務サポートを、効率的かつ低コストでサービス提供することができます。法務のアウトソーシングは、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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