造作譲渡契約書とは?目的やメリット、記載項目と作成時の注意点は?
目次[非表示]
- 1.造作譲渡契約についての基礎知識
- 1.1.造作譲渡契約とは?
- 1.2.造作譲渡契約書を作成する目的
- 1.3.造作譲渡契約を締結するメリット・デメリット
- 1.4.造作譲渡契約書を作成する流れ
- 2.造作譲渡契約書の記載項目
- 2.1.物件所有者(貸主)の承諾取得
- 2.2.造作譲渡の品目・個数
- 2.3.造作譲渡料
- 2.4.支払いおよび引き渡しの期日
- 2.5.支払い方法
- 2.6.支払い遅延時の対処方法
- 2.7.契約不適合責任の範囲
- 2.8.原状回復義務の所在
- 2.9.契約解除の条件
- 3.造作譲渡契約書を作成する際の注意点
- 3.1.物件所有者(貸主)の承諾が必要になる
- 3.2.譲渡対象物を漏れなく記載する
- 3.3.リース品の取り扱い方法を定めておく
- 3.4.造作物の状態を確認し、故障や修繕について取り決めを行う
- 3.5.不用品の処分負担について取り決めを行う
- 3.6.物件所有者(貸主)に対して造作物に関する請求をしないことを明記する
- 4.まとめ

飲食店・美容室・サロンをはじめとした業態の店舗ビジネスでは、賃貸テナントの造作譲渡を行う場合があります。既存の内装・什器・設備を譲渡することで、前の借主・次の借主ともにメリットが期待できます。造作譲渡では、トラブル防止のために造作譲渡契約書を作成して契約を締結することが大切です。
この記事では、造作譲渡契約に関する基礎知識や、契約書の記載項目、作成時の注意点などを解説します。契約業務のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
造作譲渡契約についての基礎知識
初めに、造作譲渡契約に関する基礎知識を解説します。契約書の作成目的や、造作譲渡契約を締結するメリット・デメリット、契約締結の流れなどを確認してみましょう。
造作譲渡契約とは?
造作譲渡契約とは、賃貸テナントの造作譲渡をする際に締結する契約です。造作譲渡とは、居抜き物件の内装・什器・設備(=造作物)を譲渡することを指します。賃貸テナントの前の借主が造作物を残した状態で退去する場合、次の借主と造作譲渡契約を締結することが一般的です。あるいは、物件所有者(貸主)が造作物を所有している場合のように、貸主と次の借主が造作譲渡契約を締結するケースもあります。
賃貸テナントには「居抜き物件」と「スケルトン物件」の区分があり、それぞれの概要は次の通りです。このうち、造作譲渡契約の対象となるのは「居抜き物件」です。
居抜き物件 | 前のテナントの内装・什器・設備が残った状態の物件 |
スケルトン物件 | 内装・什器・設備が撤去され、建物の躯体のみが残った状態の物件 |
なお、造作譲渡契約はあくまでも賃貸テナントの造作物の譲渡に関する契約となります。賃貸テナント自体を貸し借りする際は、別途貸主と借主が賃貸借契約を締結する必要があります。
造作譲渡契約書を作成する目的
造作譲渡契約書には、賃貸テナントの原状回復義務の有無を明確化する役割があります。また、造作物の具体的な項目や譲渡価格のほか、契約不適合責任に関して合意を形成し、トラブル防止につなげることも重要な目的です。また、次の借主が造作物を固定資産として計上する際の証明においても造作譲渡契約書が必要となります。
造作譲渡契約を締結するメリット・デメリット
メリット
造作譲渡を行う場合は、前の借主の退去時に原状回復工事が不要となります。前の借主は工事にかかる費用や工期を削減することが可能です。また、次の借主は既存の造作物を活用できるため、開業準備の費用や負担を抑えられます。
デメリット
造作譲渡契約を締結する場合、事前に貸主の承諾を得る必要があります。また、造作物を譲渡する際の交渉では、前の借主・次の借主が条件を調整する手間がかかります。場合によっては、譲渡後の設備の不具合などのトラブルが発生する可能性も考えられます。
造作譲渡契約書を作成する流れ
Step1.譲渡する造作物を特定し、詳細を記載する
まずは貸主と交渉し、造作譲渡契約に関して承諾を得ます。前の借主は譲渡する造作物を確認し、譲渡する項目や価格などの詳細情報をまとめます。
Step2.譲渡条件を確認する
前の借主と次の借主が譲渡条件を確認し、合意を形成します。提示した条件の変更が必要な場合は、両者が納得できる条件となるよう調整を行います。
Step3.契約書の原案を作成する
造作譲渡契約書の原案を作成し、前の借主・次の借主が内容を確認します。契約書作成のリスク対策の観点から、弁護士や行政書士など法律の専門家に相談すると良いでしょう。
Step4.調整を行って、最終版の造作譲渡契約書を作成・締結する
前の借主・次の借主が正式に造作譲渡契約書を作成します。両者が契約内容に合意したら、契約を締結します。
造作譲渡契約書の記載項目
ここでは、造作譲渡契約書の主な記載項目をご紹介します。契約を締結する際は以下の項目を含めた契約書を作成することが一般的です。
物件所有者(貸主)の承諾取得
造作譲渡契約の締結にあたり、貸主から承諾を取得した旨を記載します。承諾済みであることを証明するために、貸主が契約書に記名押印を行う場合もあります。
造作譲渡の品目・個数
譲渡する造作物の品目と個数を明記します。トラブルを避けるためにも、抜け漏れなく正確に記載しましょう。
造作譲渡料
造作譲渡料の金額を記載します。金額の相場は設備の状態のほか、賃貸テナントの立地や業態によって異なります。
支払いおよび引き渡しの期日
造作譲渡料の支払い期日や、造作物の引き渡し期日を明記します。後述する「支払い遅延時の対処方法」と併せて記載しましょう。
支払い方法
造作譲渡料の支払い方法を明記します。「現金払い」「分割払い」といった方法を具体的に記載しましょう。
支払い遅延時の対処方法
万が一、造作譲渡料の支払いが遅延した場合の対応について記載します。支払い遅延にともなうキャンセルの規定も盛り込むことが一般的です。
契約不適合責任の範囲
契約不適合責任について明記し、前の借主の責任範囲を明確にします。故障や不具合に備えて事前に取り決めておきましょう。
原状回復義務の所在
造作譲渡を行った場合の原状回復義務の所在について記載します。一般的に、造作譲渡を行うと次の借主が原状回復義務を引き継ぐことになります。
契約解除の条件
造作譲渡契約が解除となる具体的な条件を明記します。違約金についても定めておくのが望ましいでしょう。
造作譲渡契約書を作成する際の注意点
最後に、造作譲渡契約書を作成する際の注意点を解説します。適切に契約を締結するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
物件所有者(貸主)の承諾が必要になる
前の借主と次の借主が造作譲渡契約を締結する際は、基本的に貸主の承諾が必要となります。その際はトラブルを防止するためにも、契約書に承諾を取得済みである旨を明記したり、別途承諾を証明する書類を作成したりすることが推奨されます。
譲渡対象物を漏れなく記載する
造作譲渡契約書には、トラブル防止の観点から譲渡する対象物を漏れなく記載する必要があります。前の借主は譲渡する造作物のリストを作成し、数量や状態などの情報を正確にまとめましょう。
リース品の取り扱い方法を定めておく
リース品の所有権はリース会社にあります。そのため、譲渡対象物の中にリース品が含まれる場合は、リース契約の引き継ぎや残債の処理を適切に行わなければなりません。事前にリース品の有無を確認するとともに、リース会社から承諾を得て適切に手続きを進めましょう。
造作物の状態を確認し、故障や修繕について取り決めを行う
造作譲渡契約を締結する際は、それぞれの造作物の状態を確認しておきましょう。故障が発生した場合や、修繕が必要になった場合に備えて、前の借主・次の借主が取り扱いについて合意を得ておくことが大切です。
不用品の処分負担について取り決めを行う
造作物の中に不用品が含まれる場合は、処分に費用がかかる可能性があります。造作譲渡契約の締結にあたり、前の借主・次の借主のどちらが費用を負担するかを相談し、合意を得ておきましょう。
物件所有者(貸主)に対して造作物に関する請求をしないことを明記する
前の借主と次の借主が直接契約を締結する場合は、造作譲渡契約書に「貸主に対して造作物に関する請求をしない」という旨を明記しましょう。これにより貸主が造作物の契約不適合責任を負わないことを明確にする必要があります。
まとめ
ここまで造作譲渡契約に関する基礎知識、契約書の記載項目、作成時の注意点などをお伝えしました。造作譲渡を行うと前の借主・次の借主ともにメリットが期待できます。契約締結の際は、貸主の承諾を得るとともに、前の借主・次の借主の両者が合意を形成し、正確に手続きを進めることが重要です。NXワンビシアーカイブズの電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」は、造作譲渡契約をはじめとした各種契約締結に対応しています。契約管理業務の効率化へ向けて電子契約の導入を検討しているご担当者様は、どうぞお気軽にお問い合わせください。







